第1回で述べた、ディーゼルエンジンの課題3点についての2点目の論点が、環境性能の向上である。実は日本には鉄道車輌に対する環境規制・基準はない。しかし、環境性能の向上は燃費等の運用効率の向上にもつながることから、各メーカーは積極的に取り組んでいる。
2000年代後半から普及したシステムがコモンレール燃料噴射システムで、これは直噴式エンジンのシリンダーに燃料を送り込む際、共通(Common)の燃料噴射管(Rail)を用いて、高圧の燃料を噴射するもの。JR四国1500形などに採用された。
▲コマツSA6D140HE-2形(DMF15HZ形) コモンレール式燃料噴射装置を採用して有害排出物の低減を図ったクリーンディーゼルエンジン。定格出力450psでJR九州キハ220形200番代やJR四国1500形を皮切りJR東日本(DMF15HZ)、JR西日本で採用された。’19.1.23 多度津工場 P:松沼 猛
▲JR四国1500形 JR四国が1000形に続く一般型気動車として2006年から徳島地区に投入し、国鉄型を置き換えた。SA6D140HE-2形は1000形に搭載するSA6D125H形よりも窒素酸化物(NOx)の排出量を60%削減可能だという。 ‘16.3.31 土讃線 阿波池田 P:寺尾武士
■液体式気動車のエネルギー効率の向上
3つ目の論点であるエネルギー効率の向上は、運転性能、環境性能向上の両輪で実現された。直結段の運転領域を拡大すると、出力は無駄なく駆動軸に伝わる。また、機関の小型化、電車で培われた軽量ステンレス車体の採用など車体の軽量化が進み、エネルギー効率は向上してきた。また、JR各社は発足後に在来車の機関の換装を積極的に進めた。これは、効率性の他に排気管の過熱・出火の可能性など、安全面での改善のためでもある。
コスト面では、国鉄末期~分割民営化直後、バス部品の採用が目立った。特に空調装置は、路線バス車両で採用された機関直結型冷房が、エンジンの高出力化によって単行気動車に装備された。旧来は、1台で走行動力と冷房動力を得ることは難しかったが、近年は冷房用コンプレッサを直接接続し、1両単位で空調が可能となっている。なお、室内用電源を多く消費する特急型車両の場合も走行用エンジンに接続されることが一般的となり、回転力を一定の圧力に制御してタービンを回転させて発電する方法や、発電機側の回転数を一定に保つ装置などが採用された。
このように、国鉄時代にはエネルギー効率の悪さが指摘されてきた液体気動車であるが、様々な技術により飛躍的な進歩を遂げてきたのである。
本文:児玉光雄 要約・再構成:RM レイル・マガジン433号より