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■栄えある特急専用番代のトップナンバー
国鉄時代の代表的な直流電機、EF64・65・66形。それぞれ登場から50年以上という歳月が過ぎ、今や最も典型的な形態となるEF64 0番代、EF65 500番代、EF66 0番代の中ではそれぞれ1両だけが現役を続けています。発売中のムック『ザ・ラストワン EF64・65・66』連動のWEB企画「ザ・ラストワンの肖像」では、この「それぞれの最後の1両」となった3両のプロフィールを説き明かしてまいりましょう。
▲「ELぐんま よこかわ」でSLとのプッシュプルを行うEF65 501。
‘20.2.1 信越本線 群馬八幡〜安中 P:遠藤秀崇(今日の一枚 Memories Specialより)
EF65 500番代唯一、いや同じ非貫通前面を持つEF65 0番代まで含めても唯一の現役機は、JR東日本高崎車両センター高崎支所所属の501号機。落成は実に56年前となる1965年6月26日、メーカーは川崎車輛/川崎電機でした。この500番代という番代区分は、特急旅客および特急貨物用の特別なグループで、一般用0番代に比べるとブレーキ関係の強化が行われ、また塗色は先任のEF60 500番代に準じる特急塗装とされました。旅客用がP型、貨物用がF型と呼称され、主に連結器周りに顕著な形態差がありましたが、501号機はP型となります。
▲14系との黄金コンビでの「さくら」。下関時代の写真。
‘76.5.5 山陽本線 小野田~厚狭 P:杉山俊一(今日の一枚 Memories Specialより)
トップナンバーなので500番代の中では1次型に属し、形態的には赤色円板台座となる長円形のフランジが付く内バメ式テールライト、短い誘導員手すり…といった特徴があります。塗色は前述の通りの特急塗装ですが、色の組み合わせ自体は通常の直流電機と同じ、青15号+クリーム1号です。実はこの501号機、新製後割とすぐに、なぜか一般型と同じ塗装にされてしまった時期がある…というのは知る人ぞ知るエピソード(その時の写真がムック『ザ・ラストワン EF64・65・66』に掲載されています)。
▲ブルトレ牽引から退き、静岡ローカルの貨物列車を牽引していた沼津時代。
‘79.12.1 東海道本線 掛川 P:大谷真弘(今日の一枚 Memories Specialより)
新製配置はもちろん栄光の東京機関区で、東京発の九州行きブルートレイン(登場時はすべて20系)の先頭に立って大車輪での活躍を開始します。あさかぜ、さくら、はやぶさ、富士、みずほ…きらびやかなヘッドマークを装着して日夜東京~下関を往来。この間の走行距離の延び方は今からでは想像できないほど過酷なものだったと言われています。そして1972年に下関運転所に転属。これは集中台車検査方式の導入によるもので、東京区のカマが下関に入場中、代理としてやはりブルートレインの先頭に立つというものでした。
▲リバイバルトレインとして24系ブルトレの先頭に立った時の雄姿。
‘14.12.19 東海道本線 湯河原~熱海 P:田井 直(今日の一枚 Memories Specialより)
500番代の栄光の特急牽引時代は1978年に後継の1000番代投入によって終わりを迎えます。実働13年は今から思うとずいぶん短い気がしますが、501号機は沼津機関区に転属。ローカル貨物列車を0番代との共通運用で牽くようになります。一種の格下げではありますが、特急塗装が失われなかったのは何より(先任のEF60 500番代は一般塗装に変更されてしまっていた)。その後1983年に東京機関区に復帰、1985年に高崎第二機関区へ転属。この時、すべての500番代機が高崎の地に集約されましたが、JR移行時、この501号機だけが旅客会社のJR東日本に所属となり、配置は高崎運転所(後の高崎車両センター高崎支所)となりました。
▲JR貨物貸し出しの期間は、稼働率も高く、人気を集めた。
‘06.7.15 総武本線 東千葉~都賀 P:桑原優司(今日の一枚 Memories Specialより)
JR化後のトピックは、EF64 37とまったく同じ経緯、つまりATS-P形保安装置搭載のため、テールライトが外バメ式に交換されています(1991年)。主な運用は高崎周辺の工臨列車、配給列車牽引の他、イベント列車の牽引などでしたが、2005~2008年はJR貨物に貸し出され、貨物列車牽引を担いました。これはJR貨物の所有機関車へのATS-PF型搭載工事の際の車両不足を補うためのもの。しかし皮肉にもJR貨物所有の500番代機はその工事対象から外れたため、この搭載工事の終了こそが、501号機が「ラストワン」になってしまう合図となったのです。
▲高崎機関区のイベントで、貨物所属機たちと並んだ晴れ姿。
‘04.12.11 高崎機関区 P:浅路 誠(今日の一枚 Memories Specialより)
貸し出し終了後は元のような工臨、配給、イベント列車用として活躍。近年最も有名な活躍は「ELぐんま よこかわ」「ELぐんま みなかみ」の牽引で、時にはSLとのプッシュプルで我々レイル・ファンを楽しませてくれているのです。
■いつから「ラストワン」だったのか…?
前述の通り、EF65 500番代はJR東日本に501号機1両、その他はすべてJR貨物に引き継がれていましたが、2008年4月にJR貨物で最後まで活躍していた6両がATS機器の関係で運用に入ることができなくなり、実質的にこれ以後501号機が「ラストワン」となっています。
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