’20.12.14 東海道本線 早川~根府川 P:篠原 敦
(鉄道投稿情報局より)
いよいよ2024年1月末から3月にかけて、四国での運転が開始される伊豆急2100系「THE ROYAL EXPRESS」を使用したクルーズトレイン。現在本番に向けた試運転や各調整が入念に行なわれていますが、そもそもこの伊豆急2100系という電車は、登場当時は現在と似ても似つかない姿をしていました。
【写真】歴代「リゾート21」 懐かしのオリジナルカラーを纏った2100系の写真も!
■2100系自体は1985年登場
伊豆急2100系という車両自体は、1985年7月にデビューしました。その背景として、マイカー移動などの交通手段の多様化に伴い、伊豆急行や伊豆半島全体の活性化を目論んだものがありました。そして何よりの売りだったのはやはり両先頭車に設けられた展望室でしょう。映画館のように座席が配置され、高い視点から伊豆急行線の海が一望できる車窓を楽しめるようになっています。また、展望室以外の座席も海側にシートが向けられるなどの工夫が凝らされました。そして車両は「非対称性」を基本とし、車体色や窓の形状、車内のレイアウトも非対称で設計されています。左右対称なのが当たり前だった従来の鉄道車両において、これは非常に斬新なものとして受け入れられました。
このように豪華な設備から、一見すると特急型電車のように見える2100系ですが、基本的に伊豆急線内では普通列車の運用に就き、特別料金なしでこの車両を楽しむことができるのもまたポイント。1988年からは私鉄車としては初となる東海道本線の東京駅へ乗り入れたほか、特急「リゾート踊り子」としての運用が始まり一層話題を呼びました。
■1993年「アルファリゾート21」デビュー
そんな2100系は改良を加えつつ増備され、1990年に登場した4本目となる4次車は「リゾート21EX」として落成。この編成からトンネル内で星空や宇宙、海底を表現したイルミネーションを楽しむことができた「ロイヤルボックス」という車両も連結。のちにこの車両はその他の2100系にも普及しました。
そして1993年、基本コンセプトは継承しつつも外装・内装ともに大きく変わった2100系5次車「アルファリゾート21」がデビュー。外観は直線的だった「リゾート21」から一変、丸みを帯びたものに変更。車内も間接照明やハイルーフ構造を採用して、よりゆとりある空間の演出がなされました。なお性能面は4次車と同等とされ、東京駅への乗り入れにも対応していました。この「アルファリゾート21」こそが、のちの「THE ROYAL EXPRESS」となります。
■仕様変更や塗装変更を経て「THE ROYAL EXPRESS」に
登場後しばらくは変化のなかった「アルファリゾート21」でしたが、2007年には前面にLED式の表示器が設置され、顔立ちに変化が見られました。また、2012年には当時放映されていたアニメ「夏色キセキ」のラッピングがなされ話題となったほか、2016年には「リゾート21」30周年を記念して、白基調で山側に青色のライン、海側には赤色のラインが入ったカラーリングに変更されました。この塗装は期間限定とされていましたが、直後に水戸岡鋭治氏による観光列車「THE ROYAL EXPRESS」への改造が発表。そのまま現在に至ります。
「THE ROYAL EXPRESS」では徹底した改装がなされ、ロイヤルブルーにゴールドの帯やロゴを配した外観に、木材をふんだんに使用した豪華な内装が特徴的です。客室クラスはゴールドクラス・プラチナクラスと分けられておりいずれもドレスコードがあるほか、6号車には厨房が設けられ、車内では様々な料理が振る舞われるなど、その姿は完全に「豪華列車」として生まれ変わりました。
通常では横浜から伊豆急下田間での運行となりますが、2020年からは北海道での運行が開始され、その豪華列車としてのポテンシャルを存分に発揮。この北海道への出張運転は以降も毎年夏の時期に運行されるようになり、その人気が窺えます。
そしてこの度、この出張運転は四国でも行なわれることとなります。先日「THE ROYAL EXPRESS」が四国へ甲種輸送され、現在1月末の運行開始に向けて試運転が繰り返されています。このクルーズは岡山から琴平、多度津、松山、今治などを経て高松に至る行程を全4日間で巡ります。
伊豆の活性化を目的に作られた2100系が、現在こうして各地を行脚し、巡り巡って「鉄道」そのものの活性化につながる試みに使われるようになったのには、感慨深いものを感じます。「アルファリゾート21」改め「THE ROYAL EXPRESS」が示した鉄道の道筋は、今後どのように発展を遂げるのか、今後も注目したいところです。