text & photo：RM
取材日：’22.3.25 場所：新村車両所および新島々駅
取材協力：アルピコ交通
アルピコ交通では、鉄道上高地線（元松本電気鉄道上高地線）に23年ぶりに投入する新型車両20100形2両1編成をデビューさせました。
▲来賓を乗せた臨時列車が新島々駅を発車！
当線では元京王3000系の譲渡を受けた3000形2連4本で車両統一されていましたが、老朽化および運行コスト削減、バリアフリー対応化などのため車両の置き換えを企図。東武鉄道で引退となった元日比谷線乗り入れ用20000系（20000型・20050型）の譲渡を受け、自社仕様への改造を京王重機整備に発注しました。京王重機は現行の3000形の改造も担った事業者でもあります。また、東武20000系は軌間の合う関東私鉄ではもはや希少な18m級3扉車であり、現行の3000形と同規模の車体を持つということも、選ばれた理由かと思われます。
▲写真先頭はモハ20101、後方がクハ20102。クハにダブルパンタを搭載し、モハに霜取り用パンタを装備、つまり編成に3つもパンタを装備していることになる。
●車体外観
譲渡されたのは共に元中間車で、1号車となるモハ20101（松本側）が旧20050型、2号車となるクハ20102（新島々側）が旧20000型。両車共に運転台部分を新設しており、ガラス面積が大きくてシンプルかつ機能的な非貫通前面となっています。当然かもしれませんが、種車となった東武20000系とは特に類似性のない形状となりました。
▲直線的で都会的なデザインに、リゾート地らしいカラフルなアクセントが効いている。
前述の通り、1号車の種車は編成の一部に5扉車を連結した20050型ですが、譲渡されたのは編成中間に入っていた3扉車で、そういう点では2号車の種車となった20000型と同じ。ただし微細な設計変更が加わっており、例えば客扉の高さが少しだけ1号車（＝20050型）の方が高くなっています。この違いは後述の車内の様式にも影響しています。
▲「ALPICO」の巨大ロゴがデザイン化されている。機能的なピクトグラムや帯板部の「ワンマン」表示、車外スピーカーなどにも注目。
外装デザインは、3000形や同社のバスでおなじみのダイナミックストライプと上高地線のロゴにより、アルピコ交通の鉄道線であることをアピール。側面は爽やかなアルピコブルーの帯と大きなALPICOロゴを配し、シンプルかつスタイリッシュなデザインとなっています。
▲グリーンのシートモケット、天井から吊り下がる液晶案内表示器などが特徴。
●車内
車内は種車と同様のオールロングシートですが、シートのモケットなどは張り替えられています。緑色のモケットは、北アルプスと豊かな田園をイメージしたもの。座席には一人ずつのスペースに凹凸がつけられ、着席定員通りに座ってもらえるようになっています。前述の種車の違いにより、荷棚（1号車がパイプで2号車が網）、天井のダクト形状なども違っています。
▲左が1号車、右が2号車の車内。荷棚の様式、天井ダクト形状、客扉高さなどが異なる。
ワンマン運行のため、前後の運転台直後に料金箱、中間扉付近に整理券発行機、天井から数ヶ所に液晶式車内案内表示器を設置。また、車端部寄りに優先席と車いすスペースも設置されています。車内には防犯カメラと非常通報装置、プラズマクラスターイオン発生装置も設置され、安全や快適さにも十分配慮したものとなっています。
▲液晶案内表示器。
▲運転台直後の料金箱。
●走行機器類
同社では初のVVVF制御方式で、回生・発電ブレーキ付きとなります。その制御装置やSIV補助電源装置は新品が調達され、消費電力削減を実現しました。運転台は3000形にも通じるT字型ワンハンドルマスコンを採用しています。
▲モハ20101に搭載される東洋電機製のVVVFインバータ制御装置。
▲クハ20102に搭載される、同じく東洋電機製のSIV補助電源装置。
▲モハ20101が履くSS133台車。クハ20102はSS107台車を履く。
▲T字型ワンハンドルマスコン式の運転台。
●出発セレモニー
新島々駅での出発式では、花束贈呈、バイオリン生演奏、テープカットなどの後、来賓を乗せた臨時列車が11:40に出発。渚で折り返して1往復後、新島々駅13:27発より定期営業運転に就きました。同車は今後、1年度に1編成ずつ導入して、最終的には4編成（3000形と同本数）が揃う予定となっています。
▲花束贈呈のシーン。
▲アルピコ交通の新たな時代を切り開く20100形。
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