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特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:3-7 銚子電鉄 仲ノ町駅(パールショップともえ仲ノ町)(後編)

2021.05.16

取材日:’21.2.25
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。発売中の2021年5月号では銚子電鉄を取り上げており、本WEB連載もそろそろ大詰めが近づいてきました。前回につづき、同社中枢駅である仲ノ町駅について、今回は主に周辺状況などを見てまいります。

▲イラスト:遠藤イヅル(第1回掲載のものの部分アップ)

 仲ノ町駅は、銚子電鉄線の始発駅である銚子駅の次駅で、銚子駅を出て最初の踏切が妙見堂踏切と言います。ここを走る列車は当然ながら銚子電鉄の電車だけ…少なくとも今現在においては。しかしこの踏切は実はJR東日本が管理しており、線路自体もJRの所有物なのです。

▲銚子~仲ノ町間に位置する妙見堂踏切。写真右奥が銚子駅である。

▲踏切の各種掲示物にはJRの連絡先が記されている。

▲終点・銚子に向かう3000系電車。右手前に見える分岐器から奥が銚子電鉄自社所有線路となる。

 というのも、実はかつて総武本線は旅客としての終点・銚子のさらに遠方に、貨物専用の新生(あらおい)駅があり、この踏切は同駅へつながっていた線路の上にあるのです。銚子電鉄線はこの踏切の仲ノ町寄りすぐのところで分岐しており、分岐器自体も残されているのですが、JR線の方はそのすぐ先でコンクリート製の車止めに突き当たってしまいます。

▲踏切を渡ってすぐ、銚子電鉄線が右に分岐し、左の線路は車止めに突き当たる。この先にかつて貨物専用の新生駅があった。

 新生駅は銚子駅から800mのところにあって、銚子港で水揚げされた鮮魚や名産品である醤油の出荷などに使われていましたが、1978年に廃止。その後数年間放置の後、今は市立の中央みどり公園となっています。記念碑以外にかつて貨物駅であった名残は特にないのですが、敷地の形は線路が枝状に広がっていたことを思い起こさせる感じです。

▲かつての線路跡地を辿ると、新生駅跡に整備された銚子市立中央みどり公園がある。線路が枝分かれていた様子が窺える敷地形状だ。

▲新生駅跡地であることを記した記念碑が建っているが、それ以外に特に鉄道に関するものは残されていない。

 歴史を紐解くと、さらにこの先、銚子漁港へつながる臨港貨物線があったのですが、1950年代末という比較的早い段階で休止されており、わかりやすい痕跡は残されていないようです…。

▲中央みどり公園は平坦な敷地に芝生が広く植えられて今や市民の憩いの場となっている。

 さて前回、「仲ノ町駅は線路の両側共にヤマサ醤油の工場に囲まれている」と記しました。線路の南側が第一、北側が第二工場なのですが、かつてはそれぞれの工場に貨物専用線があったのです。

▲右手の駐車場がかつての国鉄の貨物線敷地で、今はヤマサ醤油工場の従業員駐車場となっているようだ。左手の工場建物に貨物ホームのような差し掛け屋根が見える。

▲フェンス越しに見る差し掛け屋根。ここがヤマサの第二工場専用線跡のようだ。

 まずは新生駅へ向かう道路を進むと、左手にヤマサ第二工場があり、壁の向こうにいかにも貨物ホームらしき差し掛け屋根が見えます。ここが第二工場の専用線跡です。ここは銚子電鉄とは関係なく、国鉄線と直接つながっていました。

▲ヤマサ第一工場の方は、銚子電鉄線のすぐ南に位置しており、仲ノ町駅直前で線路が左にカーブするところを直進する形でかつて専用線が敷かれていた。

▲仲ノ町の留置線のすぐ向こうに、やはり貨物ホームらしき差し掛け屋根が残されている。ここが第一工場専用線跡のひとつ。

 一方、第一工場の方は、銚子電鉄線の仲ノ町駅直前で分岐し、現在の留置線のすぐ向こうのあたりにやはりそれらしき差し掛け屋根が残っています。デキ3が貨車の入換に活躍したのはこのあたりでしょうか。

▲銚子電鉄線がまっすぐ延びていくとヤマサの工場にちょうど突っ込む位置関係。

 また取材当日は確認不足に終わってしまったのですが、実はもう1本分岐した専用線があり、より工場中央部に入り込んでいたとのこと。町の規模・工場の規模から言って想像以上の密度で専用線が敷き回されていたことに驚かされると共に、銚子電鉄がその一翼を担っていたということも記憶に留めなければ…と感じた次第です。

▲ヤマサ醤油工場内に保存されている「オットー」石油発動機式機関車。P:門田 進

 さてヤマサ醤油第一工場内には、貴重な鉄道車両が保存されているのでそれについても触れておきましょう。と申しましても現在はコロナ禍のため見学は一切中止されており、取材としても中に入ることはできなかったのですが、工場内での入換に使われていた超小型2軸内燃機関車です。ドイツのドイッツ発動機製造会社で製造されたもので、灯油を燃料とする石油発動機を搭載。車体の幅が異様に狭いのも特徴と言えるでしょう。コロナ禍が過ぎ去って、この機関車に会いに行ける日が待ち遠しいものです。

▲イラスト:遠藤イヅル

 次回、始発駅の銚子駅を取り上げて最終回の予定です。

🔶レイル・マガジン2021年5月号(448号)新刊情報

 

 

 

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