製作:瀧口宜慎
photo:羽田 洋
住宅の軒をかすめながら、113系が江ノ電や熊本電鉄の沿線風景のような場所に入り込んでくる…。「こんなところが実在するの?」と思うかもしれませんが、これも実在する風景なのです。イメージしたのは横須賀線の終点・久里浜の奥にある引込線の末端部付近にある「八幡第2踏切」。今回はトミーテックの「鉄顔コレクション」を使ってこの不思議な情景を手元に再現してみました!
■横須賀線の末端部分、八幡第2踏切
横須賀線の終点である久里浜駅。線路はここで終わるかと思いきや、実はもう少しだけ先まで伸びています。その先にあるのがこの八幡第2踏切です。ですが、この線路は主に横須賀線の列車を留置線から本線に移動させるために使う引込線であるため、車両の入出庫がある早朝と深夜のみ使われます。1日の中でもごくわずかな列車しか往来しないため線路が草に覆われ、庭木の枝葉も柵を超えて入ってくるような場末感漂う雰囲気が特徴です。
■製作の実際
ベースには画材店で売っている木製の飾り台(上面サイズ150×130mm)を使い、踏切を中心に配置しています。この踏切は直前で折り返して運転する都合上、電車が通過することはまずないので、警報器も遮断器もない第4種踏切となっています。実際では車1台が通れるくらいの道幅ですが、やや広めにとってみたところ、かえって空間が間延びしてしまったようです。
線路は16.5mmのフレキシブルレールを必要な長さに切断して使っています。周辺の建物はすべてプラ素材からの自作としました。基本的には津川洋行のプラ製下見板をベースに、和風・洋風と作り分けています。1:80のスケールのストラクチャーはキットが揃っていますが、いずれも木造の建物が多く、絵になりづらい現代的な建物はほとんど見かけないのと、建物の一部のみ表現するので自作としました。
踏切も敷板の部分はt1.0の経木を加工したものです。警戒色のコンクリート柵は津川洋行のHOスケール踏切キットで、手持ちのパーツを流用しています。
コンクリート架線柱も津川洋行の単線コンクリート架線柱のビームをプラ棒に置き換えて加工。古枕木を転用している鉄道柵も同じく津川洋行製です。
草木はパウダーとフォーリッジを基本にしたのですが、踏切脇の葉が生い茂る樹木のみさかつうギャラリーで購入した植栽工房の「ミニチュア樹木模型 枝葉」を使い木を組んでみましたが、形の良い樹木にするには修業が必要そうで、ただの茂みにしか見えなくなってしまいました。
■LEDを仕込み夜景を楽しめるように!でも…?
他にも夜景が楽しめるよう、さかつうギャラリーの電球色チップLEDと電球笠月のセットを使用して、木造の建物と木製電柱の街灯に組み込んでみました。洋風の住宅と横須賀色に塗り替えた「鉄顔」にも手持ちの白色LEDを組み込んでみたのですが、写真撮影時に誤ってパワーパックの高電圧をそのままかけてしまい、一瞬にして壊してしまいました…。何分焦りは禁物ですね。不幸中の幸い、電球色のLEDは大丈夫だったので夜景撮影が何とかなったという次第です。
鉄顔シリーズを活用したミニジオラマ。是非あなたも手元に収まる情景を作ってみては…?
- 横須賀線の終点である久里浜駅のさらに奥、住宅街の中にその踏切は突然現れる。これが今回製作した八幡第2踏切だ。
- 情景を裏側から見る。ベースが「鉄顔」に対し大きかったため、後ろの線路がだいぶ余ってしまった。
- 終端側から見た全景。実際の踏切部分では、手前の建物はここまで線路に近接していないが、作例では適宜アレンジして配置している。
- 海辺を連想させるデザインアパートの一角。線路には枕木で組んだ簡易式の車止めを置いてあるが、本来の車止めは、さらに奥へ50mほど進んだところにある。
- 過度に作った木造の仕舞屋(しもたや)は過去に飲み屋の店舗だった設定。線路際にはセイタカアワダチソウが生える。これはミニネイチャーを使用。
- 踏切に繋がる道路はグレーのミューズイラストレーションボードを使用。通りがかる人はPLUM製フィギュア。
- 電球色のLEDひとつでムーディーな雰囲気が再現できるのが輝度の高いチップLEDの利点。すぐ脇に電車の顔がのぞくのはシュールだが、この場所での夜間留置はないので、実際はこのように消灯した状態の電車は見られない。
- すっかり夜の帳が降りた踏切に家路を急ぐ勤め人や学生の姿が…。そんなドラマがこの空間に盛り込めただろうか?