text & photo:芦原やちよ(特記以外)
185系が登場した1981年。鉄道車両への冷房装置が通勤電車などにも徐々に普及し始めてきた時代で、特急型である185系は当然全車冷房完備でした。ですがその形はどこか通勤型・近郊型然としていました。今回は185系に備わる冷房装置を観察して、その設計思想を振り返っていこうと思います。
■従来の特急型とは異なる冷房方式
▲185系0番代/200番代1次車で採用されたAU75C。ルーバーの数や形状は製造メーカーにより差異が見られる。
大宮総合車両センター東大宮センター(敷地外より撮影)
▲グリーン車の冷房装置は0/200番代共にAU71Cとなる。先のAU75Cとはファン開口部やキセ形状で違いがみられる。
大宮総合車両センター東大宮センター(敷地外より撮影)
185系以前の特急型では、分散式冷房と言われる複数の冷房装置を分散して屋根上に配置する方式が主流でした。ですが、この185系は先に登場した近郊型の117系と同様、集中式冷房という冷房装置を一つに集約した方式としました。当時、通勤・近郊型で主に採用されていた集中式ですが、この頃から特急型へも採用され始めていきました。
普通車の冷房装置自体は、特急型ながら容量の大きいAU75C(42,000kcal/h)を採用しました。また、グリーン車であるサロ185形は普通車のAU75C程ではないながらも、窓が開閉可能であることから以前よりも容量を増大させた新形式のAU71C(28,000kcal/h)が装備されました。
■冷房装置から見る185系「らしさ」
▲185系200番代の2次車からはAU75Cから省エネタイプのAU75Gに変更となった。外観上の違いはステンレス製のキセとなったことが主に挙げられる。
大宮総合車両センター東大宮センター(敷地外より撮影)
今でこそ主流となった集中式。この方式は冷房装置は一つだけなので、保守・メンテナンスの面で優れます。そして通勤・近郊型で広く採用されていた容量が大きいクーラーを搭載したところに、普通列車から特急列車までフレキシブルに運用することが想定されていた185系ならではの構造を窺い知ることができます。
ちなみに、185系200番代の2次車からはそれまでのAU75Cから省エネとなったAU75Gに変更されるといった違いも存在します。
■スッキリした屋根上
▲冷房装置を挟み込むように配置される箱が「新鮮外気導入装置」。これによりベンチレーターが廃され、屋根上がスッキリとした印象となった。
大宮総合車両センター東大宮センター(敷地外より撮影)
また、屋根上を見ると同時期の国鉄型車両と比べてスッキリして見えるかと思います。その理由は冷房装置の両隣に配置された箱に眠っています。この箱は「新鮮外気導入装置」と言われる強制的に換気を行う装置で、それまで長く使われてきた自然通風により換気を行うベンチレーターに取って代わる換気装置でした。
これにより、ベンチレーターを一斉に廃することができ、屋根上がスッキリとした印象になりました。この装置も117系と共通するポイントであり、兄弟車と称される所以が垣間見えるかと思います。
▲185系より一足早く登場した117系の屋根上。AU75系列の冷房装置と新鮮外気導入装置が装備された屋根上は、185系と酷似している。
’20.11.7 京都鉄道博物館 P:RM
このように、クーラーひとつとっても特徴がある185系。JR東日本最後の定期運用がある国鉄特急型となりましたが、「様々な運用が想定された折衷構造の国鉄型」という他にはない魅力あふれる車両でもあります。
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