185系

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完全に大人向けでは…?マニアックなプラレール「歴代つばめスペシャルセット」って何!?

2023.03.17

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は2006年に発売された大人もびっくりなほど大人向けなプラレールのセット「歴代つばめスペシャルセット」にクローズアップ!C62・EF58青大将・583系とシブすぎる車種のチョイスは当時店頭ではどう映ったのでしょうか?


 プラレールと言えば玩具業界を代表する子供向けの鉄道玩具ですが、1959年の発売以来60年以上に亘る歴史の中で、1990年代後半頃より大人のファンも目立つようになりました。時を同じくして精巧な造型とおもちゃらしいデフォルメをバランスよく取り入れた製品が多く発売され、「子供のおもちゃと言えど侮れないな」という雰囲気が形成されていきます。
 とは言えそこメインターゲットはやはり子供。発売される車両も、ほとんどの場合は現役で走っている有名な車両ばかりです。しかし、2006年にファンの大人すら困惑したという車両セットが発売されました。今回はそのセットに焦点を当てていきます。

↓今なお語り草な伝説の「歴代つばめ」セットの画像はこちら!↓

▲2006年3月発売の「歴代つばめスペシャルセット」

 2001年から展開が始まった「スペシャルセット」は、通常品の色違いや車番違い、行先違いなどの差別化を施すほか、通常品にはない車両を用意することもあった3編成入りのセットで、当時の大人のファンを更に唸らせる一つの要因となりました。
 特に首都圏の国鉄103系が新規造型で5色揃えられたことは、今でも半ば伝説となっています。そんな中、2006年3月に大人のファンたちも断ち切るかのような超マニアックなセット「歴代つばめスペシャルセット」が発売されました。

▲C62 18、EF58 86、583系の歴代3編成。

 2006年当時から見ると、「つばめ」と言えば「つい最近、九州の特急から新幹線の列車名になった」という認識が広まっていた頃と思います。遡れば戦前から存在する列車愛称ですが、九州新幹線の800系「つばめ」として新たなスタートを切ったのが記憶に新しい時期です。もちろんプラレールでも九州新幹線「つばめ」が製品化されており、久しぶりの新幹線新路線開通という事で盛り上がっていました。

 歴史ある列車名なので、プラレールとしても何かあやかりたいところだったのかもしれませんが、九州の在来線特急「つばめ」は787系が既に車両単品にあるほか、2001年発売の「JR九州スペシャルセット」でも高グレード仕様の787系が既に発売済みでした。「リレーつばめ」として800系とセットにしてみるのも良かったかもしれませんが、地域色が強すぎる印象があります。そこで、既に引退済みであるものの知名度のある昔の「つばめ」をまとめて「歴代つばめスペシャルセット」として発売したのでしょう。

▲18号機は驚くべきことに「下がりつばめ」が再現されているのがポイント。客車はマイテ49 1が付く。

 前回の記事に続いて、再びC62の登場です。東海道本線の特急「つばめ」を今に伝えるスワローエンゼルの2号機が有名ですが、動態保存機として知られていることからプラレールでは2003年に既に製品化済みでした。そこで、2号機とは異なる特徴を持つ18号機が今回のセットに選ばれています。18号機も「つばめ」用に整備された専任の牽引機で、2号機同様に「つばめマーク」がデフレクターに取り付けられていましたが、2号機と区別するためにツバメの頭を下げて取り付けられ、「下がりつばめ」という通称を持っていました。C62牽引の「つばめ」を再現するなら2号機でも良かったと思えますが、これはメーカーなりの拘りがあったのでしょう。ヘッドマークの再現も見逃せないポイントです。客車は展望車のマイテ49が再現されています。

 1950年にC62牽引で運行を開始した「つばめ」は、1956年の東海道本線全線電化を機にEF58牽引に変更されます。この際、イメージチェンジを図るために機関車と客車を明るい緑色に塗装し、その長い緑色の編成から「青大将」の愛称で呼ばれるようになりました。プラレールではこの「青大将」の牽引機を、同色を施された全25両中から86号機を選んで採用しています。客車の屋根も銀色に塗装され、落ち着いた緑色にギラギラとした銀色が映える美しい編成に仕上がりました。

 1960年からは151系が充当されるようになり、客車列車から電車に転換。1964年の東海道新幹線開業後は車両を481系に変更し、名古屋・大阪と九州を結ぶ特急となっていた「つばめ」ですが、1968年からは583系も運行に入るようになりました。「歴代つばめスペシャルセット」ではこの583系を使った末期仕様が選ばれました。

 山陽新幹線の博多延伸に伴い「つばめ」は1975年に廃止され、長い歴史に幕を下ろしました。奇しくも「つばめ」が廃止された1975年に「しんだいとっきゅう」として583系がプラレールで製品化されています。

 プラレールファンの間で何故か人気の高い583系ですが、「歴代つばめスペシャルセット」以降は発売されていません。台車の塗り分けや、クーラー、貫通路のレールなどの細かなモールドの色差し、印刷表現のJNRマークなど、31年前の造型にこれでもかというディテールアップを施した姿で有終の美を飾りました。

 このように、拘りの多いセットとなった「歴代つばめスペシャルセット」ですが、実は発売当時の評判はまちまちでした。マニアックな製品を喜ぶ声もあれば、子供向けとは思えない内容に困惑する声もあり、売れ残りもちらほらあったそうです。某量販店の通販サイトでは最終的に定価の5分の1ほどの価格で発売されていた記録も残っています。

 最近では15年ほど前の製品が再評価され、このセットも中古価格が高騰し入手困難になっています。世に出た時はあまり注目されなかったものが後年人気となる事例は色んな業界でありますが、プラレールも例外ではないようです。

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