本文:RM 写真:鈴木重幸
取材日:2021年4月9日
取材協力:SMALL WORLDS TOKYO
現在好評公開中の映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。長年つづいてきたシリーズの完結編にあたる作品で、ストーリー展開にもアニメとしてのクオリティにも絶賛の声が上がっています。その劇中に登場する「第3村」という場所では、駅やターンテーブル、扇形機関庫が描かれ、走ってこそいないものの見慣れた実在の鉄道車両も登場しています。実はこの駅や機関区は天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅がモチーフで(周辺施設などは相当アレンジしてあるそうですが)、その正確な描写もレイル・ファンには注目したいポイントなのです。
▲ターンテーブルと扇形庫、周辺の詰所などの建物が細密に再現されたミニチュアセット。なお、劇中では扇形庫は診療所となっている。
その正確な描写に一役買ったのが、今回、有明の「SMALL WORLDS TOKYO」にて展示開始となった1:45スケールのミニチュアセット。そのサイズは約9×4mという巨大なもので、ストラクチャー類は主に木材のレーザーカットによって作られています。このミニチュアセットを基に劇中での最適なカメラアングルを探り、絵コンテやプリヴィズ(絵コンテに代わり簡単なCGで映像化すること)に進行したとのこと。臨場感や現実感を生む出すために、ここまでの手間を掛けていることに改めて驚かされます。
▲劇中では、宇部・小野田線などをイメージさせる西日本地区の車両が描かれている。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開中 総監督:庵野秀明 ©カラー
▲さすがにOスケール準拠のスケールだけに、ジオラマとして見ると大変巨大なもの。
モデラ―としての目線で観察すると、各ストラクチャーはほぼ無彩色で、木材の素材色のままの仕上げですが、窓・扉や羽目板などがレーザーカットでスジ彫りされています。また屋根などは部分的に極めてリアルなダメージ加工や彩色も施されており、作画上何らかの必要性があったのだろうと推測されました。敷き回されている線路は恐らくOゲージ用のフレキシブルレールで、配置されている車両は天浜線のディーゼルカーを模しているように見えますが、劇中ではこれは登場していません。とにかく、劇中シーンの背景となった建物類がそこここに立体として存在するのが、大変面白く感じるところです。
▲一部の建物はトタンのような質感がリアルに再現された屋根が付いている。
▲劇中の世界では、既に鉄道を走らせるエネルギーが失われており、駅ホームは生活空間となっているようだ。
▲主要キャラの心情に変化をもたらせるシーンが描かれた共同浴場「新生湯」と「記念湯」。貨車の荷台が湯舟で、車両は更衣室となっている。
そもそもエヴァシリーズの総監督である庵野秀明さんは各種メディアでのインタビューにてレイル・ファンでもあることを公言しており、鉄道をリアルに描くことに人一倍の熱意を持っていることが、このミニチュアセットからも窺えました。また、もともとSMALL WORLDS TOKYOでは1:80の「エヴァンゲリオン格納庫」や「エヴァンゲリオン 第3新東京市」といったミニチュア展示があり、今回の「第3村ミニチュアセット」の展示によって、エヴァファンにはより一層たまらない魅力的な空間になっていると言えましょう。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開中 総監督:庵野秀明 ©カラー
公開前日となる4月9日は、エヴァンゲリオンの版権管理を担う(株)グラウンドワークスの神村靖宏代表取締役、アニメ制作会社の(株)カラーの三好 寛事務局長、劇中で相田ケンスケ役の声優・岩永哲哉さんなどが列席してスピーチやフォトセッションが行われました。
▲写真右から、(株)カラーの三好 寛さん、(株)グラウンドワークスの神村靖宏さん、相田ケンスケ役の声優・岩永哲哉さん、SMALL WORLDS TOKYOの近藤正拡社長、司会を務めたエヴァインフォ公式レポーターの野呂陽菜さん。
■「第3村ミニチュアセット」展示期間
2021年4月10日(土)~9月8日(水)