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モハ…クハ…クモエ?今はあまり見かけない鉄道車両記号「エ」とは?公園で余生を過ごすクモエ21001。

2022.09.18

text & photo:上石知足(鉄道ホビダス)

 東北本線(宇都宮線)小金井駅から徒歩8分ほどの位置にある「日酸(にっさん)公園」。ここにひっそりと佇む1両の保存車があります。それがこの「クモエ21001」です。近年の鉄道車両ではあまり見かけない「エ」の車両記号ですが…?
 今回はこの「クモエ」を至近距離で観察できるこの公園に訪れ、珍しい救援電車の保存車であり、17m級国電の生き残りである同車について詳しく見ていこうと思います。

■「けがした電車を助けた電車」

 このクモエ21001の記号に使われている「エ」とは、鉄道事故や災害などが発生した際に、迅速に復旧するため用意された「救援車」という種類の車両に割り振られた記号で、営業では使用しない事業用車両の一種となっています。車内には事故や災害復旧のための復旧資材などを積んでいます。また、電車のほか客車・貨車にも存在していましたが、近年ではより機動性の高いトラックなどに取って代わられることが多くなっており、その姿を車両基地の隅っこで見かける…ということも少なくなってきました。

 この公園ではそんな救援車を「けがした電車を助けた電車」として紹介されており、パンタ側の前面には専用のヘッドマークも掲げています。そのヘッドマークをよく見ると車号の部分が「クモエ21001」ではなく「クモエ2001」になっていたりしますが、これもご愛嬌というものでしょう。

■長らく仙石線で活躍していた電車

 クモエ21001はモハ30形→クモハ11形を出自としており、元々は17m級3ドアの電車でした。1927(昭和2)年に製造され、旅客車両としての晩年は「クモハ11106」として仙石線で活躍。末期には混雑対策として、旅客の流動性向上を目的とした貫通化改造が実施されています。貫通型のパンタ側前面にはその頃の面影が比較的残っています。
 1967(昭和42)年に盛岡工場にてこのクモハ11106は救援車クモエ21001に改造されました。この改造で両運転台化の際に新設された前面は非貫通となっており、前と後ろで違った顔になっています。

 そしてJR化を間近に控えた1986(昭和61)年にクモエ21001は廃車となりました。それから現在(2022年)に至るまでこの日酸公園にて静かに保存されています。

■現在は公園で余生を送る

▲車番を見ると横軽対策の証である直径40mmの丸印「Gマーク」が書かれる。

 この日酸公園ではクモエ21001を屋根付きで保存しています。さらに、部品の欠損や壊れた箇所もほぼ無く、近年色の塗り直しも行なわれたこともあり、綺麗な状態が保たれています。

 ひっそりと佇むこの「クモエ」ですが、そもそも保存車の数が少ない旧型国電の生き残りである上に、さらに貴重な救援電車の保存車、ということになります。以前は佐久間レールパークにも同形式の救援車で低屋根改造がされたクモエ21800が保存されていましたが、こちらは解体されてしまいました。

 旧型国電として、また救援電車として、歴史の生き証人となっているこのクモエ21001。車内には入れないものの、比較的近くで観察できるというのもまたレイル・ファン的には魅力の一つではないでしょうか?今は公園で子供達の遊び声を聞きながらひっそりと余生を送っています。

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