製作:熊岡正之
photo:青柳 明

国鉄直流電気機関車の決定版と言っても過言ではないEF65。その中でも今なお現役の車両が多く活躍する1000番代は、登場から50年以上が経った現在でも様々な形態差、カラーバリエーションの豊富さなどから人気の車両だ。今回はKATOの16番スケールのEF65 1000番代をベースに9種類のバリエーションを加工した作例を紹介しようと思う。

■1111号機
国鉄時代の東京機関区ブルトレ牽引仕様を目標に仕上げたが、基本的には手スリや解放テコの金属化、屋上のクレーンフックの新設、エアホース、パンタグラフの交換とその他各種表記類の追加など、一部を除く他の機関車と共通の加工内で済ませている。車番のみくろま屋の機関車車番インレタ(マットシルバー)を使用してエッチングナンバーらしさを再現している。ナンバーは最後まで悩んだポイントだが、学生時代に乗車した「瀬戸」の牽引機の番号としている。ガイシには塩害対策でグリースが塗られた状態を表現するために埼京線のグリーンを吹き付けてアクセントとしている。

■1034号機
基本的に先ほどの車両と同様に共通加工内での範囲で仕上げている。この1034号機は、上越線岩本駅で停車中にじっくり観察した初めてのPF型で、特にスカート廻りを賑わす元ダメ管と釣り合い管にもホースが付き、かつそれらが交わるようにぶら下がっていた状態を再現している。PFは重連仕様で登場しながら、重連で活躍した列車は東北本線のコキ10000系などの牽引に限られ、その期間も短かったために、特に内側にある釣り合い管は早い時点でホースが撤去されていた。ナンバーは実車が切り抜き文字なので、立体感のあるTOMIX製の金属インレタを使用している。

■2119号機
2012年春以降のJR貨物のPF再現に不可欠な2000番代。国鉄色とした理由は稲沢で2119号機を見た時に前面青プレートがカッコよく見えたという理由から。列車無線アンテナは台座とアンテナが別パーツとなった1059号機用の分売パーツを使用することで、塗り分けの手間を省くことができた。窓押さえのHゴムはツヤあり黒(プラ用)をカラス口で入れてある。GPSアンテナはこの車両のみさいどらいんのロスト製を使用。ナンバーは1111号機同様、くろま屋の機関車車番インレタ(マットシルバー)だ。また、最近のJR貨物のPFは、元ダメ管と釣り合い管のコックが撤去されたものを多く見かけるようになり、それらを表現するためにエバーグリーンのプラ丸棒とプラ帯材で管に蓋をした状態を再現している。

■1059号機
KATOの製品を活用したこのモデル。特徴的な車体側面の巨大JRマークは美しく印刷されているが、さすがにルーバー部の凸凹には「かすれ」が見られたので、その部分はプラ用の白色で丁寧に色差しを行った上でウェザリングを施している。ちなみにKATO製PF後期型は、近年の製品では嵩上げされたランボード下部がシースルーとなり見た目の雰囲気がかなり良くなっているのがポイントだ。

■1019号機
今回紹介するPFの中では、一番手間のかかった車両の1019号機。これに仕上げるためにまずは車体をIPA(イソプロピルアルコール)溶液に半日から1日ほど浸して塗装を剥離させる。その後、歯ブラシで浮いた塗膜をこすり落とすが、今回は毛の硬い入れ歯用ブラシを使用したところ、かなり効率よく塗装を落とすことができた。1019号機は初期型とはいえ、前面のステップが幅広タイプでKATO製品とは異なるので、BONA FIDEの専用パーツを使用した。
さて、特徴的な車体の赤色は、ガイアカラーの名鉄スカーレットが無調色でKATOの1118号機とマッチしたため、迷わずこれを使用した。側面ロゴはサイドラインのインレタを使用。購入からずいぶん歳月が経過した状態での加工だったが、車体に直接転写でもうまく転写することができ、予備インレタも使うことはなかった。
列車無線アンテナは、やはり2ピース構造の1118号機の分売パーツを使用している。この車両にはウェザリング等を一切行わず、登場時の美しい姿として仕上げた。ナンバーはTOMIXの金属インレタを使用している。

