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国内で今なおSLを製造できるただひとつのメーカー、その技術が継承されたドラマ!

2022.12.27

 日本における蒸気機関車の実用上の歴史は、国鉄線上においては1976年3月の入換用9600形の引退によって終了、その後も一部の私鉄・専用線では部分的に用いられていましたが、1980年代初頭には終了しています。

 ではそれらの蒸気機関車はいつ頃製造されたものだったのでしょうか? 前述の9600形などは大正時代生まれで非常に長生きをした機関車でしたが、例えば国鉄で最後に新製した蒸気機関車は1948年のE10形5両で、メーカーは汽車会社でした。専用線用の蒸機は小規模なメーカーにより1950年代半ばころまで新製がつづきましたが、その頃をもって実用的な蒸気機関車の新製技術は各社で途絶えてしまったのです。

 

▲協三工業の社屋。(プレスリリースより)

 福島県の協三工業はまさにその専用線用の蒸気機関車などを製造するメーカーの1社で、現在はエンジン駆動式のモーターカーやクレーン車などを製造して盛業中ですが、各地のテーマパークなどからの発注を受けて「本物」の蒸気機関車を今なお製造することができる国内唯一のメーカーと言われています。例えば日本で最も有名なテーマパークのアメリカ型蒸気機関車も同社が製造したものです。その新製も1991年を最後に一旦途切れていたのですが、東日本震災後の2011年12月、栃木県の那珂川清流鉄道保存会より、「6トンSLを造ってくれないか?」という依頼を受けます。

福島県伊達市の「やながわ希望の森公園」で走る「さくら1号」も協三工業製。(プレスリリースより)

 受注するかどうかを社内で話し合ったのですが、当時SL製造に関わっていた人達は皆退職しており、消極的な意見が多かったようです。しかし加藤社長は「今SLを造らなければ、SL技術が途絶えてしまう!」という思いの元、当時若手のエースだった金子さんに打診。「社長、おれやっち!(やりたい!)」という金子さんの意気込みもあり、丸1年に及ぶSL製造がスタートしたそうです。

協三工業の元技術者 工藤義章さん。(プレスリリースより)

 まずは退職した職員に助っ人を依頼。超ハイレベル技術者たちが7人集結し、その中でも中心的人物が当時81才の工藤義章(よしあき)さん。最初は普通の81才のおじいちゃん、という感じだったのに、1ヶ月経つころには生き生きしだして、背筋はビシッと伸びて、目がらんらんとしてきたとか。工藤さんがいなければSLは完成してなかったそうです。

SL担当の金子晃徳さん。(プレスリリースより)

 この時SL製造に協力してくれた元職員はこの10年で次々と亡くなってしまいました。2011年が本当に最後のチャンスで、その時に実行していなければあらゆる技術が受け継がれずに失われていたとのこと。もちろん、次世代への技術継承として、「とにかくデータで全部残す」を実践し、先人たちの頭の中に入っていた作業は片っ端から書面や写真で残しファイリング。失敗したところも写真と動画で残し、大切に保存しているそうです。つまり、発注さえあれば、いつでもまた新たな蒸気機関車を製造することは可能。さらに次の世代に技術を継承していくために…。

ふるさと納税の返礼品として1/10スケールの大型模型を製作!

協三工業本社事務棟のエントランスに飾られている10分の1スケールのSL模型。返礼品は受注生産となります。(プレスリリースより)

 同社が製作する6トン蒸気機関車の1/10スケールという大型ディスプレイモデルが、福島市へのふるさと納税返礼品として設定されています。このモデルは外側の車体部分は実際のSLと同じ製造方法で造られており、運転席内の細かいパーツは3Dプリンタで再現されています。重さは約20キロ、全長約50cm×高さ約25cm(土台は含まず)。寄付金額は2,200,000円となっています。どなたでも入手できるもの…ではもちろんありませんが、今なお新たな蒸気機関車を製造することができるという、大変効果的なPRにはなっていると思います。

■協三工業・加藤社長より
 ものづくりは「造ってナンボ」。造り続けないと残していけないものです。受注できなければそのうち指先の感覚は忘れてしまいます。ふるさと納税の返礼品として次の依頼をいただくことができれば、技術を次世代に受け継ぐチャンスも得ることができます。

■協三工業・SL担当 金子さんより
 SLはディーゼルや電気機関車などと違って手作業が多く、まともに動かないことも多い、奥の深い乗り物です。SLや鉄道ファンの方や、日本のSL技術を後世に残したいと思ってくださる方はもちろん、SLに興味がなかった方々にもSLのことを少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

ふるさと納税(ふるさとチョイス)のページへのリンク

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