text & photo:芦原やちよ(特記以外)
鉄道車両において、現在では使用していないながらも、過去に使われた装備や表記を残す車両は数多くあります。引退が近い185系も例外ではなく、その中でも一番目立つ部分がこの電車の電気的な回路を繋ぐジャンパ栓廻りでしょう。普段気にかけなければなんということもない部分ではありますが、ここにかつての急行型併結の名残が見えるのです。今回はこの185系のジャンパ栓撤去跡を迫ってみようと思います。
■暫定的だった急行型との併結運用
▲新製直後の185系200番代。前面右側裾部にジャンパ栓が3本並んでいるのが見て取れる。
’82.6 横須賀線 東逗子~田浦 P:はまかいじ
(185系思い出ギャラリーより)
185系が登場する以前、第一線で長らく活躍し続けた大量の153系や165系などの急行型電車。複雑な運用や、撤退した車両の留置場所などの問題からこれらを一気に置き換えることはあまり現実的ではありませんでした。そこで、当面の間は153系や165系と混結運用されることになりました。そのため185系の登場当時は、同車種で連結する時に使うKE96の他に、旧型である153・165系に対応したKE64ジャンパ栓が2組装備されることとなったのです。
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■ジャンパ栓のその後
▲現在の185系。ジャンパ栓を装備するのはクハ185形100/300番代である。
‘17.12.28 東海道本線 大磯~二宮
▲取付台座を観察する。現在はKE96×1本のみとなっている。台座をよく見るとこの個体にはKE64が装備されていた所に穴が存在する。
東海道本線 東京
もちろんこれらは最初から過渡期にのみ使用する前提であり、恒久的に使う装備ではありませんでした。正確な時期は不明ですが、KE64を装備した車両は少なくとも国鉄時代、急行型の置き換えが完了した前後には撤去されていったものと思われます。
KE64を撤去された車両ですが、台座にジャンパ栓納めの取り付け用と思われる穴が残されている個体もあり、当時の面影が色濃く残っております。
ちなみに、一部車両にはこの横長のジャンパ栓納め取付台座を持たない車両も存在します。このようなポイントを模型で作り分けるというのも面白いかもしれませんね。
▲185系の中でも0番代付属編成であるC6/C7編成の東京方先頭車クハ185-112/113には台座が存在しない。写真はクハ185-112。
東海道本線 東京
■短命に終わった急行型との併結
登場時からほんの僅かの間だけ併結していた185系と急行型。ですが急行型電車という存在が過去のものとなって久しいこの令和の時代に、このような形で当時へ想いを馳せてみるのはどうでしょうか。