■1118号機
製品をベースにはしているが、差別化するために晩年の姿、すなわち屋根上のクーラーと採光窓に白文字がない状態にすることにした。
クーラーはBONA FIDEのパーツで、扇風機カバーを撤去して取り付ける。今回の車両の中では唯一のJR東日本のものとなるので、車体側面と前面、そしてスカートや台車枠など比較的こまめに洗浄を行っているJR東日本の機関車の特徴を出すために、車体はピカピカとし、屋根上と床下でも車輪など奥まったところにあるもののみウェザリングを行っている。

■1009号機
今から15年以上も前にKATOから前期型が発売され、RM MODELS 92号(2003年4月号)掲載のために短期間で手掛けたもの。あえてヘッドライトにヒサシのない最初期ロットのPS22B付の異端児をJR貨物更新色(3色)で仕上げた盛りだくさんの1両だ。
幅広の車体前面下部のステップは、当時専用パーツが無く、天賞堂のED76を加工して取り付けている。ドアストッパーは最近になってエコーのロスト製のものを追加。パンタグラフは、まだTOMIX製がなかった(PS22を搭載した機関車が発売されていなかった)ので、フクシマのPS22Bを使用している。ナンバーは帯板の上にTOMIXの金属インレタを使用。製品そのものの塗装を剥がさず、段差を耐水ペーパーで仕上げる程度のことしか行っていないため、塗料はマッハの調合塗料(ラッカー)をそのまま吹き付けている。

■1032号機
こちらも1009号機同様に、発売直後の雑誌掲載のために加工したものだ。タイプは製品ズバリそのままだが、広島更新色として仕上げている。パンタグラフはKATOオリジナルのもので、下枠のヒンジ部の加工(切断・ハンダ付け)を行ない、見た目の向上を図りました。同じく、最近になってBONA FIDEのドアストッパーを追加している。

