text & photo:鉄道ホビダス編集部
中央本線の三鷹駅から御茶ノ水駅を経由し、総武本線の千葉駅まで至る黄色い電車でお馴染みの「中央・総武線」。基本的に高架線区間が多い路線ですが、1箇所だけ今も踏切が残っているのをご存知でしょうか。それが今回紹介する「花立(はなだて)踏切」です。
■京成線と共用する踏切
この花立踏切は、総武本線の幕張本郷〜幕張間に設けられています。ここを通過する路線は総武本線の他に、京成電鉄の千葉線も並走しています。京成側の踏切名称は「京成幕張本郷第1号踏切道」という別の名称が付けられており、警報器の列車進行方向指示器もJR側と京成側の両方が取り付けられ、どっちの列車が来るかは一目瞭然です。また、京成千葉線は新京成線が乗り入れてくるため、ピンク色の新京成電鉄車両もここで見ることができます。
なお、この踏切は幅員が狭いため、歩行者と二輪車以外の通行は不可能な踏切になっています。
■渡ると少し長めの連絡通路 一体なぜ?
この花立踏切を渡ると、数十メートルほどの連絡通路を通ることになります。隣接する幕張車両センターの高架線をくぐりしばらく進むと、もう一つの踏切「第二花立踏切」を渡ることになります。これは総武快速線の下り線のみを渡る踏切。これを通ることで線路を横断することができます。
踏切同士が少し離れた場所に位置する不思議な構造となった理由として、この踏切の立体交差化工事が関係しています。以前、この花立踏切は自動車も通行可能な踏切でしたが、立体交差化工事開始に伴い踏切を移設。この際に現在の迂回するような位置に変わり、同時に自動車の通行が不可能になった…という経緯があります。
その名残として、旧来の踏切があった箇所には路盤の一部と思しきものが残っているほか、幕張車両センターの高架下をくぐっていた箇所は明らかに真新しいコンクリート壁で塞がれています。
■開かずの踏切 今後は?
この踏切は先述の通り、京成線とJR線の両方が通っていますが、いずれも列車本数が多く、警報が鳴り止んだと思ったらすぐにまた鳴り出すことも頻繁にある上、列車の通過するタイミングが重なると数分開かないことも。また、通る路線が多いということは、渡る距離が長いとも言え、歩行者が渡っている最中に警報が鳴り出してしまう事例も見られました。こうした理由から、踏切から約400メートル離れた位置にある地下道への誘導看板が設けられているほどです。
ですが、ここの立体交差化工事は建設費の増大などを理由に長らく中断されており、完成の見通しは立っていません。その代わりに、踏切最寄りの跨線橋へのエレベーター設置計画があり、将来的にはこの跨線橋を使っての線路横断となるようです。このエレベーターの整備が完了すると、現状歩行者と二輪車以外は通行不可な上、開かずの踏切状態になることも多い花立踏切は廃止・撤去される可能性もあるでしょう。
黄色い総武線電車と踏切という、ここでしか見ることのができない光景も、近く解消されることになるのでしょうか。今後の動向が注目されます。