text:RMライブラリー編集部
国鉄が民営化されてJR各社に移行してから早35年。JR時代にはもう消え去っていた輸送システムのひとつに、「鉄道小荷物」というのがあります。まさに国鉄民営化直前の1986年に制度として廃止されており、今や昔…のお話を一席させていただきましょう。
往年の山陰本線の荷物列車に連結されたマニ61 2004。
‘80.9.23 山陰本線 米子 P:豊永泰太郎
鉄道小荷物とは今で言う宅配便に近いサービスで、そのために電車・気動車・客車それぞれに、形式名に「ニ」が付く車両が各種用意されました。その性質上、古くなった旅客用車両からの改造転用などもあり、必然的にファンの興味を惹くような外観違いなども生じました。
■「鋼体化客車」の荷物車について
本記事では、客車の荷物車、それも木造客車の台枠や台車を再活用して、鋼製車体に載せ替えた一連の鋼体化客車のことを記したいと思います。この鋼体化客車は形式番号が60番代とされており(一部例外あり)、マニ60とマニ61という2形式が挙げられます。さらに、鉄道郵便輸送のための郵便室と合造となった郵便荷物合造車として、スユニ60とスユニ61の2形式があります。マニとスユニの違いはまあ分かるとして、それぞれの中で2形式に分けられているのですね。しかもその理由が、マニとスユニでは全然違うのです…。
■マニ60形とは
代表的な鋼体化客車の荷物車であるマニ60形。総両数565両という一大グループでした。成り立ち的には2つのグループに分けることができ、木造客車からストレートに改造されたグループ(この時にマニ60として専用の鋼製車体が新製されている)と、木造客車から一旦別の形式に改造されたものが、後年に荷物車へ再改造されて編入されたグループがあります。両グループでは一目で分かるくらい外観が異なっていました。
○木造客車からストレートに改造されたグループ
0・200・300・350番代が該当。合計205両。いずれも、側面2ヶ所にある荷物扉間の窓が、小窓×4枚というのが特徴になります。
0番代の1両であるマニ60 2041(2000番代なのは電気暖房取付時に元番号+2000となったもの)。
高崎線 高崎 P:豊永泰太郎
○別の鋼体化客車から再改造されたグループ
50・100・500・710番代が該当。合計360両なので、こちらの方が多数派です。種車はオハユニ63形やオハニ61形など、客室を持つ合造車が選ばれており、元の客室の特徴である幅の広い窓が部分的に残されていたものがほとんどです。
50番代の1両であるマニ60 2054。種車はオハユニ63形で、2ヶ所の荷物扉間には、小窓×1、大窓×2枚があります。
中央本線 新宿 P:豊永泰太郎
■マニ61形とは
それでは次にマニ61形とはどういう成り立ちだったのでしょうか。実はマニ61形は全車元マニ60形からの改造車で、台車がTR11からTR23へ振り替えられた…ということで別形式とされたものなのです。鋼体化客車のシンボル的存在であるTR11を履いていない鋼体化客車、ということになります。両数は41両とさほど多くはなく、現場ではマニ60形と特に区別はされずに使用されたようです。実はこの中で1両を除き、マニ60の中でも木造客車からストレートに改造されたグループが種車になっています。
マニ61 209は元マニ60 200番代からの改造。台車が軸ばね式のTR23になっていることがわかります。
‘66.6.26 品川客車区 P:豊永泰太郎
■スユニ60形とは
郵便輸送スペースと小荷物輸送スペースの両方を持つ郵便荷物合造車で、67両が誕生し、そのすべてが木造客車からストレートに改造されました。まばらに配置された側面窓がすべて小窓となるのが特徴です。郵便室の荷重4t、荷物室の荷重6tとなっています。
スユニ60 211。写真左手が郵便室、右手が荷物室で、郵便室の窓がない部分は車内に郵便区分棚があります。
‘63.9.13 函館客車区 P:豊永泰太郎
■スユニ61形とは
同じ郵便荷物合造車ですが、こちらはすべて他の鋼体化客車(5両だけ非鋼体化客車が含まれる)からの再改造で、90両が誕生しました。マニ60形では同一形式の中にふたつのグループがあったのに対し、スユニ60/61形の形式が分けられた理由は、郵便室の荷重5t(スユニ60形比+1t)、荷物室の荷重5t(同-1t)という違いがあったためと考えられています。
スユニ61 508は元スハニ61形。写真右端の窓は、元の客室に由来する大きいものです。写真左手が荷物室、右手が郵便室。
‘67.6.20 函館本線 札幌 P:豊永泰太郎
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さて、この4形式の荷物客車・郵便荷物合造客車、もちろんここで触れたのはほんの「さわり」に過ぎません。番代区分による違いや後天的改造による形態変化、中には帳簿上の種車とは明らかに現車の形態が異なるものもあり(部内で振替が行われたようです)、客車ファンを楽しくも悩ませてきたものです。それを明らかにした決定版的存在の2冊が、2011年刊行のRMライブラリー138・139巻「マニ60・61形 スユニ60・61形」(藤田吾郎さん著)です。長年品切れとなっておりご迷惑をお掛けしましたが、この度「RM Re-Library」として合本の上で復刊となりました!
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