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特集・コラム

鶴見線の「夜」を満喫…! 【第1回】小麦粉ローリーが行き交う大川駅界隈

2023.07.22

text & photo:RM
取材日:’23.7.15 取材協力:日本旅行

 最近、工場夜景を楽しむことに脚光が当たっていますね。かつては公害の象徴とも見られた工場の煙突や蒸留塔などが、環境性能の向上と共にそのメカニカルな形態や幻想的なライティング(もちろん現場では美観のためにライトアップしているのではないのですが)の魅力に気づく方が増えたのだと思います。

 その工場夜景のメッカのひとつが川崎市の臨海工業地帯。そしてそこを走るのが大都会のローカル線とも呼ばれる鶴見線。今回、日本旅行が主催した「貸切列車で行く夜の鶴見線探訪 港湾・工場夜景の旅」のツアーに同行取材させていただいたので、その模様をお伝えしましょう。

 鶴見線は路線全長こそわずか9.7kmですが、鶴見を起点に扇町までの本線に加え、海芝浦支線、大川支線と3つの運転系統があり、路線ごと、駅ごとのユニークさでも知られます。このツアーでは貸切列車で支線も含めた鶴見線全線の乗車を楽しむというのも趣向の一つ。ご存じの通り鶴見線は列車本数があまり多くはなく、このように効率的に乗りつぶしが出来る機会というのは非常に貴重です。

▲鶴見駅の路線案内図を借用し、今回のツアー行程を色線で追記したもの。

最初はレアキャラならぬレア支線の大川へ
 さて、ツアーの出発は起点の鶴見駅。同駅の鶴見線高架ホームは、かつて同線が「鶴見臨港鉄道」という私鉄だったことを思わせるような独立した高架ホームで、ドーム屋根が印象的です。つい最近までこのホーム専用の改札口がありましたが今は撤去されています。

▲向かって左が定期列車の浜川崎行き。乗車するツアー列車は右のT11編成。

 入線してきたのは205系T11編成、種別表示器には「団体 PARTY」と表示。鶴見線に団臨が乗り入れることは滅多になく、この種別表示だけでもレア感が醸し出されていました。3両編成でロングシートに適度な間隔を空けて着席。定員は約100名とのことで1両あたり30数名が乗車しています。

▲鶴見線では…というより205系では見ることも稀な「団体」表示。

 時刻は17:05、電車は発車しました。最初の目的地は大川支線の終点・大川。土休日は1日3本しか列車が無く、踏破する難易度が高い支線です。かつてクモハ12が発車待ちしていた武蔵白石駅のカーブしたホームは撤去されて久しく痕跡もほぼ残っていませんが、急カーブであることは車内からも実感できます。

▲かつて大川駅の隣の駅は武蔵白石駅でしたが、今はホームがないため隣駅はひとつ先の安善駅となります。

▲鶴見駅の木造の小さな駅舎。ホームと同じ幅の奥行しかありません。

 大川駅に限らず鶴見線の3つの終点駅はすべて棒線ホーム1本の構造ですが、大川駅の簡素さは一際で、木造で奥行のない建屋が極めてユニーク。かつては貨物側線が複数ありましたが今ここに乗り入れる貨物列車はありません。線路の延長上には日清製粉の鶴見工場があり、古くは小麦粉専用のホキ2200形が多数たむろしていたものですが…。

▲踏切から大川駅ホームを見たところ。電車の奥に日清製粉の工場が見えます。

▲工場の名前が入った踏切も珍しいですが、今はもうその会社はここにはいないというのも…。

▲クリーム色のキャブに銀色のタンクというローリー車がひっきりなしに通ります。これは小麦粉専用車。

 ここでの見もののひとつが、駅から50mほど安善駅寄りにある「日本ガラス踏切」。かつてこの周囲にあった工場の名に由来するその名前自体が個性的。そしてひっきりなしに往来するタンクローリーの積荷は…やっぱり小麦粉なのでした。

▲夕食として提供されたおむすび弁当。

ツアーは一度鶴見へ戻ります
 まだ明るいうちですが、列車は一度鶴見に戻ります。そう、3つの終点へ行くためにはその都度一度鶴見に戻る必要があるのです。鶴見駅での約40分の休憩に早めの夕食。このお弁当は地元の仕出し屋さんによるおむすび弁当で、これは徳川八代将軍・吉宗の時代の言い伝えに基づくのだとか。このツアー、つくづく川崎への愛が感じられます。

その2へつづく(後日アップ予定)

 

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