185系

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3月運行終了! 「とれいゆ つばさ」の車内はどうなっていた?

2022.02.05

text & photo:RM
取材日:’14.6.30 場所:山形車両センター
取材協力:東日本旅客鉄道

前代未聞、「足湯のある新幹線」

 山形新幹線で2014年7月から活躍してきたE3系700番代「とれいゆ つばさ」が、2022年3月で運行を終了する。3月6日の通常運行ラストランにつづき、3月いっぱいは団臨としてかなり多くの本数が設定されている。

▲デザインは山形県出身のケン奥山氏が担当。メタリックブルーは「もがみブルー」、ライトグリーンは「月山グリーン」、円弧を描くダークグリーンは「つばさグリーン」、ベースとなる白は「蔵王ブライト」と名付けられた色だ。

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 この車両の最大の特徴は、新幹線として初めての「のってたのしい列車」であったことだ。「のってたのしい列車」とはJR東日本独自のカテゴリーで、かつてならジョイフルトレインとも称された一連の観光用車両および列車のこと。かつてのジョイフルトレインは団体臨時用を主要用途とし、それゆえに走行日や走行区間は限定されなかったが、「のってたのしい列車」は基本的に走行区間とダイヤが設定されていて、観光に向く時期には高頻度で運行される(シーズン外などにはそれ以外のルートで団体臨時列車としても運行される)。

▲新幹線だけでなく、在来線用車両まで含めても前代未聞と言えた、車内の足湯。

 乗車している時間そのものをレジャーとして楽しむ、という発想は、根本的に新幹線の存在意義とは矛盾している。新幹線での乗車時間は、基本的には「短ければ短いほど良く」、「快適でさえあれば、それ以上の要素は不要」だ。一方の「のってたのしい列車」は「車内にエンターテインメント要素があり」「場合によっては通常の列車よりも敢えて乗車時間を長くして」運行される。この「とれいゆ つばさ」の列車企画、在来線での「のってたのしい列車」よりも極めてチャレンジングであったと言えるだろう。

▲浴槽は2ヶ所あり、互い違いの向きでそれぞれの車窓を楽しめるようになっていた。

 その最大の目玉は、新庄方先頭車である16号車に設置された足湯「くつろぎの間」だ。この車両は定員0名で車内には2ヶ所の浴槽があり、車窓を眺めながらくつろぐことができる(2ヶ所の浴槽は互い違いの向きで設置)。山形新幹線沿線は温泉の名所でもあり、その気分を列車の中から早くも味わえるという趣向である(実際に張られているお湯は、温泉から汲み上げたものではない)。

▲湯上りラウンドは掘りごたつ状の畳敷き。右側の通路は人造石材が張られている。

 その隣の15号車も定員0名で、湯上りラウンジ「モノや人との出会いの間」だ。バーカウンターがあり地酒や特産品が販売された他、靴を履いたまま座れる畳の座敷となっている。車内はシックなモノトーン基調で、どちらかといえば大人の方をターゲットしていたことも窺えた。

▲12~14号車のお座敷指定席。写真は12号車。天井や座席背面のレリーフは洋梨をモチーフとしたものだ。

 12~14号車の3両はお座敷の指定席「食と語らいの間」だ。据え付けの木製テーブルに、赤い背ずりのシートが鮮やか。お座敷と言っても座面が畳であるだけで、基本的には洋式な椅子であり、海外からの旅行客にとっても無理なく利用できるものとなっていた。

▲11号車はグリーン車時代のシートがそのままとされた普通車指定席。

 福島方先頭車の11号車は、かつてグリーン車だったものを普通車指定席に改装したもので、シートはそのまま、カーペットやブラインドが変更された程度となっている。

▲「こまち」用E3系は速度向上のために早めにE6系に更新され、多くが比較的短命で廃車されたが、このR18編成は2003年以来19年間という、新幹線としては長命を保った。

 ベースとなったE3系は、新製当初はここ山形新幹線「つばさ」ではなく秋田新幹線「こまち」で活躍していた車両だ。「こまち」へのE6系投入で「とれいゆ つばさ」に転用されることになり、前述のような車内の改装と外部塗色の変更などを受けたもの。この時に車番が700番代となったが、編成番号は秋田新幹線時代以来、R18編成のままである。通常の運行区間は山形新幹線・福島~新庄間、つまり厳密に言うと在来線区間のみで、決して高速ではない速度で運行されたというのもユニークであった。

▲フルーツ王国の山形県だけに、果物をモチーフとしたシンボルマーク。

 新幹線の「のってたのしい列車」は、第2弾として上越新幹線に同じくE3系700番代「現美新幹線」(編成番号R19)が2016年に登場したが、一足早く2020年に運行終了済。今回の「とれいゆ つばさ」の運行終了で、一旦消滅ということになる。

ありがとう とれいゆ つばさ 特設WEBサイト

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