■1084号機
KATOのJR貨物2色更新色がベースとなっているこのモデル。バリエーションを増やすために、こちらは屋上に常磐無線アンテナの準備工事が施工された1084号機とした。無線アンテナの丸い台座そのものは、TOMIX分売パーツあるEF81用常磐無線アンテナセットのもの。配管はΦ0.3の真鍮線とエコーの細密パイプ(外径0.5・内径0.3)と割ピンを使用して作り込んでいる。上から見ることの多い鉄道模型では、とてもよく目立つポイントのひとつだ。全検出場直後の美しい姿の再現を目指したが、屋上の一部などの再塗装されないところのみウェザリングを施している。
以上、9両のバリエーションを紹介したが、プラ製で比較的リーズナブルに入手できる製品が存在するからこそできる楽しみと言えるだろう。皆さんも是非、最初の1両に取り組んでみてはいかがだろうか。
以下、ギャラリー画像にて主な加工点を画像と共に紹介したのでそちらも参考にしていただきたい。
- PF後期型が牽引する「カートレイン」。九州カートレインは国鉄時代の1985年に登場。九州ブルトレを牽引する東京機関区のEF65 1000番代後期型が、汐留~下関間を牽引した。続く20系はKATO製で、一部の車両の幕板の帯を消して20系晩年の姿を表現した。
- 東京機関区で九州ブルトレ牽引で活躍していた頃の姿を再現。パンタグラフはTOMIXのPS22Bに交換。上昇ストッパーを細工し、なるべく高く上がるようにした。ガイシはグリーンで塗装。
- 1034号機(左・前期型)と1111号機(右・後期型)。いずれもKATO製品のままの姿で再現できるモデルで、手スリ類や解放テコの金属化、エアホースの交換、屋上フックの新設などを行っている。ワイパーは製品のままだが銀色に塗装。
- 1034号機の登場時の姿。スカート廻りにはブレーキ管や元ダメ管、釣り合い管の5本のホースがぶら下がり、特に後者の2本ずつはホースが交わるように掛けられていたのが印象的であった。
- 2012年春より現れた2000番代。機関車の機能面で旅客会社の機関車と区別するために与えられた番代だが、モデルでは更新色ではなく国鉄色の2119号機とした。スノープラウを装着しているが、実車は装備していなかった。
- 国鉄色に意外と似合う青のプレートが特徴的な2119号機。元ダメ管と釣り合い管のコックが撤去されたところは、プラ丸棒とプラ帯材で管に蓋をした状態を再現している。
- 国鉄からJR貨物へ移行した年に、イメージアップのために塗装変更を行った1059号機。僚友の1065号機をはじめ、他機種のJR貨物試験塗装機が検査時に一般色へ塗り替えられていく中で、2009年春に解体されるまでこの塗装を維持した。
- KATOからラインナップされた1059号機は迷わず購入。エアーフィルター部など印刷で表現されたJRマークが欠けてしまっていた所は、白でタッチアップを行った。
- 1019号機の真っ赤な塗装は国鉄最末期の1987年、JR移行直前に登場した。モデルはATS-P取付前のテールライトカバーが原型の内はめ式となる1990年春以前の姿とした。銀色に塗られたモニターの放熱通風機が目立つ。
- 全塗装となった1019号機は、IPA(イソプロピルアルコール)で一旦すべての塗装を剥離した。パンタグラフ取付中央部の大穴を埋めているのがわかる。初期型特有となる広幅の前面ステップはBONA FIDE製のパーツを使用。
- 側面に輝くEF65の文字はさいどらいんのインレタを使用。購入から時間が経っていたが、問題なく転写することができた。
- 1118号機はHゴムが黒で側面の明かり窓から白文字部分が消えた現在の姿を模型化。KATOのそのものズバリの製品がベースだが、側面エアーフィルター部でEF65の文字がうまく印刷されていない部分に白のタッチアップを施している。
- レインボー塗色機が2両となったため、モデルでは敢えて1118号機(左)は晩年の姿、1019号機(右)は登場時の姿として差別化を図った。
- パンタグラフはTOMIXのPS22B、クーラーはBONA FIDEのものを使用している。
- 2002年の年末、KATOからPF(前期型)が発売されてすぐに改造に取り掛かった車両である。貨物更新色にすると同時に、ヘッドライトのヒサシ撤去や前面ステップの幅広化などを行っている。
- こちらも発売と同時に手掛けた車両で、製品の仕様のまま広島更新色に塗り替えたもの。運転席窓下の赤いJRFマークはデカールで自作した。
- パンタグラフはKATOのものをベースに下枠の一部を切断してハンダ付け加工をすることでプロポーションを良くしている。
- 長年待ち望まれていたKATOのJR貨物更新色をベースに常磐無線アンテナ取付準備車の1084号機としたもの。全検出場間もない頃の姿としているが、全検で再塗装が省略された部分の汚れが残る様子を再現した。
- 直流機の屋根上はあっさりしているが、ウェザリングに強弱を与えることで単調になるのを防いでいる。
- 常磐無線アンテナは、台座そのものをTOMIXのEF81用分売パーツを使用。配管は真鍮線と極細パイプを組み合わせ、割ピンで固定したもの。
- 今回紹介したEF65 1000番代全車が集合!時代設定はバラバラであるが、これが模型の醍醐味とも言えるだろう。これだけ揃えてもまだチャレンジできそうな題材は数多い。
この記事は「国鉄名機の記録 EF65 1000番代」の一部を抜粋しています。細密模型加工記事の他、実車のEF65 1000番代の歴史や形態差、詳細なディテールなどを写真を交えて解説!さらにEF65 1000番代全139両の履歴も掲載!PFファン垂涎の一冊となっています。




























