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特集・コラム

西武の紅矢、富山へ~西武鉄道10000系甲種輸送~

2020.10.24

取材日:’20.10.11~10.12
text&photo(特記以外):奥村匠海

 2020年10月11日から12日にかけて、西武鉄道10000系「ニューレッドアロー(NRA)」が西武鉄道小手指車両基地~あいの風とやま鉄道魚津間で甲種輸送され、大きな話題を集めた。今回は、その甲種の様子をレポートしていく。

■新秋津~高崎(操)

 西武鉄道からの受け渡しは新秋津にて行われ、JR貨物の牽引による甲種輸送は、新秋津発となる。
 新秋津からは武蔵野線・高崎線経由で高崎(操)までJR貨物高崎機関区所属のEH200-13が牽引機を担当した。

▲富山へ向けて出発した西武10000系「ニューレッドアロー」。

’20.10.11 武蔵野線 新秋津
P:堀 裕一(神奈川県)鉄道投稿情報局投稿写真より

▲高崎(操)へ向けて高崎線を北上する甲種輸送列車。

’20.10.11 高崎線 上尾~北上尾間
P:山口八郎(埼玉県)鉄道投稿情報局より

■高崎(操)にて

 高崎(操)では夕方の到着から深夜に機関車交換行うまでの間、長時間に渡り留置されていたため付近には多くのレイル・ファンがこの一大イベントを一目見ようと足を運んでいた。

▲普段離合することのない車両に横をすり抜けられる。

▲夕暮れの操車場に灯が灯り始めた。

 この後、甲種輸送列車は高崎(操)で深夜に機関車交換を行い、上越線経由で南長岡(貨)へ輸送された。そこで2回目の機関車交換をおこない、交直両用機関車EF510にバトンタッチした後、日本海沿いを西へと走っていった。

■紅い雷に牽かれて

 あいの風とやま鉄道魚津駅、ここはかつて北陸本線の中規模駅であったこともあり、特急列車が発着していたころの名残として、現在も長いホームのところどころに表示が残っている。

▲旧北陸本線時代の駅名板がホーム端に残る。

 14時51分、曇り空の魚津駅に西武10000系「ニューレッドアロー」の甲種輸送列車が到着した。牽引機は、JR貨物富山機関区所属EF510-18だ。さらに、EF510の愛称は「レッドサンダー」となっている。

▲小手指車両基地から約400㎞の旅もいよいよラストスパート。

▲最後尾には反射板が取りつけられている。

▲魚津市は蜃気楼で有名な街だ。機会があればぜひ見てみたい。

■特定の編成を短縮した訳ではない!?

 今回の甲種輸送の大きな特徴としては、西武10000系の特定の編成を単純に4両に短縮したうえで輸送した訳ではないということがあげられる。今回の編成としては以下の通りだ。

←南長岡 10106+10206+10606+10102+牽引機 魚津→

まず、10106、10206、10606については同じ編成ではあるが、魚津方の先頭車10102については本来、10106と同様に1号車であったが、方向転換したうえで今回の甲種輸送に組み込まれている。今回、あえて先頭車を組み替えて輸送された理由が気になるところである。

▲南長岡方に連結された先頭車「10106」。

▲南長岡方から2両目に連結された「10206」。

▲南長岡方から3両目に連結された「10606」。

▲魚津方に連結された先頭車「10102」。
本来、新秋津方の先頭車「10106」と同じ向きを向いていたが…。

■ついに引き渡しへ!

 到着から1時間余り魚津駅2番線に停車した後、ホイッスルと共に甲種輸送列車は動き出した。列車は一度上り本線(富山方面)を富山方に進み、本線上の渡り線で折り返したうえで、推進運転で下り本線(泊方面)へと入っていった。

▲上り本線へ侵入する甲種輸送列車。

 下り本線を泊方面まで進み、次は魚津駅構内の留置線に入れるため魚津駅4番線へ入っていく。
 なお、魚津駅の留置線は架線が一部張られていないため、富山地方鉄道の構内入換機が留置線内の移動を担当する。

▲富山地方鉄道の構内入換機「DL-4」

 受け渡しのため、あいの風とやま鉄道4番線の架線が張られている限界地点までEF510が推進運転で西武1000系を押し込んでいき、留置線側から進んでくる構内入換機が受け取り作業を行う。

▲富山地方鉄道の構内入換機が西武10000系を受け取りに行く。

▲富山地方鉄道側への受け渡しが完了。留置線へと手信号で導かれる。

▲受け取り作業終了後はEF510は魚津駅4番線へと入る。

■まさかの新旧コラボが実現!

 西武10000系の先代となる、初代「レッドアロー」西武5000系は車体が富山地方鉄道に譲渡され、現在も16010形として定期運用に就いている。なんと、その初代「レッドアロー」と「ニューレッドアロー」が留置線を挟んで並ぶという非常に運命的な展開が新魚津駅にて見られた。

▲かつての西武の看板列車が新旧で並ぶ熱い展開が見られた。

▲初代「レッドアロー」と「ニューレッドアロー」で先頭部の意匠が似ていることがわかる。

▲最後に富山地方鉄道新魚津駅構内の架線が張られている留置線へと移動して、一連の作業は終了となった。この日の深夜に電車牽引によって富山地方鉄道稲荷町テクニカルセンターへと回送された。

 地元メディアでは、この日の翌日に今回の輸送は譲渡に伴う回送と報じられているが、その詳細は分かっていない。今後、どのように活用されるのか注目される。

▲稲荷町テクニカルセンターにて分割された西武10000系。

’20.10.18 富山地方鉄道 稲荷町テクニカルセンター(公道より撮影)
P:宮島昌之(今日の一枚投稿写真より)

 

 

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