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特集・コラム

話題の3D出力で作る!西武新型特急001系ラビュー

2020.12.27

製作・製作途中写真:永井幸輝
photo:羽田 洋

 2019(平成31)年春、運行を開始した西武鉄道の新型特急である001系ラビュー。前面の独特なフォルムと巨大な窓の新鮮さで一躍脚光を浴びたこの車両を、3D-CADソフトとDMM.makeの3Dプリントサービスを利用していち早く製作したのがこの模型である。今回も3Dプリントを中心とした西武001系ラビューの製作過程をご紹介しようと思う。

■設計から3D出力で模型を製作

 3Dで設計から模型を製作すべく、「DesignSpark Mechanical 4.0(以下DSM)」というフリーの3D-CADソフトで設計を行う。それをDMM.makeの3Dプリントサービスで出力を行い組み立てていくという手順だ。すべて3Dで出力すると費用が高くついてしまうので、使えるパーツは製品から流用。そのおかげもあり、細密感のある模型に仕上がった。

■複雑な3次元曲面を3Dで設計する!

 DSMでは平面の設計図を押し出すようなイメージで立体にしていく。車体の断面図を描き、その断面を押し出して立体化。そこに窓などの造形を別の面から押し出していくのが基本の流れ。
 ここで苦慮したのがラビュー特有の前頭部の曲面だ。車体に対して垂直方向に曲面の断面図を描き、この中心を軸にプルして半球に近い形を作る。
 そしてあらかじめ描いておいた車体パーツと「ブレンド」というツールを使って結合する。これは2つのオブジェクトを自動で結合してくれる便利なツールである。これによって前面から車体にかけてのRの緩やかな変化を自然に再現できた。
 同様に断面図→プル→微調整という流れを繰り返し、各パーツを仕上げる。しかし、3D出力は車体そのままの形では綺麗にできないため、一旦車体を分割してプラモデルのような「板キット」状にする。これをDMMに入稿すればひとまず3Dデータは完成となる。

 

■研磨、箱組、板キットとはひと手間違う3D模型

 発注後、時期にもよるが10日程で出力品が送られて来る。キット状に出力しているので、これを箱型に組み立てる。ちなみに、この材質はアクリルのためプラ用接着剤ではなく瞬間接着剤を使用する。
 市販のキットと大きく違うのは出力時に発生する積層痕の除去と反りの直しだ。積層痕は性質上どうしても出てしまうものなので、これを1000番~2000番の紙ヤスリで研いでいく。この時他のディテールを削り落とさないように十分注意したい。一方の反りは熱湯につけて少しずつ直していく。こうしてやっと板キット同様に箱状に組み上げることができる。
 その後は組み立てた際にできた継ぎ目を消す作業となる。今回は積層の関係で乗務員扉と運転席の間にパーツの境目が発生した。そのため曲面を崩さないよう、慎重にひたすら磨く作業を行った。

■風景に溶け込む銀色を徹底再現!

 車体の下地にはまずサーフェイサーEVOホワイトを吹いた。この白い下地を室内色にも活かす。そして車体内側をマスキングしてまずは屋根をグレーに。これには隠し味としてツヤ消し添加剤を混ぜ粗目に吹くことでざらついた屋根を演出している。そして主役の銀色は塗膜が弱いため最後に塗装。銀色はガイアのブライトシルバーを使用。スカートだけはツヤ消しにすることで、車体とのメリハリをつけている。
 前面ガラスは適度な透明感と遮光性が欲しかったのでスモークグレーに少量のツヤ消しブラックを調合。ライト部分は事前に円柱状に彫り込むことで明るい色になるようにした。さらに窓枠をツヤ消しブラックで色差ししてやることで引き締まった印象に。また床下表記や連結器、手すりなどに適宜色を差し立体感を演出した。

■パーツと車内再現で細密感アップ!

 ゴツゴツしていた昔の通勤電車などに比べて、最新の車両はシンプルなデザインでディテールには欠ける。そこで小物パーツの存在が非常に重要になってくる。
 今回、前面ガラスにはボナファイデの東京メトロ16000系用のワイパーを曲面に合わせて曲げて付けている。さらに、妻面が寂しかったためにKATOの通勤型汎用幌を付けた。そしてディテールアップとは少し違う工夫だがスカートの中を黒く塗ることで内部のスカスカ感がなくなるようにしている。
 足回りはGMの完成品用をチョイス。GM床板の下半分にプラ材を敷きフラットに。そこにE653系の座席パーツをひとつひとつ接着して外から見ても高さが違和感ないように調整した。ガラスはt0.2のプラ板を切り出し内張りに、ガラス周りだけ車体の肉厚を薄くしたので比較的見栄えはよくなった。
 床下機器はGMの完成品用から近似のパーツを並べ替えて配置。MBUスクロールコンプレッサーを銀色に塗装することで床下のアクセントにしている。台車はGMの西武30000系のものを流用。今回は完全な再現よりも安定した雰囲気を優先したため既製品を使うことにした。

■おわりに

 前面の曲面がなかなか納得いく形にならず、そこだけで2週間近く苦闘をしたが、その分愛着の沸く模型が完成した。
 完成品が出そろった昨今、わざわざ模型を作る楽しみというのはなかなか見いだせないかもしれない。しかし、3Dプリンタの普及や技術の進歩によって、実は模型製作の可能性はより高まっているように感じた。

 この記事は「西武鉄道完全ガイド」の一部を抜粋しています。最新001系「ラビュー」から往年の通勤車、地方譲渡車までを徹底解説!さらには細密なNゲージ加工記事も掲載し盛りだくさんの内容となっています。

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