text:鉄道ホビダス編集部
▲長野県千曲市「万葉超音波温泉」にて保存される115系はなんと機器類や冷房装置などが動く状態で保存されている。
P:佐々木 龍
役目を終えた鉄道車両たちは、最後には車籍を抜かれ、廃車となります。ほとんどの車両はその後解体される運命になりますが、一部には保存される車両も。ですが保存といっても、一概に博物館に行くというわけではありません。ここでは鉄道車両が保存されている各地のスポットを5つご紹介します。
■商業施設に保存された豪華寝台列車「夢空間」
JR東日本が、次世代の豪華寝台列車のあり方を模索するべく1989年に3両が製造された24系「夢空間」。現役当時はジョイフルトレインの「スーパーエクスプレスレインボー」や、「北斗星」などに併結して運用されていましたが、2008年をもって運行を終了しました。
その後、3両はそれぞれ保存されることになりましたが、そのうちオハフ25 901「ラウンジカー」と、オシ25 901「ダイニングカー」の2両は埼玉県三郷市にあり、JR新三郷駅に隣接する「ららぽーと新三郷」に保存されています。
また、もう1両のオロネ25 901「デラックススリーパー」は東京都江東区の飲食店で保存されています。
■公園に佇む貴重な17m級国電の生き残り
東北本線(宇都宮線)小金井駅から徒歩8分ほどの場所にある「日酸(にっさん)公園」。ここには貴重な昭和初期生まれの17m級国電「クモエ21001」が保存されています。元々は1927(昭和2)年に製造された車両で、晩年は「クモハ11106」として仙石線で活躍していた車両です。
聞き慣れない「クモエ」の「エ」という記号ですが、これは「救援車」という意味。この救援車というのは、鉄道事故や災害などが発生した際に迅速に復旧するための車両で、「エ」はこの救援車に割り振られた記号。もちろん一般営業はせず、緊急事態以外は動くことが基本的にないまさに縁の下の力持ち的な車両ですが、幸運なことに今に至るまで綺麗に保存・展示されています。
■京都鉄道博物館の前!路面電車を楽しめる公園
JR西日本や関西圏で活躍した車両を中心に保存・展示する「京都鉄道博物館」。かつての梅小路蒸気機関車館も館内に収め、その知名度は言うまでもありませんが、この京都鉄道博物館入口の前にある「すざくゆめ広場・市電ひろば」も訪れた際にはチェックしておきたい施設です。
こちらにはその名の通り、京都市電で活躍した車両たちが保存・展示されています。総勢8両もの貴重な京都市電たちが保存されており、そのうち「N電」とも言われるN27号がリチウムイオン電池駆動で動態保存されているのも見どころの一つです。
■終焉の地で保存される「赤胴車」
阪神電車伝統のカラーリングであった上部をクリーム色、下部をバーミリオンで塗り分けた通称「赤胴車」。この名前自体は当時人気だったマンガキャラクターである「赤胴鈴之助」にちなんで付けられた愛称でした。長らくこのカラーリングが阪神電車の優等車を象徴するものでしたが、平成になると新塗装が普及。徐々に姿を消していきました。最後に残ったのは武庫川線の2両編成4本で、2020年度内に営業運転を終了し、そのうちの1両(7890形7890号)がUR武庫川団地内のコミュニティスペースで保存・展示されることとなりました。
長年地元で愛された車両が、その終焉の地で保存されるというのも運命を感じます。車内は集会所としても使用できるようになっており、まさに「第二の人生」を歩みだしたと言えるでしょう。
■温泉施設で保存される115系は今も「生きている」
日本各地の直流電化区間、そして山岳路線で活躍した国鉄近郊型電車の115系は、現在でも数を減らしつつも活躍を続ける車両です。そのうち、JR東日本ではすでに全車が引退しました。そのJR東日本に所属した車両で、新製配置は小山電車区、その後新前橋や松本と渡り歩き、晩年は長野総合車両センター所属となった「クハ115-1106」は、今もなお長野県千曲市にある「万葉超音波温泉」駐車場にて「生きた」状態で保存されています。
というのも、この車両は以前の保存場所であるブランシュたかやまスキーリゾートから移設されたのち、徹底した修繕を実施。実物同様の「全般検査」をイメージして修繕工事を行ない、冷房装置はオーバーホールがなされ稼働できる状態に。電気系統やエアー類も動作し、ある種の「動態保存」となっています。
当時を知る人からしたらまさに感涙ものの保存状態ということで、ぜひ温泉に訪れた際には見学しておきたいところです。なお、現在毎週土日祝日の13:00〜18:00では車内公開を実施中で、ゴールデンウィーク中は4/27・28・29・5/3・4・5・6で公開するとのこと。有料(小学生以下無料)でドアの開け閉めや、機器類の操作体験もできるので、訪れた際はぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
博物館のみならず、各地に保存・展示されている鉄道車両たち。このゴールデンウィークは現役時代に思いを馳せながら、保存車に会いに行ってみるのもまた良いですね。