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特集・コラム

変わる下町小岩駅 新旧混在する駅前再開発は鉄道模型ネタ的には宝箱!?

2023.02.26

text & photo(特記以外):上石知足(鉄道ホビダス編集部)

 近年、全国各地で都市再開発が活発に行なわれています。特に都市部の駅前再開発に目を向けると、区画整理を伴う都市計画のもと、街並みが一変するほどの大規模な再開発が多く行なわれている印象があります。そんな再開発工事ですが、開始直後だと旧来からの街並みと、新しく建てられた商業ビルやタワーマンションが混在する風景を観察することができます。今回は工事が現在進行形で進んでいるJR総武線小岩駅を訪問し、鉄道模型で駅前を再現することを念頭に置いて、その景色を考察してみます。

■まずは図を描いてどういう駅前かを知る

 複雑に商店や道が入り組む都市部の駅前ですので、まずは模型として駅前に建物や道路を配置するための参考として、さらに一旦現在の駅前構造を整理する意味も込めて、上から見た図を描いてみます。
 今回は小岩駅でも中心部となる南口ロータリーを観察してみました。見てわかるように、「サンロード」「昭和通り」「フラワーロード」と大きく3本の商店街があります。このうち「サンロード」と「フラワーロード」はバスも通行する交通の要ですが、「サンロード」は歩道も含め非常に狭い通りで、再開発の折に拡幅される予定となっています。またこれら商店街には古き良き商店が多く立ち並んでおり、店先には地元の人々で非常に活気付いています。

 ロータリーの中心には地下型のタクシープールがあり、ここに次々とタクシーたちが出入りする様を観察するのは楽しい反面、鉄道模型でこれを再現するとなると、地下の表現方法も含めてフロアレイアウトなどですぐに再現するとなると難易度は少し高そうです。

 そして図の右側(方角的には西側)には、再開発によって新しく建てられた商業ビルとタワーマンションがそびえており、新たな小岩駅前の象徴として存在感を放っています。

 再開発とはいえ事業は始まったばかり。現在は新築されたビルと従前の商店が混在するという状況で、まさに過渡期と言えます。鉄道模型的にはどちらも楽しめる(実際に見比べて考察もできる)という何とも美味しい状態。ここからは従来の街並みと新しいビル、それぞれの特徴を探っていきたいと思います。

■古い建物も「看板」ひとつで様変わり!

 南口はやはり小岩駅のメイン口ということもあり、タクシーのりばやバス停のほか、多くの店舗が立ち並んでいますが、そのいずれもが古い建物です。そんな建物たちの中には近年これでもかというほどカラフルな看板が設置され、ある意味現代らしい街並みとなっています。もちろん元来の姿に近いであろう建物も点在しており、再開発前の建物の中でも「新旧」を感じることができます。
 また看板以外にも、外装をリノベーションしたことで昔ながらの商店のイメージとは大きく異なった外観を持つ建物もあり、昔ながらの建物をどう現代風にアレンジするかの非常に良い実例があちこちに並んでいます。

 鉄道模型においても、設計の古い昔ながらのストラクチャー製品にアレンジを加えることによって、現代風の街並み再現の一助になることでしょう。

■対照的なモノトーン 今どきの駅前再開発ビル

 こちらは南口西側にある再開発によって建てられたばかりの商業ビルとタワーマンション群。先のカラフルな看板が所狭しと並ぶ従来からの建物とは一転して、モノトーンな印象があるガラス張りのシックなビルとなっています。また、それまでの商店と比べて倍近い高さがあるため駅前から非常に目立っており、ここだけ完全に別の雰囲気を感じます。もちろんこの建物だけで終わりというわけではなく、小岩駅前は南北出口ともにこれから大規模な工事が始まる予定となっており、今はまだ序章といったところ。そんな中で、「再開発前の建物」と「再開発で生まれた建物」を同時に観察でき。その差をリアルに見比べられるのは、鉄道模型における街並みを研究する上で大変に好都合と言えます。ぜひ景観が完全に変わってしまう前に押さえておきたいポイントです。

■Nゲージで実際に駅前を楽しめるアイテムって?

(写真:羽田 洋)

 ここまでは実例を踏まえて駅前を観察してきましたが、Nゲージ製品でも駅前を再現するのに適したストラクチャーは数多く製品化されています。特に近年では実景にもあったような、既製品の金型を活用しつつも現代風に外装をアレンジした「リノベーション仕様」の製品が発売されたり、ビル製品がモノトーン調となり再販されたりと、模型の方でも度々アップデートが繰り返されています。

 また建物だけではなく、看板やポスト、自販機に電話ボックスなどといった小物類が揃ったアクセサリーセットなども出ており、こういった細かいところを充実させることでより本物のような駅前情景を作ることができそうです。

 これらの製品を配置するのに加え、実景を参考に建物へ自作の看板を付けてみたり、今回の例のような「再開発途上」といった設定を街並みに加えることで、さらに自分だけのオリジナリティー溢れる駅前にすることができるでしょう。

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 駅前はその街の玄関であり、他の交通手段と接続する要衝でもあります。そういう意味から駅前に目を転じると、その街にどんな人々が住んで、どのような産業や街の役割があるのか、駅前はその多くを物語っていると言えます。
 鉄道模型の情景を作るうえでも、駅はレイアウトやジオラマのランドマークとなる大切な要素です。駅前のその先にある街は一体どのような規模なのか、駅前ロータリーに並ぶバスやタクシー、周囲のビルや商店の規模・配置によって印象付けることができます。
 今回の特集ではそんな「駅前」にスポットを当て、情景で駅前を表現するために必要な基本的要素から、リアルな駅前・街づくりに役立つ実例や作例を交えて、鉄道情景的視点で駅前の魅力を学んでいきましょう。
 特集冒頭は空鉄写真家でおなじみ吉永陽一さんによる、全国各地の駅前空撮写真から、さまざまな駅前の風景をご覧に入れます。

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