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BOOK REVIEW 愛知の駅ものがたり〔風媒社〕

2022.08.11

 名古屋に本社のある出版社からの、「駅からはじまる謎解き歴史さんぽ」という趣旨で編まれた、読み応えのある一冊。

 愛知県は自動車王国というイメージもあるが、2022年現在で旅客営業を行う鉄道会社が10社、駅の数は実に500を超えているという。さらに、135年間の歴史の中で廃止路線も多く、それらのひとつひとつには歴史にまつわる膨大なエピソードがあるに違いない。

 本書では、ひとつの駅に2ページを費やし、それらのエピソードを丹念に掘り起こしていく。これらのエピソード、レイル・ファン向けの「ホームは○面○線で、駅舎は3代目…」みたいな内容には終始しない。むしろ、駅付近に建てられたひとつの石碑から、戦国時代や幕末、あるいは戦時中の市民の生活ぶりなどに触れていくといった展開が多い。従って、例えばA駅を語る単元でもA駅そのものの写真が掲載されているとは限らないのだ。

 しかし著者はレイル・ファンとしての経験と実績も豊かで、基礎となる鉄道の知見が深く、安心感・信頼感を持って読み進めることができると感じる。大名古屋駅も特別に4頁を費やして語られてはいるものの、掲載順はかなり後ろの方…というあたりに、本書の執筆方針が窺えるところだ。

■藤井 建 著
■発行:風媒社

■A5判/158ページ/1,760円(税込)

風媒社WEBサイト

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