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特集・コラム

9月の鉄道のデキゴト「山万ユーカリが丘線全線開業(1983年)」

2021.09.27

text:RM

ニュータウンを行く「こあら号」

 「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! ティーブレイクにでも気軽にお楽しみください。

▲3編成の1000形には、「こあら1~3号」という愛称がそれぞれ付けられている。写真は2号。
‘14.7.27 山万ユーカリが丘線 中学校 P:鈴木重幸

 今回は、38年前となる1983年9月22日のデキゴト。千葉県の新交通システム、山万ユーカリが丘線が全線開業したのがこの日のことで、前年1982年11月のユーカリが丘~中学校間の暫定開業から1年弱にて全線開業の運びとなりました。

▲タワーマンションの未来的な光景の中、同じく未来的なデザインの車両が違和感なく溶け込む。
‘14.7.27 山万ユーカリが丘線 ユーカリが丘 P:鈴木重幸

 山万(やままん)とは東京に本社を置く不動産会社(デベロッパー)で、千葉県佐倉市に展開する「ユーカリが丘ニュータウン」はその代表的な開発事例。しかもそのニュータウン内では、自社内の鉄道事業本部が運営する軌道系交通(ここでは新交通システム)までを完全新規に敷設して営業運転しているという、国内でかなり希少な事例と言えましょう。

▲中央案内軌条の様子がよくわかるカット。車両は「こあら1号」。
‘14.7.27 山万ユーカリが丘線 中学校 P:鈴木重幸

 新交通システム、ここではゴムタイヤで走行する案内軌条式鉄道(近年はAGTとも称する)のことを指しますが、山万が導入したのは神戸、大阪に次ぐ国内3番目の事例でした。システムとしては日本車輌と三井物産が開発した「VONA(ボナ)システム」で、営業路線としてはこれが初採用。VONAの特徴は案内軌条が中央案内式であることで、多くのAGTと異なり外部にガイドローラーが露出せず、また軌道の側壁が必要ありません。その後、同システムは愛知県の桃花台(とうかだい)新交通でも採用されましたがそちらは既に廃止となったため、現在国内で唯一の事例となっています。

▲写真は後追いで、ラケットのフェイス部からグリップ部へ合流するところ。
‘14.7.27 山万ユーカリが丘線 公園 P:鈴木重幸

 路線の形にも非常に特徴があり、京成電鉄本線と接続するユーカリが丘駅を起点としたラケット状の路線となっています。ユーカリが丘駅を出た電車は島式の公園駅ホームで右に分岐し、女子大→中学校→井野と反時計回りで周回し公園駅でまた元の路線に合流してユーカリが丘に先ほどとは逆向きで到着。1回の運行ごとに車両の向きが逆になるという大変珍しいものです。全行程の所要時間は14分、ワンマン運転で200円の均一運賃となっています。

▲2012年、暫定開業から30周年を記念し、全編成に開業30周年記念ヘッドマークと「コアラファミリー」のラッピングが施された。写真は「こあら3号」。
‘12.11.4 山万ユーカリが丘線 公園 P:福田智志(鉄道投稿情報局より)

 同線で運行されている車両は開業以来の生え抜き、1000形3編成。丸みを帯びた流線形車体で親しみやすい外観もあって愛称は「こあら号」とされています(ユーカリを主食とするコアラ、という意味合いもあり)。未来的なスタイルですが、実は新製時から今に至るまで非冷房車というのが弱点。近年は夏場に車内でおしぼりやうちわがサービスされているとか。

 経営形態、車両や路線の特徴、その他多くの要素がオンリーワンという存在。この初代車両もまだまだ活躍してもらいたいと思わずにはいられません。

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