text:鉄道ホビダス編集部
▲8両編成となった現在の500系が離合する。塗装は登場当時のままだ。
’23.10.24 山陽新幹線 徳山 P:谷口武揚
(今日の一枚より)
1997年3月ダイヤ改正で「のぞみ」用車両としてデビューしたJR西日本の500系新幹線。「のぞみ」運用から山陽新幹線の「こだま」運用への変化により、編成両数の短縮、最高速度が300km/hから285km/hへの変更などありましたが、今もなおJR西日本を代表する人気車両のひとつです。そんな500系に大きな変化が訪れようとしています。
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■新幹線300km/h時代の到来を告げた500系
1992年に登場した高速試験車500系900番代「WIN350」で得られたデータを基に、1996年に量産先行車が製造された500系新幹線電車。WIN350はその名の通り、350km/h運転の可能性を探るために開発された車両でしたが、営業用の500系では最高速度300km/hとしました。とはいえ、300km/hという数字はデビュー当時フランスのTGVと並んで世界最速の列車として名を馳せることとなります。
その魅力はスピードだけではなく、300km/hを実現するために採用された翼型の集電装置(パンタグラフ)や、断面積を小さくするために円筒形状とした車体、そしてトンネル微気圧波(トンネルドン)の軽減を目的とした15mにもなるロングノーズという機能美あふれるフォルムは、レイル・ファンだけではなく、一般旅客にまで大きなインパクトを与えました。このデザインは、ドイツの工業デザイナーであるアレクサンダー・ノイマイスターによるもので、他にもドイツの高速鉄道「ICE」や東京メトロ10000系、福岡市交通局3000系なども手掛けているデザイナーです。
90年代末の最新技術を数多く盛り込み、高速性能を極限まで高めた500系でしたが、その独特の構造が500系の運命を決めることになります。
■短編成化による「こだま」転用
2007年に後継車であるN700系が登場し、500系は「のぞみ」運用から徐々に撤退。先述の通り500系は高速性能を高めた反面、車体断面が円筒状なため荷棚が狭くなってしまったほか、座席配置が他の車両と異なっていたり、先頭車の運転台寄りには乗車口がなかったことなど、運用上の制約が多かったことが「のぞみ」としての活躍期間を短くしてしまった要因として挙げられます。
とはいえ全廃となったわけではなく、量産先行車のW1編成を除く8本が16両編成から8両編成に短縮され、山陽新幹線区間の「こだま」運用に転じました。16両編成時代とは翼型集電装置がシングルアームパンタグラフに、またパンタカバーの形状も変更され、最高速度も285km/hに抑えられましたが、塗装は16両時代のままとされ、基本的なイメージはそのままです。なお量産先行車はそのまま廃車となり、博多方先頭車521-1が京都鉄道博物館へ、東京方先頭車の522-1日立製作所笠戸事業所で保存されています。
■「こだま」でもヒーローであり続ける
編成は半分になっても、16両の「のぞみ」時代のままの塗装で活躍を続けた500系。2012年には500系をモチーフとした山陽新幹線公式キャラクター「カンセンジャー」のモチーフに抜擢されたほか、2014年には「プラレールカー」、2015年からはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とコラボした「500 TYPE EVA」、2018にはサンリオのキャラクター『ハローキティ』とコラボした「ハローキティ新幹線」など、登場から年数が経っていながらラッピングや企画ではひっぱりだこの状態です。この車両は、後にも先にもない独特なフォルムや、JR西日本が唯一単独開発した車両という孤高さが、一種の「ヒーロー性」を生み出しており、子どもから大人まで、その人気は衰えることを知りません。
現在先輩格の100系や300系はもとより、後輩の700系(レールスター用7000番代を除く)も引退し、N700系ですら初期車の廃車が進行しています。そんな中で気がつけば500系が日本の新幹線で最古参の車両となり、その動向は常に注目されていました。
2024年2月14日、JR西日本はN700系の8両編成化と、それによる500系の置き換え計画を発表しました。この発表では、現在6本いる500系のうち、4本を2024年度から2026年度にかけて置き換えるとしており、少なくとも2026年度内には残り2本となります。
N700系やN700S、そしてE5・E6・E8系と、300km/hを超える新幹線電車は今や当たり前になりましたが、その嚆矢となった500系も、いよいよ終焉の時が近づいているようです。