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特集・コラム

10月の鉄道のデキゴト「四国最初の鉄道として伊予鉄道開業(1888年)」

2021.10.21

text:RM

四国だけ、最初の鉄道が今も「私鉄」

 「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! ティーブレイクにでも気軽にお楽しみください。

▲現在の高浜線を含む郊外線は元京王電鉄などの電車が走る。写真はオレンジ色一色の新塗装をまとった700系(元京王5000系)。
‘15.8.17 伊予鉄道郡中線 松山市 P:安藤宏晃(鉄道投稿情報局より)

 本日は、133年前となる1888(明治21)年の10月28日の出来事を振り返ってみましょう。この日、四国最初の鉄道として伊予鉄道の松山~三津間が開業したのです。私鉄が最初の鉄道だったというのにやや意外な感がありますが、実は九州最初の鉄道も九州鉄道という私鉄でした。しかし同社は後に国有化されて今のJR線の大元になっておりますので、伊予鉄道が今に至るまで私鉄の形態を維持しているのは実に稀有な存在、現存する私鉄の中では2番目に古い歴史を誇っているのです(ちなみに最も古い歴史を持つ私鉄は南海電気鉄道)。

▲伊予鉄道110形。西武鉄道151形を車体更新の上で導入した車両。戦前の川崎造船所特有の深い屋根が特徴だった。
‘82.8 伊予鉄道高浜線 松山市 P:深山剛志(消えた車両写真館より)

 最初の開業区間のうち、松山駅は今の松山市駅、三津駅は今も健在。すなわち現在の高浜線の一部ということになります。今は1,067mm軌間で複線電化され、2~3両編成の通勤電車タイプの車両が走る近郊路線ですが、開業時は762mm軌間、もちろん非電化でドイツ・クラウス社製の小型蒸気機関車が活躍しました。三津駅を最寄りとする三津浜港へは、関西や九州とを結ぶ定期船が就航しており、そこから松山市街地へ客貨を運ぶ役目を担ったのです。

▲かつて漱石自身が乗車し、小説中にも登場させた伊予鉄道の蒸機列車。それをモチーフとした観光列車が今の「坊ちゃん列車」だ。
‘10.2.12 伊予鉄道松山市内線 松山市駅前 P:楢井勝行(今日の一枚Memoriesより)

 現在の伊予鉄道では、市内線にて「坊ちゃん列車」を運行しています。夏目漱石の小説『坊ちゃん』では主人公が船で松山に着いた後、列車で移動する際にはこの三津駅から乗ったと読める描写があります。この小説は漱石自身の体験をモデルに書かれており、実際漱石は1895年から翌年にかけて、愛媛県尋常中学校で教鞭を執っていました。この時点での伊予鉄道は開業から7~8年目という新しい交通手段であったのです。

▲伊予鉄道モハ200形は高浜線電化時に導入された自社発注車。
‘82.8 伊予鉄道高浜線 大手町 P:深山剛志(消えた車両写真館より)

 ちなみに現在のJR四国線(ひいては元国鉄線)のルーツは1年遅れの1889年に開業した讃岐鉄道丸亀~琴平間。こちらも元私鉄だったのですが、1906年に国有化され、今の予讃線・土讃線の一部となっています。

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