パソコン上で作図したデータをそのまま立体物として出力する3Dプリンタは、現在新しい造形技術として注目を集めています。以前までは手作業が基本だった鉄道模型をはじめとしたホビー分野においても、こういったデジタル機器を活用したモデルも増えてきました。特に3Dプリンタは手作業では難しかった正確かつ精度の高いディテール表現を、データを作ってプリンタに送信するだけで実現できるようになりました。ここではまず3Dプリンタ鉄道模型を始めるにあたり、そもそもパソコンを活用した3Dモデリングとはどういったものなのか、鉄道模型に向いているのはどういう方式なのか、詳しく見ていこうと思います。
■3Dプリンタとは一体どういう仕組みで出力されるのか?
そもそもとして、「3Dプリンタ」とはどのような仕組みで立体物を造形するのか、詳しく解説していきます。3Dプリンタには積層造形という方式で立体物を作り出す出力装置で、3D-CAD(コンピューターを用いた3Dの設計)で作図されたデータをもとに、断面の形状を積層して出力をしていきます。インクジェットプリンタのように平面(用紙)に1回でプリントするのではなく、その動作を繰り返すことで通常のプリンターでいうところのインクに当たる樹脂素材が積み上げられ(積層)、立体となるのです。
●3Dプリンタにも種類はある!
▲光造形方式の3Dプリンタによる出力の様子。液体樹脂(レジン)の中から紫外線により硬化した造形物が徐々に出力されている様子がわかる。
↓詳しい3Dプリンタの種類の解説はこちら!↓
3Dプリンタは1980年代に、「光造形式」と呼ばれる、液体樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させる方式で誕生しました。その後現在多くの民生用3Dプリンタで用いられる熱溶解積層式(FDM)という、熱で液状にした樹脂を積層させるタイプ、粉末素材をレーザーで焼結させ造形する「粉末焼結積層法」、インクジェットプリンタ方式を応用し、石膏の粉末とインクを噴射し着色しながら造形する「インクジェット式」等、様々な方式が存在します。
ですが、多くの家庭用デスクトップ3Dプリンタでは光造形方式が定着しつつあり、鉄道模型においてもこの方式が主流となっています。
■3Dプリンタを動かす上で重要な3D-CADとは一体なんなのか?
▲実際の3D-CADによる設計画面。「X」「Y」の2軸に加え「Z」の軸が加わることで立体的に構成される。平面図の2D-CADと異なり、立体で表示されるので、形状から部品構成まで把握がしやすいのも特徴。
「誰でも簡単に…」とよく言われる3Dプリンタですが、実際にプリンタを動かすためには当然ながら元となるデータが必要となります。耳馴染みのあまりない言葉ですが、例えば年賀状を印刷する場合に、イラストや写真をパソコン上で配置してからそのデータをプリンタに送信するかと思います。この工程は入力(パソコン)も出力(プリンタ)全て平面(2D)で構成されますが、3Dプリンタの場合入力・出力共に立体(3D)で構成され、先ほどの年賀状の例で言うとイラストや写真をパソコンで配置する作業が「3D-CAD」に当たるのです。
CADは「Computer Assisted Drafting」の略で、コンピューターを用いた設計システムのことを指します。CADは2Dも3Dも含め、私たちが身近に使用している工業製品や模型製品の多くはこのCADで設計されています。3Dプリンタで物を作る際にも設計の際CADが必要になりますが、そう考えると「工業製品レベルの技術が求められるのでは…」と思うかもしれません。ですが、自分が思い描いたものをカタチにする「ものづくり」の概念は共通であり、その情熱さえあればプロと素人の垣根はありません。まずは3Dモデリングに触れ合って、身近になるところから始めてみてはいかがでしょうか?
■3Dプリンタを使った作品たち!
ここでは鉄道ホビダス上で過去に紹介した3Dプリンタにより出力された鉄道模型作品をご覧にいれましょう。いずれも床下機器、車体に至るまで3D-CADで設計し、その後3Dプリンタで出力しています。製品にない車両を作れるという点に加え、CADを使用するため安定した設計で複数車両を作れる点が魅力と言えるでしょう。
◆新交通システムが「模型」に!?3Dプリントで作った西武鉄道山口線8500系レオライナー!
◆3Dモデリングに触れ合えるイベント!鉄道模型3Dプリンタ モデラーズミーティング2023 秋葉原&オンラインで開催!
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