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特集・コラム

「ザ・ラストワンの肖像」…EF66 27

2021.11.12

text:RM

奇跡の生き残り、奇跡の更新機「ニーナ」

 国鉄時代の代表的な直流電機、EF64・65・66形。それぞれ登場から50年以上という歳月が過ぎ、今や最も典型的な形態となるEF64 0番代、EF65 500番代、EF66 0番代の中ではそれぞれ1両だけが現役を続けています。発売中のムック『ザ・ラストワン EF64・65・66』連動のWEB企画「ザ・ラストワンの肖像」では、この「それぞれの最後の1両」となった3両のプロフィールを説き明かしてまいりましょう。

▲富士山をバックに見事なフルコン積載状態で行く千両役者。
‘17.2.11 東海道本線 茅ケ崎~辻堂 P:伏木田 潔(今日の一枚 Memories Specialより)

 登場時、「狭軌世界最強」と謳われた強力機EF66形。国鉄時代に誕生した56両のうち、試作機901号機(元EF90 1)を除く55両が0番代でした。JR化後に意外にも「再生産」がかかり100番代が33両誕生しましたが、スタイルとカラーリングは大きく変わっています。現在、JR貨物吹田機関区に所属する27号機は、0番代(900番代を含めても)最後の1両であり、国鉄時代に誕生したEF66形最後の生き残り、と言うことも出来ます。

▲高崎機関区のイベントで顔を揃えたオンリーワンたち。EF60 19は既にこの世に亡い。
‘16.10.9 高崎機関区 P:長島信幸(今日の一枚 Memories Specialより)

 27号機の落成は1973年8月15日、メーカーは川崎重工/富士電機でした。0番代は1968~69年誕生の1次型と、1973~75年誕生の2次型に大別されますが、後者に属することになります。1次型との形態上の大きな違いは、前面窓上にヒサシが取り付けられたことでした(後に1次型で追設した車両もあり)。

▲国鉄時代の貴重なカット。当時は菱形のPS17パンタを搭載していた。この時点で27号機が後の大スターになることを予見していた人はいなかったはず。
‘82.1.15 山陽本線 須磨~塩屋 P:久宗勝弘(今日の一枚 Memories Specialより)

 新製配置は下関機関区。この時代のEF66形は全車東海道・山陽本線の高速貨物用であり、10000系高速貨車などを牽いて活躍しました。そして1984年に吹田機関区に転属。結果から言うと1984~86年の間に吹田組と下関組に振り分けられたEF66は、1987年の民営化でそのままJR貨物とJR西日本に分かれることとなりました。

▲日鐵チキとして人気があるレール輸送の先頭にも立っていた。
‘18.1.21 東海道本線 金谷~島田 P:島崎 誠(今日の一枚 Memories Specialより)

 ちなみに、EF66形がブルートレインの牽引に就くようになったのは1985年3月以降で、受け持ちは下関運転所。この時点で吹田へ転出していた27号機がブルートレインの先頭に立つことは基本あり得なかったのですが、所定機の故障などによるピンチヒッターとしてならあり得たのかもしれません。

▲シキ800形の引退時のエスコートにも抜擢された27号機。
‘19.11.27 東海道本線 新居町~弁天島 P:田中宏一(今日の一枚 Memories Specialより)

 その後の形態変化で大きかったのは、JR移行後早々の1988年に運転台屋上に冷風装置を搭載したこと(ちなみにこの改造は2次型のみが対象、またJR西日本ではこのような改造は行われませんでした)。また、時期不明ながら、当初の菱形PS17パンタから下枠交差のPS22B形パンタへの交換も行われています。

▲E&S方式となって本線上で荷役を行うEF66 27。架線位置が高く、パンタも高く上がっている。
‘20.1.22 東海道本線(貨物支線) 横浜羽沢 P:長井竜平(今日の一枚 Memories Specialより)

 JR貨物では1993年からEF66 0番代の更新工事を開始。更新に際しては前面ナンバープレートの飾り台座や飾り帯を撤去し、また塗色も100番代によく似た感じのライトパープル+ディープブルーの塗り分けとされました。2004年以降は新更新色として青15号にクリーム1号という元塗色に少しイメージが似ているものに変更。しかしこの更新工事は案外進行が遅く、更新されないまま廃車となった車両もいます。そして27号機は2006年にこの更新工事が施工されましたが、既に0番代の更新はこれが最後となることが決定しており、敢えて形態的にはほぼ変化なく、塗色も国鉄色のままで出場したのです。ただしよく観察すると、他の多くの更新機と同様、車体裾部の腰板が撤去されて側面下部に段差が生じ、これに伴って製造銘板がナンバー直下に移設されています。また側面肩部から上部がグレー塗装とされている(運転台屋上も含む)点も、厳密には元の塗色とは異なる点となります。

▲現在は美濃赤坂支線での「赤ホキ」牽引にも活躍中。
‘21.4.17 東海道本線(美濃赤坂支線) 美濃赤坂~荒尾 P:星野湧雅(今日の一枚 Memories Specialより)

いつから「ラストワン」だったのか…?
 
前述の通り、EF66形はJR貨物の他、JR西日本にも配置されていましたが、後者は2010年に全廃。JR貨物機は0番代・100番代とも共通運用で貨物列車牽引に活躍していましたが、0番代はEF210形の増備などによって加速的に数を減らしていき、2017年時点では稼働機4両、そして翌2018年には事実上27号機が唯一の稼働機となっています。記録上は2019年度中に30号機が廃車となり、以後は27号機が「ザ・ラストワン」となりました。とはいえ100番代との共通運用で特に区別されることもなく定期運用に就いており、ついには2020年度までに全廃されてしまった丸型ライトの100番代前期型よりも長生き…ということとなって現在に至っています。

 さて、ムック『ザ・ラストワン EF64・65・66』は全国書店にて発売中ですが、「ネコパブショップ」でご購入いただくと、限定特典として「EF66 27/EF65 501 A2判両面ポスター」をプレゼント致します! (両面印刷ですので、特典としては1枚になります)。お求めは下記リンク先へ。

🔶ザ・ラストワン EF64・65・66 新刊情報

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