地中海に浮かび、ヨーロッパでも随一のリゾート地として知られるスペインのマヨルカ島。奈良県に近いというかなり大きな面積を持ち、島内では2つの鉄道が営業しています。州営のマヨルカ鉄道(メーターゲージ=1,000mm)と民営のソイエル鉄道(3フィート=914mm)で、いずれも島の鉄道らしいとも感じるナローゲージ。そのうちソイエル鉄道には約27kmの鉄道線と4kmあまりの軌道線があり、共に電化されていてクラシカルな木造車体の電車が今なお活躍中なのです。
軌道線では典型的な海沿いのリゾート地的な景色の中を、赤く彩色された小型の2軸電車が数両のトレーラーを牽いて活躍。トレーラーの中には遊園地のようなオープン客車もいて、陽気な雰囲気があふれています。
一方鉄道線ではニス塗り仕上げの中型電車がやはり6両前後の客車を牽いて力走。途中山脈を越える区間もあり、軌道線と鉄道線で島の北岸と南岸を連絡する格好です。かつては島内の主要な交通手段だったのですが、道路が良くなった今は観光客向けに特化した営業を行っているのだとか。
日本だけでなく世界各地の路面電車を愛する著者にとっても、この木造電車天国は憧れの地だったとのこと。念願かなって訪問できた今回は天候にも恵まれ、また車庫などの見学の機会も得られたことで今回の写真集刊行に至ったようです。日本では資料の乏しいソイエル鉄道のまず一級の資料となるだけでなく、異国情緒に溢れてある意味アニメ作品のような街並みと電車の姿をたっぷり楽しめる一冊。フリーランス模型のイマジネーションも刺激することと思いました。
■後藤文男 著
■発行:交友社
■B5変形判/104ページ/3,300円(税込)
なお、本書と同名の写真展が、9月15日より、池袋のギャラリー路草にて開催されます。
■写真展名:後藤文男写真展 地中海の木造電車
■開催日時:2022年9月15日(木)~20日(火)11:00~19:00(最終日は16:00終了)
■場所:池袋東口 ギャラリー路草 路
東京都豊島区南池袋2-25-5藤久ビル東五号館14階(電車のあるビル)
■入場無料