text & modeling:鈴木重幸
photo:浅水浩二
単行〜短編成のプラ製16番車両を高いコストパフォーマンスで提供し、にわかにモデラーの注目を集める天賞堂のT-Evolutionシリーズですが、第3弾にして初の私鉄電車、そして個人的には大本命の東急7200系が発売となりました。基本的な造形の良さはもちろん、ツヤのあるステンレスの塗装表現も美しく、私個人の好みを抜きにしても「そそる」モデルであることは間違いないでしょう。
プラ量産品ゆえディテールが省略された部分も散見されますが、発売元の天賞堂やトレジャータウンから早くもアフターパーツが供給されており、今回はこれらを使ったディテールアップや、屋根廻りを中心とした塗分け、色差しによるメイクアップを行なってみることにしました。
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■プロトタイプの選定
今回の7200系は冷房改造後の姿をプロトタイプとしており、バリエーションとして初期の前面窓Hゴムがグレーで前面ステップなし、後年の黒Hゴムでステップ付、さらに前面に赤帯を巻いた姿の3種で展開されていますが、そのなかでもいち早く発売となったステップなしの製品をベースにしています。
実車について少し詳しく解説すると、1972(昭和47)年に車番末尾50番代の東洋電機の電装品を持つグループ(0番代は日立)のうち2連4本(7251-7551〜7254〜7554)が冷房改造され、当時の田園都市線(大井町〜すずかけ台間)初の冷房車として運用開始。同年には目蒲線(目黒〜蒲田間)初の冷房車として7260-7452-7560の3連が新造され華々しくデビューしました。ところが、如何なる事情があったのか冷房新造車はこれ1本で打ち止め、冷房改造の再開も何と干支がひと回りした1984(昭和59)年まで待つことになります。
今回は田園都市線で番号順に2+2の4連に組成され、前面の運番表示器や屋上の無線アンテナがまだ装備されていない新玉川線開業前夜、1970年代半ば頃の姿を再現することにしました。
■アフターパーツの取付
今回のパーツ取付は前面廻りに集中しており、詳細は上図のとおりです。ワイパーはφ0.3、それ以外は乗務員ステップを除きφ0.5の取付穴を開口して取付。差込ステップの取付穴はタミヤの透明プラ材3mmL形棒で作った治具で位置決めしています。なおエアーホースについては開口前に元のモールドを削る必要があります。
乗務員ステップは取付部分の床板が出っ張っていてそのまま取り付けると車体裾からステップのベース部分が見えてしまいますが、床板の当該部分を他と面一になるまで削ったところ良い塩梅となりました。
無塗装で使用するワイパーを除いて取付前にトビカのトップガードを吹き付けて黒塗装。プライマー処理の必要がないので、この手の金属パーツの塗装には大変便利です。台車枠や床下機器もトップガードで塗装して質感を揃えています。差込ステップについてはさらにシルバーを吹き付け、エアーホースのコック部分についてはタミヤのエナメルで内側からそれぞれ緑、赤、白を色差ししました。
前面の方向幕と助士側窓内の運番札は付属のシール使用ですが、後者については一旦コピー紙に貼付けてから上側に接着代を残して切り出し、前面窓パーツの内側にゴム系接着剤で取り付けています。
■車体廻りの塗装・色差し
製品の屋根板は明るいグレーで塗装されており、新造時や後年の塗り屋根化後のイメージですが、’70年代にはイボ付きの絶縁ビニールが貼られており、時とともに汚れで黒ずんでいきました。今回はこれを表現すべくタミヤの缶スプレーAS-10・オーシャングレーを吹き付け、マスキングのうえランボードにライトグレー(色名失念)を吹いています。また、パンタ廻りの配管はタミヤのアクリルXF-55・デッキタンを色差し、避雷器やヒューズ箱は当時の記憶を頼りにタミヤの缶スプレーAS-29・灰緑色で塗装しました。パンタグラフは対応のパーツ(PT-44)が未発売だたので製品のダミーパンタを塗装。台枠はこちらも灰緑色、枠と集電舟はシルバーです。
最後にタミヤのスミ入れ塗料(ブラック)で屋根全体にスミ入れ、ウォッシングを行ない、乾燥後にクレオスのプレミアムトップコート「つや消し」を吹いて光沢を整えています。 屋上のクーラーは造形は大変素晴らしいのですが明るいグレーの成形色でモールドが目立たないのが惜しいところです。まず、ペーパーで梨地仕上げの表面を凹部を除いて平滑にし、タミヤの缶スプレーAS-20・インシグニアホワイトで塗装した後、天面と側面のモールドにタミヤエナメルの黒を塗装したところ、イメージ通りの質感が得られました。
今回の加工では特に色差しが非常に効果的になることがわかりました。ぜひお手元の鉄道模型も、手軽に色差しからメイクアップにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
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※こちらの記事は『RM MODELS 307 2021年4月号』の記事から抜粋しており、情報は当時のものとなります。あらかじめご了承ください。