text:鉄道ホビダス編集部
▲東武鉄道のフラッグシップトレイン「スペーシアX」。その愛称の由来とは…?
P:RM
各大手私鉄で運行されている特急列車。いずれの車両も形、内装、塗装といずれも個性豊かで、鉄道に普段興味を持たない方であっても、魅力的に見えることが多いのではないでしょうか。そんな私鉄特急車両には、多くの場合それぞれ固有の愛称が存在します。今回はそんな私鉄特急の名前の由来について調べてみます。
■東武鉄道「スペーシア」
1990年に登場した100系電車に与えられた愛称が「スペーシア」です。この「スペーシア」は、列車名にも付けられ、今日に至るまで「スペーシアきぬ」「スペーシアけごん」などとして運転されています。
この「スペーシア」という名称は一般公募によって選ばれた名前で、その審査委員長は作曲・作詞家の小林亜星氏が招かれていました。こうした経緯で選ばれた「スペーシア」の意味は、英語で空間や宇宙を意味する「SPACE」に、「IA」を付け加えて固有名詞にしたもの、と当時の公式パンフレットに記されています。実際に100系はその名前の通りコンパートメントやゆったりした座席など、空間というものに重点を置いています。
この空間を重要視しているという点については後継車N100系「スペーシアX」にも受け継がれているといえ、「コンパートメント」をはじめ、展望が楽しめる個室「コックピットスイート」や、気軽なプライペート感を演出する「ボックスシート」など、単なる移動に留まらない、特別感ある車内空間を実現しています。
ちなみに、「スペーシアX」におけるXにも意味があり、「スペーシアX」による旅体験(Experience)や、乗客に提供する様々な価値を表す「X」、Excellent、Extra、Exciting、Extreme、Exceedといったほか、文化や人々が交わり(cross = 「X」)縁をつくる存在であること、未知なる(X)可能性を秘めた存在であること…などが込められています。また車体の窓にも鹿沼組子をイメージした「X」のデザインが取り入れられています。
■西武鉄道「ラビュー」
シルバーの塗装を身に纏い、丸みを帯びた先頭形状は一度見たら忘れられないインパクトがある西武001系「Laview(ラビュー)」。この愛称にはそれぞれの文字に意味が込められており、「L」に贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間、「a」に矢(arrow)のような速達性、「view」に大きな窓から移りゆく眺望(view) とされています。見事に車両の特徴を表しているのみならず、長年親しまれた「レッドアロー」の愛称の一部である「arrow」を意味に取り入れたのは、5000系や10000系に対する西武鉄道のリスペクトが感じられます。
■南海電鉄「ラピート」
デビューから今年で30周年を迎えるとはいまだに信じられないほど、ロボットアニメのような車体デザインのインパクトが大きい南海50000系「ラピート」。1994年の関西国際空港開港に伴って、空港アクセス列車としてデビューした車両ですが、日本人のみならず、海外からの乗客にも大きな印象を与えています。こちらの名称由来は「速い」を意味するドイツ語から。こちらも「スペーシア」同様に一般公募の中から選ばれた愛称になります。
ちなみにラピートのロゴは「rapid」とした場合英語読みの「ラピッド」と読まれてしまうことを避けるためか、発音記号で記すという珍しい手法が取られているのも特徴。関西空港へ南海電鉄でお越しの際はぜひロゴ廻りもチェックしてみてくださいね。
■近畿日本鉄道「ひのとり」
カタカナ語とはうってかわって、近年は愛称に平仮名の日本語名を採用することが多い近鉄。そんな近鉄特急の中でも花形の一つ、名古屋と大阪を結ぶ「名阪特急」で使用されるのが80000系「ひのとり」です。東海道新幹線と競合する名阪特急では料金面や快適性などをセールスポイントとしており、80000系は従来の21000系「アーバンライナー」に代わる特急車として、さらなる上質なサービスを提供しています。
この「ひのとり」という名称には、先進的でスピード感あふれる車体形状と、深みと艶感があるメタリックレッドの車体色に加えて、ゆったりとした空間に上質なサービスを提供するという「気品ある車両」のイメージを、大きく翼を広げて飛ぶ「ひのとり」になぞらえて命名した…とされています。実際に車体ロゴも大きく翼を広げた火の鳥をデザインしたものとなっており、この車両へのイメージが表れています。
私鉄各社で様々な名称がある特急型車両。特急車はフラッグシップ車両となる場合も多く、その車両愛称は会社の象徴としてどのようなイメージが与えられているのかが一目でわかる指標にもなっていると言えるのではないでしょうか。