text & photo:水野宏史
愛知県の豊橋と長野県の辰野を結ぶ全長195.7kmのJR飯田線。その中でも豊橋~豊川間は、1987(明治30)年に当時の豊川鉄道によって開業された、飯田線では最初に開通した区間です。東海道本線との乗り継ぎ駅である豊橋から日本三大稲荷のひとつと呼ばれる豊川稲荷への参詣客を輸送することで賑わいました。
▲豊川鉄道から引き継がれた国鉄時代の豊川駅舎。鉄筋コンクリート3階建ての堂々たる駅舎だが、3階が閉鎖され少々寂しい雰囲気も感じられた。
’83.9.5
その豊川に1931(昭和6)年12月、多角経営を目指す当時の豊川鉄道の手で鉄筋三階建ての駅舎が新築されました。1階が駅舎、2階には豊川鉄道直営の全国特産物展示即売会場、3階が劇場となる当時としては意欲的な造りの駅ビルで、カーブを描く壁面など昭和初期らしいモダンさを感じさせる建物でした。
飯田線の国有化により店舗や劇場の営業は終了したものの、豊川稲荷参詣の玄関口として多くの人たちに親しまれてきました。
- JRになってからの豊川駅舎には、隣の名鉄豊川稲荷駅を意識した広告看板が目に付くようになった。 ’95.4.2
- 線路側から見た駅舎。手前が豊橋方で、下りホームである1番線に面している。2・3番線とは地下道で結ばれている。 ’95.4.9
- 2・3番線ホームから見た改札口付近の様子。柱表面がスクラッチタイルで覆われている。 ’95.4.2
- 待合室内部。天井高さが高く明かり窓が設けられている。 ’95.4.2
- 1番ホーム上屋を兼ねた部分。アーチをあしらった大胆なデザイン。 ’95.4.2
- 豊川駅に入線したDE10形牽引の「トロッコファミリー号」。越美南線で「清流ながら号」として使用されていた車両を用い、1987(昭和62)年より運転が開始された。 ’88.3.27
- 2・3番ホーム。主に3番線より発着する豊橋~豊川間の区間列車は1988(昭和63)年以降、119系100番代の単行で運転されることが多かった。 ’95.4.2
- 駅名標記がライトアップされた夜の豊川駅舎。 ’95.2.19
- JRになってからの豊川駅舎。 ’95.4.2
建設より60年以上にわたって使用された旧豊川駅舎も、建物本体の老朽化のほか、駅による市街の東西分断を解消させる目的から、1995(平成7)年6月10・11日のお別れイベントを最後に解体され、1997(平成9)年春に東西自由通路を持つ現在の橋上駅舎に生まれ変わりました。
新しい豊川駅舎。写真は新駅舎建設により初めて出口が開設された豊川駅東口側。
’95.4.2