JR東日本のEV-E301に続きJR九州も福岡近郊の非電化路線で蓄電池車の導入を計画し、2012年に817系改造の蓄電池車の試運転を行った。その後、2016年に筑豊本線でBEC819系がデビューした。
▲JR九州BEC819系0番代”DENCHA“ 世界初の交流蓄電池電車として実用化。0番代7編成は若松線・福北ゆたか線で運用しており、817系との連結運用も存在する。’18.6.25 筑豊本線 若松~藤ノ木 P:松沼武士
基本的なシステムの構成はJR東日本と同等であるが、九州の電化区間が交流20,000Vであることと、バッテリー電圧が1,600Vに向上したことが大きな特徴である。架線電源が交流であることから、充電時の電流量は直流に比べて小さく済み、架線のダメージも少なくなった。このためパンタグラフの強化は行ったものの、架線の強化を行う必要がなくなった点が大きな特徴となっている。また、蓄電池電圧が1,600Vとなったため、従来の制御機器類がそのまま使用できるようになった。このように、交流区間用蓄電池車の方が、電力消費量が多い蓄電池車にとってはメリットが大きいと言えよう。
また、BEC819系の仕組みにJR東日本も着目し、同システムを基本的にそのまま採用したEV -E801系を男鹿線に投入した。
▲EV-E801系蓄電池電車 蓄電池、パンタグラフ、主変圧器、電力変換装置を搭載。車体カラーはなまはげをイメージした赤と青で塗装。’18.8.18 奥羽本線 秋田 P:松沼武士
ただ、これら蓄電池電車の走行距離は、非電化区間がいずれもせいぜい20〜30km程度の区間にとどまっている。これは、異常時における一定の長時間停車、バッテリーの事故によるトラブルに配慮したものとなっている。また、いずれも平坦線を中心としており、現在の技術では東北地方や中国地方に多数存在する長距離・山間部の非電化路線に対してはまだ対応できる見込みが立っていない。
しかし、キハ40など車両の更新時期や電車との整備共通化など整備面でのメリットを鑑みると、非電化区間という分野は今後の技術開発の拡大が見込まれる分野であると言えるだろう。非電化区間の進化はまだ止まらない。(蓄電池電車 終)
本文:児玉光雄 要約・再構成:RM レイル・マガジン433号より
第1回から第17回まで通じて、非電化区間の最新技術が少しでもお分かりいただけましたでしょうか?
全7章17回に渡った「非電化区間の最新システム」は今回で完結となります。お読みいただきありがとうございました。ぜひ、次の企画にご期待ください!
(非電化区間の最新システム 完)