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特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:3-8 銚子電鉄 銚子駅(絶対にあきらめない 銚子)

2021.05.23

取材日:’21.2.25
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。2021年5月号で取り上げた銚子電鉄をWEB編で補完してまいりましたが、ようやく最終回。路線の始点で、JR線との接続駅でもある銚子駅とその周辺を見ていきましょう。

▲手前の尖塔のような部分がかつての駅シンボル・風車の名残り。奥が待合室。

 ネーミングライツによる駅愛称は「絶対にあきらめない 銚子」となっています。崖っぷちと自ら表明している銚子電鉄だけでなく、人口流出・財政危機などに悩む銚子市全体への応援メッセージと言えるでしょう。ネーミングライツ取得者は2社の共同で、共に千葉市に本拠を置く(株)BAN-ZI(塗料開発製造)、(株)REPROUD(塗装施工)です。

▲「絶対にあきらめない ちょうし H.ANDO」と記された駅名坂。「H.ANDO」の由来は不明。

▲JRのホームから突端方に進んだところに銚子電鉄ホームがある。手前はSUICAの読み取り機(銚子電鉄線内では利用不可で、JRとしての精算および下車記録をするもの)。

 さて前回の仲ノ町駅の記事にて記した通り、銚子電鉄は銚子~妙見堂踏切まではJRの線路に乗り入れています。その関係で銚子電鉄の銚子駅はJR線の2・3番線の東寄り先端を切り欠いた部分に間借りした形になっています。南北両側を正真正銘JRの線路に挟まれた場所で、配線を観察すればこの線路がJRの所有・管理するものだということが理解できるでしょう。

▲銚子電鉄ホームを車止め側から見る。左側はJRの1 ・2番線から延びてくる線路で、奥の方でポイントでつながっている。

▲JRの駅舎から入った銚子電鉄の乗客は、跨線橋を渡って2番線先端まで移動する。写真は跨線橋壁面に掲示された案内看板。

 駅舎…というか既にJRの駅構内のホーム上なので駅舎と呼ぶのも少々おかしな気がしますが、とにかく背の高い変わった建物があります。これは例によって内野屋工務店傘下の時代にオランダ風の風車小屋を模して建てられたもので、その後老朽化によって羽根部分を撤去した状態です。その奥にやはり欧風建築の待合室がありますが銚子電鉄としての駅員配置はなく、切符などはJRの切符売り場にて購入するか、もしくは車内で車掌から購入することになります。

▲2018年に完成したばかりのJR銚子駅新駅舎。

▲屋内はなんと醤油蔵をイメージして木材を多用したユニークなもの。

▲旧駅舎の右手にあった詰所部分は今もリフォームの上で活用されている。

 ここで駅の外に出てJRとしての駅舎も見てみましょう。長年、赤屋根切妻建築の大型の駅舎で親しまれてきた同駅ですが(余談ながらその旧駅舎は旧海軍の飛行機格納庫を移築したものだったので、駅舎としてはかなり変わった形態だった)、2018年に新駅舎が完成。機能的でシンプルな外形ですが、屋内は特産の「醤油蔵」をイメージして木材を多用した温かいイメージとなっています。旧駅舎の建物もリフォームの上で一部残っており、職員詰所などとして使用中です。

 さて、前回はヤマサ醤油の貨物専用線を観察しましたが、銚子の醤油メーカーもう一方の雄、ヒゲタ醤油にもかつて貨物専用線がありました。銚子電鉄とは完全に関係のない方向になりますが、これも見ない手はありません。

▲銚子駅上り方1個目の清川町踏切からの眺め。255系は銚子駅1番線に停車中。最も右寄りに意味ありげなレールが埋め込まれている…。

▲線路間隔から言って、何らかの付け替えが行なわれているのは間違いなく、この埋め込まれたレールがかつての専用線のものという確証は得られなかった。

 ヒゲタ醤油の工場は、銚子駅から総武本線を上り方向に進んだ左手、線路沿いの位置にあり、銚子駅から専用線が総武本線に沿ってまっすぐ延びていたとされます。まず銚子駅から1個目の清川町踏切に、埋もれたレールが見つかりました。しかし生きているJRの線路との間隔が不自然で、線路付け替えの関係で残された国鉄/JRの線路という可能性もありそうです。

▲さらに上り方向に進んだ荒野踏切。左手の金属製のゲートから先がヒゲタ醤油工場敷地。

▲右側の線路はJR総武本線で、それに並行する形でずっと延びてきたヒゲタ醤油専用線がこの門から工場構内に入っていた。

 もう少し上り方向に進み、荒野踏切まで来ると、専用線が工場に入るところの「貨車門」が見事に残っています! 踏切はレールこそ剥がされていますが、往年の様子を窺わせるには十分な雰囲気です。専用線の線路敷部分は雑草に覆われており、レールが残っているかどうかはわかりませんでした。

▲建て替え工事が盛んに行なわれているヒゲタ醤油工場。建屋手前のバンが停車しているのはかつての積み下ろしホームだった場所。写真右手に近年まで薄緑色のホーム壁が残されていたのだが…。

 この先、総武本線の反対側からヒゲタ醤油の工場を観察すると、積み下ろしホームに近年まで見事な差し掛け屋根が残っていたのですが…残念、工場建屋の建て替えが進んでいるらしく、特徴的だった薄緑色のホーム壁部分は既に撤去されていました。取材時点でも工事は進行中だったようで、かろうじて見ることが出来た三角屋根の工場部も今はどうなっていることでしょう…。

 さて8回に渡ってお届けしてきたシーナリー散歩・銚子電鉄編もこれにて終了。新たに発売されたレイル・マガジン2021年7月号では、天竜浜名湖鉄道を取り上げています。WEB編も次回から新章として同鉄道編をお届けいたします!

🔶レイル・マガジン2021年5月号(448号)新刊情報

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