シーナリー散歩 Scene:3-6 銚子電鉄仲ノ町駅（パールショップともえ仲ノ町）（前編）

取材日：’21.2.25
text & photo（特記以外）：羽山　健（RM）
同行取材：遠藤イヅル

　レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。発売中の2021年5月号で取り上げた銚子電鉄を、WEB編では外川駅から順に上り方向へと進み補完しております。今回は当鉄道の本社と車両基地・工場を併せ持つ中枢的存在、仲ノ町（なかのちょう）駅を見ていきます。

▲平日午前、のんびりした空気が流れる仲ノ町駅構内。左手に見える銀色のタンクはヤマサ醤油第一工場のものだ。

　ネーミングライツは千葉県香取郡多古町に本拠を置くパチンコ・パチスロ店運営の（株）カクタが取得しており、同社が運営するチェーン店の名称をずばり冠した「パールショップともえ仲ノ町」と愛称が付けられています。前回、「観音駅は路線中、唯一町中にある駅」だと記しましたが、より市の中心に近い当駅はそうじゃないのかと言えば、「町中ではなくて、工場の中にある駅」というのがふさわしいでしょう。なにしろ、線路の両側をヤマサ醤油の工場に挟まれた形になっており、民家や商店などは付近にほとんど無いのです。

▲駅本屋＋本社屋の建物。入口は左手にある。「パールショップともえ」の駅愛称の看板も確認できる。

▲入口上に最近掛けられた、格好の良い駅名看板。

▲古くからある正式な駅名看板。

　駅舎兼本社社屋は創業当時からの木造建築で、線路に並走する道路との間の狭い敷地に建てられており、当然駅前ロータリーのようなものは存在しません。建物の形状自体は規模の割に複雑で、一部は後年に増築されたようにも見えます。本社併設だけに終日有人駅で、出札口ではぬれ煎餅やグッズも販売中。

▲車庫を背中にして、洗車線を見る。左手の2000形2番編成は定期検査中。

▲取材当日検査中であった2000形2番編成は、3月に「ピンクニュージンジャー号」として出場し元気に活躍中。

　改札を抜けてホームに出ると、細長い敷地に車庫・工場が併設されているのを一望できます。通常であれば入場券を購入することでどなたでも車庫内の見学が可能なのですが、当日は2000形2番編成が検査入場中であったため、社員の方立ち合いにて取材をさせていただきました。

▲車籍は残しているデキ3。余生を楽しむ風情といったところか。

　また、銚子電鉄の象徴的存在と言える古典電気機関車デキ3も居ました！今も車籍は残していますが、保安機器の関係から本線上に出ることはもう不可能とされており、実際当日の状況としては集電装置が外されたままで、かつキャブのドアが下塗りっぽいグレー色（2016年に市川市の千葉県立現代産業科学館で展示された際の名残？）となっていました。

▲ある意味「今なお現役」な1000形1002番。取材中もコンプレッサーは作動していた。

　そしてこれと連結されていたのが、既に車籍はないはずの1000形（元営団地下鉄2000形）1002番で、現役末期に施された丸ノ内線カラーのまま、パンタを上げて時折コンプレッサーが作動していました。よく見ると屋上に人が乗れるような点検台が設置されており、後でお聞きしたところでは例の本銚子の「緑のトンネル」の伐採のため、深夜に線路閉鎖をして走らせているのだそうです。

▲2線分の幅がありながら1線式となっている車庫。

▲天井の木組みが見事。各種資材の多さも現役の庫ならでは。

　木造の車庫も見せてもらいました。こちら2線分の間口があるように見えますが、実際には1線のみであとは作業スペース。線路の部分にはピットが設けられており、門型のクレーンも設置されています。外から見るとスレート板で張り替えられていて少々味気なく感じますが、天井部分などは見事な木組みによるもので、古い建築を大切に使っていることが伝わります。この入庫線の手前には自動洗車機も設置されていました。