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いよいよラストランへ… 阪急京都線を快走した「京とれいん」の6300系ってどんな電車だったの?

2022.12.10

text & photo(特記以外):芦原やちよ

 阪急電鉄の全線ダイヤ改正を2022年12月17日に控える中、一足早く週末で定期運行を終える列車があります。それが現在阪急京都線で活躍している「京とれいん」です。この列車にはかつては京都線特急のエースだった6300系が使用されており、かつての特急運用を彷彿とさせる力走を見せてくれていました。今回はそんな京とれいんと、使用されている6300系6354編成にクローズアップしてみようと思います。

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■京都線特急の元エース

’78.3 阪急電鉄 京都本線 大山崎-長岡天神 P:楢井勝行
消えた車両写真館より)

 6300系は1975(昭和50)年に登場した京都線特急用車両で、当時特急運用にメインで就いていた2ドア車の2800系には予備車がなく、全特急運用を2800系で運転するのは難しいことから、新型を増備したのがこの6300系の始まりとなります。
 車両色は、マルーンに屋根廻りがアイボリーという塗装となっていますが、このカラーリングは後に他車にも普及して行き、現在の阪急電車のスタンダードとなっていきました。新造当時は乗務員室扉横に「H」のエンブレムマークも配され、尾灯・標識灯廻りはステンレスの帯で装飾。特急車に相応しい特別感を演出していました。

 登場後6300系は非常に好評で、その後1978(昭和53)年まで増備を行ない2800系を置き換え。名実ともに京都線特急のエースの座に就くことになります。また、1982(昭和57)年には界磁チョッパ制御+回生ブレーキを備えた6330形が1編成のみ登場し、6300系一族は黄金期を迎えました。

 ですが2000年代に入ると後継車が続々と登場。クロスシートをできるだけ多く配置するために車体の両端に寄せられたドアにより他の車両と扉位置が合わないことや、車両寸法の影響で地下鉄堺筋線乗り入れができないため、同車は用途が限定されていました。そのため一般車化改造などは行なわれず、嵐山線用に4両に短縮された3本(6351・6352・6353編成)と京とれいんに改造された6354編成を除いて廃車となってしまいました。

■観光列車に生まれ変わった6300系

 2011(平成23)年に阪急電鉄は京都へ向かう観光特急の運行開始が発表され、その専用車両として抜擢されたのがこの6300系でした。改造されたのは6354編成で、8両から6両に編成を短縮されはしたものの、ラッピングや内装を中心に改造が行なわれ、装い新たに生まれ変わりました。
 列車コンセプトは「和・モダン」としており、京都へ向かう観光特急らしい雰囲気を演出しています。特に編成中央の3・4号車は大規模な改造で、京町屋をイメージした内装に変貌しており、イ草を使用したクロスシートや、暖色系となった車内照明で車内空間を演出。さらに出入り口付近やパーティションを設けてデッキに近い構造としています。

 そのほかの1・2号車と5・6号車は簡易的な改造としながらも、京都の雰囲気を演出するためにシートモケットは1・2号車が「蘭の花散らし」、5・6号車が「麻の葉」をイメージした柄に変更されており、イメージを一新しています。

 現在(2022年12月)の種別は「快速特急A」となっていますが、かつては「快速特急」を名乗っていました。というのも、扉位置が車体端にある6300系は、2019(平成31)年に十三駅に設置されたホームドアに対応できず通過扱い(実際は扉扱いを行なわず停車する形態)としたのを区別するためで、現在はホームドアに対応している「京とれいん 雅洛」が十三に停車し「快速特急」を名乗っています。

■往年の「京都線特急」を体験!

 さて、12月17日を前に土休日のみの運用となる「京とれいん」は一足早く定期運行を終えます。そんな京とれいんに以前乗車した際に撮影した写真などを交えながらこちらでご紹介していこうと思います。


 なるべくかつての6300系を感じることができる車両に乗りたかったため、大規模に改造された5・6号車ではなく「麻の葉」をイメージしたシートの5号車へ乗車。乗ってみると予想以上にスピードを出しているように感じました。特に駅の通過時は車窓が流れるように過ぎ去っていき、その速さを体感することができます。
 またスピードは出していながらも、車両の方は経年を感じるようなことは全くなく、滑るような乗り心地で京都本線を快走していきます。種別名や内装は変わってしまったものの、十分にかつての「京都線特急」を感じることができる乗車体験となりました。

■定期運用終了後の6300系の行方は…

 京とれいんでの定期運用を終える6300系6354編成。公式からは定期運行を終えた以降の車両の処遇については明らかになっていません。生き残ったとしても、先述の通り、ホームドアに対応できない車体構造上、設置駅が増えるに伴い運用するのは難しくなっていくでしょう。嵐山線ではリニューアルされた4両3本の6300系たちが活躍していますが、この編成たちも含めて、今後の6300系の動向には注目が集まります。

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