現在、国鉄型特急電車が唯一定期運用されている特急列車が、岡山~出雲市間を伯備線経由で結ぶ「やくも」です。全列車が振り子式381系電車による運行で、現在うち1編成が国鉄色に復刻され、沿線は非常に盛り上がっています。今非常に注目度の高いこの「やくも」の歴史を紐解いてみましょう。
▲6両1編成が国鉄色に復刻されて運転中の「やくも」。’22.10.1 伯備線 黒坂~根雨 P:渋川 明
時に、「やくも=八雲」という言葉、意味をご存じでしょうか。「八雲立つ」が「出雲国」の枕詞であることから、出雲を目指す列車の象徴的な意味合いを持たせたもの…と言えます。その関係で「やくも」という列車名はこのエリアを走行する優等列車に幾度か命名されたことがあるのですが、本稿では伯備線経由で陰陽連絡の役目を持った特急列車ということで限定しましょう。
▲米子駅で乗車前に撮影したという、キハ181系時代の「やくも」。山陰本線 米子 P:井口博元(新規投稿より)
特急「やくも」としての誕生は、山陽新幹線岡山開業の1972年3月15日。それまで米子・出雲市方面は京都から山陰本線、または大阪から福知山線経由というのが一般的なルートでしたが、新幹線が岡山に到達したことによって伯備線が短絡ルートとして急浮上したのです。ただし、伯備線に特急が走ったのはこの時が初めてではなく、前年の1971年4月、急行を格上げする形で特急「おき」が新大阪~伯備線経由~出雲市間で登場。約1年後に「やくも」に置き換えられることで発展的に消滅しました。現在「おき」(キハ187系投入時に「スーパーおき」に改称)は山口線経由のやはり陰陽連絡特急の名称となっていますが、両列車の意外な因縁…といったところでしょうか。
▲電化直前、最後の力走を見せるキハ181系「やくも」。P:浅路 誠(新規投稿より)
さて、登場時の「やくも」は大出力特急型気動車のキハ181系で実に10両編成が所定、食堂車も連結されていました。本数も次第に増加し、気動車特急としては珍しいエル特急にも指定されています。しかし抜本的な高速化のため1982年7月1日に電化され、同時に自然振り子方式の381系を投入。そう、現在も頑張っている381系は今からちょうど40年前に新製投入されて以来、改造などを受けつつも一貫してこの列車を受け持っていることになります。時代の流れで食堂車はなくなりましたが、大幅なスピードアップが図られました。
▲「スーパーくろしお」につづき、パノラマグリーン車が連結された「スーパーやくも」。薄紫色系の塗色でした。山陽本線 岡山 P:阿部郁夫(新規投稿より)
▲速達型の「スーパーやくも」に対し、通常の「やくも」はリニューアルを受けて緑色系の塗色になりました。山陽本線 岡山 P:阿部郁夫(新規投稿より)
▲備中川面名物の満開の桜の下を行く「ゆったりやくも」色の381系。’20.4.4 伯備線 備中川面~木野山 P:井口博元(新規投稿より)
「やくも」用の381系は、登場時はもちろん国鉄特急色でしたが、その後3種もの専用塗色が施されたことでも知られます。最初に登場したのは1994年の「スーパーやくも」色で、薄紫色をベースとしたもの。この時に改造によってパノラマグリーン車が登場しています。この時点で無印「やくも」は国鉄色でしたが、1997年からリニューアルを受けた車両が緑色基調の新塗色となりました。そして2007年以降、「スーパー」と無印の両「やくも」が統合され、新たに赤色基調の「ゆったりやくも」色が登場。前述の国鉄色復活前までは全車がこの塗色となっていました。
▲色違いの381系「やくも」の行き違いシーン。’22.3.26 伯備線 清音~総社 P:田中瑛三
▲国鉄時代からも変わらぬ、乗務員による視差確認。’22.6.16 伯備線 新見 P:山本秀一
▲国鉄色復刻編成の片側先頭車は先頭車化改造された電動車で、正面に貫通扉を持ちます。’22.3.19 伯備線 豪渓~総社 P:荻野一徹
現代において、全列車が国鉄時代に製造された車両で運転されている、まさに奇跡のような存在である「やくも」ですが、後継車両として「273系」が開発中であることが明らかにされています。2024年春以降営業運転開始予定とされていますので、我々が「国鉄型パラダイス」の夢を見ていられるのもあとわずかの間ということになります…。
▲新型車両273系イメージ(詳細仕様、デザインは検討中)(JR西日本プレスリリースより)
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本シリーズでは、取り上げた列車について、皆さんからの秘蔵の写真を募集し、「みんなで作る」アルバムを構成したいと考えています! 今回の「やくも」については、1972年の伯備線特急としてのデビューから現在に至るまで、時代や状況は問わず、「やくも」が写っている写真であればOK!(伯備線時代の「おき」を撮っておられる方がいらしたら大歓迎!) 皆さんの撮影エピソードや、「やくも」に対する思い出なども添えて、ぜひご投稿ください!
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