185系

特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:1-7 御殿場線 裾野駅

2021.01.16

取材日:’20.10.27
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジン2021年1月号から新連載となった「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介して参ります。連載第1回のJR東海御殿場線のWEB編も7回目を数え、今回で最終回となります。前回の岩波駅から1駅下り方向へ進み、裾野駅を見ていきましょう。

▲一見ファンシーにも見えるが、開業以来の駅舎をリフォームして使用しているようだ。

 岩波~裾野の駅間距離は5.4kmで、これは連載第2回で触れた足柄~御殿場間の6.6kmに次ぐ御殿場線第2位の長さ。そして標高差は実に125m(岩波→裾野への下り勾配)で、平均勾配は約23‰。蒸気機関車時代は相当な難所だったと思われますが、今の電車は上り・下りとも軽快に走っていきます。

 

▲駅前広場が工事中であったが、この駅本屋自体は今後も安泰のようだった。

 この駅は今の御殿場線が開業した時(1889年)に設置された7駅のひとつで、開設当初の駅名は当時の地名から取られた佐野でした。その後、栃木県などに存在する他の佐野駅と紛らわしいという理由から、1915年に現在の裾野駅と改称。実はこの時点では裾野村とか裾野町とかそのような地名は存在しておらず、「富士山の裾野に位置するから」というのが命名の理由とされています。そして話は逆流し、佐野村→周辺の村と合併して小泉村は1952年にさらなる合併にて裾野町となりました(1971年に裾野市に)。この時の町名はまさに駅名に由来しており、全国的にも珍しい「駅名に由来する自治体名」となったのだそうです。

▲由緒正しい形態の木造跨線橋も現役。

 名実ともに街のシンボルと言うべきこの裾野駅。駅本屋は可愛らしい配色の寄棟屋根様式。入口の張り出し部には洋風のガラス張り部などがあり一見ファミリーレストランにも見えるほどですが、どうも明治時代の開業以来の建物を大切にリフォームして維持しているようです。すぐ横にまるでTOMIXの模型のような木造跨線橋も建っており、好ましいまとまりを見せています。

▲駅本屋裏手から、沼津方に新設されたエレベーター式跨線橋まで屋根付き通路が延びる。

 ホームは1面2線の島式ですが、かつては駅本屋に面してもう1線あったと思われ(御殿場線の古い駅はだいたいそう)、駅本屋裏手と上り線となる2番線との間にはちょうど1線分の余地が生じています。跨線橋とは反対側に、バリアフリーに対応したエレベーター式の跨線橋が新設されており、古い施設を大切に維持しながら現代の要請に応えている様子に感心しました。

 

▲1番線のホーム中ほどに階段の切り欠きがあり、遮断機を持つ構内踏切が設置されている。

▲ちょうど到着した沼津行の列車から、高校生を中心に思ったよりも多くの乗客が東口へ渡っていった。

▲西口の駅本屋とはまったく対照的な、プレハブ建築の東口駅舎。

 さて、この駅には小さな「裏口」があるのが大変に面白いと思います。正式には「東口」と呼ばれますが、ホーム1番線の中ほどに構内踏切があり、本屋から見て線路の反対側にあるプレハブ的な簡素な駅舎につながっているのです。構内踏切自体はここまでも複数駅で見てきましたが、いずれもホーム先端に位置しており、このようにホームの中ほどにいきなり階段が生じる様式はかなりユニーク。ちゃんと踏切遮断器があり安全には配慮されています。かなり利用者も多く、東口駅舎にも駅員は配置されているのです。

▲ホーム先端から沼津方を見る。ここからまだ下り勾配がつづく様子が分かる。

 さて、WEB編では駅ごとに7回に分けてご紹介してきた御殿場線。日没タイムアウトにて、ここで取材は終了となりました。1月21日発売のレイル・マガジン447号(2021年3月号)では、連載第2回として東武鉄道日光・鬼怒川線を取り上げています。WEB編も今回と同じように、週刊連載の形で誌面の補足をしてまいりますので、お楽しみに!

▲イラスト:遠藤イヅル

🔶レイル・マガジン2021年1月号(446号)新刊情報

  • このエントリーをはてなブックマークに追加