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紆余曲折の歴史 上越新幹線の「とき」 実は一度名前が消えた?

2024.01.27

text:鉄道ホビダス編集部

 

長岡駅に停車するE2系J66編成(200系カラー)使用の「とき335号 」。

‘22.7.23 上越新幹線 長岡 P:宮島昌之
(鉄道投稿情報局より)

 上越新幹線の現在の列車愛称といえば東京・長岡・越後湯沢と新潟を結ぶ「とき」と、東京・高崎から越後湯沢までを結ぶ「たにがわ」で、すっかり定着していますが、実は現在の形に落ち着くまでは紆余曲折があったのです。

【写真】上越新幹線歴代車両の写真はこちら!

■開業時は速達タイプ「あさひ」各駅停車タイプ「とき」

 1982年11月、東北新幹線の開業から遅れること約4ヶ月、晴れて上越新幹線も開業になりました。この際に制定された列車愛称が速達、いわば東海道新幹線における「ひかり」タイプが「あさひ」に。各駅停車の「こだま」タイプが「とき」になりました。「とき」と言えば、在来線時代は上野から新潟までを結び、上越線を走る特急の中では花形的存在でした。そんな「とき」が各駅停車タイプの名前になるというのは、やはり在来線から新幹線の時代への世代交代を感じざるを得ません。

■運転区間別に名称変更 「とき」消滅

 国鉄が分割民営化してからちょうど10年が経った1997年、上越新幹線の愛称が整理されることになります。この時、速達か各駅停車かで決められていた列車愛称を、運転区間別にすることとなり、東京をはじめとする駅から新潟駅までを結ぶ列車はすべて「あさひ」になり、越後湯沢までの列車はすべて「たにがわ」になりました。この際、長年親しまれた列車名である「とき」は消滅してしまうことになります。

■「とき」復活の影には北陸新幹線「あさま」の存在

 そんな列車名整理が行われた1997年、東京から長野まで北陸新幹線が部分開業します。当時は北陸新幹線とはいえ北陸といえる地域までに達していなかったことから「長野新幹線」の案内の方がよく見かけましたが、この時に制定された愛称が「あさま」。開業の直前まで碓氷峠を越えて、上野から長野・直江津を結んでいた特急列車の名称が引き継がれた形になりました。

 さてそうなると1文字違いで文字数も一緒の「あさひ」とどうも間違えやすいという問題が発生。実際に誤乗が頻繁に起こった…というのは今もなお語り草です。また、丁度特別天然記念物であるトキが中国から贈られ、その人口繁殖が成功し話題となっていた頃というのもあってか、2002年12月に「あさひ」を置き換える形で列車名「とき」が復活することとなりました。
 実際、2002年12月ダイヤ改正当時のJR東日本のプレスリリースでは「わかりやすく親しみやすい『とき』に改称します。」とあり、列車名として区別しやすいだけではなく、鳥のトキを由来にした名前がいかに親しまれていたかが窺い知れます。また、2002年といえば上越新幹線の開業からちょうど20年が経ったメモリアルイヤーでもあり、復活するべき年に復活した…とも言えます。

 思えば、上越新幹線の開業時は各駅停車タイプで、速達タイプの「あさひ」の影に隠れる存在であった「とき」。ですが、紆余曲折があったとはいえ、現在では上越新幹線を代表する列車名に使われるようになり、名実ともに在来線時代を彷彿とさせる花形列車に返り咲いたと言えるのではないでしょうか。

●懐かしむ対象となった「あさひ」

 さて、一方の「あさひ」ですが、廃止から20年以上が経過し、すでに懐かしむ対象となりつつあります。現在に至るまで節目の時期には度々復活運転が行なわれており、2012年には200系による上越新幹線の大宮開業25周年記念による「あさひ」復活のほか、2022年にも上越新幹線開業40周年を記念しE2系の200系カラー編成による「なつかしのあさひ」号が運転されています。
 消えた列車名ではありますが、こうして今もリバイバルという形で我々の前に現れてくれるのは嬉しいものです。

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