185系

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画一的な印象から個性豊かに!JR化で変わった国鉄特急型の色とは?

2023.02.11

text:鉄道ホビダス編集部

 乗客が列車に乗る時、真っ先に目にすることになるであろう鉄道車両の「色」。その色が与える印象は大きなものがありますが、国鉄時代は車両の用途や仕様で全国的に統一されたカラーリングが採用されていました。ですが、国鉄分割民営化の足音が迫ってきていた1980年代になると一転、それぞれの車両独自のカラーリングを纏った車両が各地で登場し始めました。この流れは1987年4月のJR化後も続いてゆき、各社色とりどりの車両が地域・列車ごとに生まれました。
 今回はそんな地域色の中でも、JR化後に国鉄特急型の各系式が纏ったものの一部を紹介していきます。

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■民営化間もない1987年に登場した「グレードアップあずさ色」

▲2014年に復刻されたグレードアップあずさ色の189系M52編成。

‘15.9.26 中央本線 相模湖 P:石井大智
(鉄道投稿情報局より)

 シートや窓といった接客設備を改良する「アコモデーション改造」は、JR化後の90年代に数多く行なわれました。その嚆矢となったものの一つがこの183系「あずさ」のグレードアップ改造でしょう。高速バスとの競争が激しかった中央本線特急の「あずさ」に施されたこの改造は、内装の改良のほかに塗装も変更となりました。
 その塗装は白をベースに車体裾をベージュ、窓廻りに緑と赤の帯を配したデザインとし、これまでの国鉄色のパターンを踏襲しない新しいものになりました。この「グレードアップあずさ」の改造は1987年から1989年にかけて行なわれていましたが、1998年の長野冬季オリンピック開催を前にした1992年から、ライトグレーをベースに窓廻りにブルーとその下に薄紫を配した通称「あずさ色」に非グレードアップ車も含めた全車が変更されます。また、これと同時に先頭車に掲げられていた特急シンボルマークも撤去されました。

 また、1990年からは「あさま」についてもグレードアップ改造が施され、改造メニューは「グレードアップあずさ」に準じつつ、一部仕様を変更したものとなっていました。塗装はライトグレー地に窓廻りに深緑、その下にグレーの帯を配したものとし、のちの「あずさ色」に近いイメージの塗装になりました。

 ですが、長野新幹線開業に伴い1997年9月に「あさま」が廃止。「あずさ」においても新型車E257系が導入されたことで2002年に183系が撤退します。ですが183・189系の「あさま色」と「あずさ色」は波動用編成で残り続け、さらには2014年11月には豊田車両センター所属の189系1本が「グレードアップあずさ」色に復刻。長らく過去帳入りしていた塗装の復活にファンが湧き立ちました。

 その後183系は2015年、189系についても2019年に全廃されましたが、最後まで残った189系の「あさま色」N102編成は現在でも長野総合車両センターに保管されており、今後が気になる車両です。

■JR初期から存在 息の長かった塗装「上沼垂色」

▲1988年にアコモ改良車でこの塗装が登場して以降、上沼垂運転所(現:新潟車両センター)所属の485系に広く普及していったこの「上沼垂色」。歴史の長さだけでなく、一時期は特急「雷鳥」の運用もこなし、関西圏でもこの色を見ることができた。

‘13.5.5 白新線 西新発田-佐々木 P:宮田拓磨
(お立ち台通信より)

 上沼垂運転区(現:新潟車両センター)所属の485系は、先の「グレードアップあずさ」に続いてアコモ改良工事が行なわれた車両の一つです。183系と同様に指定席車客窓拡大の他、内装を中心とした改造が施工され、同時に塗装も新たなものに変更となりました。その塗装こそが、この「上沼垂色」です。

 白をベースとして車体下部に青と青緑の帯を配したシンプルなデザインとなっており、先頭車客扉後ろには緑色の大きなJRマークが入れられました。この塗装パターンは同区所属の485系に広まってゆき、新潟地区の485系を代表するカラーリングとなりました。
 485系の運用自体は2000年代に入る頃から全国的に縮小傾向にあり、新潟地区も例外ではなく運用の削減や消滅で一部車両は廃車となっていきました。ですがこの塗装自体の息は長く、2010年代になった頃も「いなほ」「北越」などで活躍していた6両のT編成が現役でした。しかし2013年に、E657系に置き換えられて余剰となったE653系が新潟へ転属し、本格的な置き換えを開始。上沼垂色を最後まで維持していたT13編成が2014年12月に廃車となったことでこのカラーリングは消滅。26年間に亘る歴史に幕を下ろしました。

■同じ特急名で度々塗装変更 色々あった「やくも」カラー

‘10.8.14 伯備線 方谷―備中川面 P:今井亮介
(鉄道投稿情報局より)

 特急「やくも」は1972年の山陽新幹線開業に伴い、岡山から山陰方面を結ぶ気動車特急として運行を開始した列車です。運行開始からしばらくは伯備線と山陰本線の一部が非電化だったため、キハ181系によって運転されていましたが、1982年に電化されて以降、現在に至るまで一貫して381系が使用され続けています。

 そんな「やくも」の381系ですが、JR化後は様々なカラーバリエーションが生まれることとなります。まずは1994年に速達列車が「スーパーやくも」と名前を改め、同時に塗装も紫の濃淡を配した独自の塗装へと変更になりました。改造内容は主にアコモデーションの改良となっており、先に登場していた「スーパーくろしお」に準じたものとなりました。また「スーパーくろしお」同様に、パノラマグリーン車となるクロ380形が「スーパーやくも」でも登場しました。
 「スーパーやくも」編成以外の一般編成はその後1997年よりリニューアルを開始。それと同時にグレーを地色として窓廻りに緑と黄色の帯を巻いた塗装に変更され、しばらくはこの2つの塗装が見られました。

 ですが2006年3月のダイヤ改正で「スーパーやくも」の愛称が消滅し、再び名称が「やくも」に統一。さらに全車が「ゆったりやくも」と名付けられたリニューアルを施工することとなり、塗装も現行の白地に赤と緑のアクセントが入るカラーへ変更されました。これにより「スーパーやくも色」と「リニューアルやくも色」は消滅し、「ゆったりやくも色」に統一されます。
 ただイレギュラーな存在として、車両不足や多客時の応援に、日根野電車区所属の381系国鉄色やくろしお色が貸し出され運用入りすることもあり、「やくも」として運用に就いた実績のあるカラーリングは多岐にわたります。

 そして2022年、新型車両の導入が予告されていた中、特急「やくも」運転開始50周年を記念して6両1本が国鉄色へ復刻。さらに2023年には多くの要望に応える形で「スーパーやくも色」も復活することとなり、再びカラフルな「やくも」を楽しむことができそうです。

 国鉄がJRとなった直後から、その姿を時代や地域に合わせて変えてきた国鉄型たち。その中でも会社の「顔」ともなりうる特急型は、派手な塗装から形状まで変化は大きく、趣味的にもバリエーションが増えて楽しいものだったように思えます。

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