プロ鉄道写真家の第一人者である著者が若かりし頃(1970年代中盤~1980年代)に情熱を持って取り組んだのが、EF58をはじめとする旧型電気機関車だった。特に蒸機亡き後の幹線の鉄道シーンを華麗に彩ったEF58はその両数の多さ・活躍エリアの広さから格好の被写体となり、作品は様々な媒体で多数発表され、1980年代前半の「ゴハチブーム」の牽引役となったことは間違いない。
本書は、「フィルム劣化のことを考慮すると1冊にまとめる最後のチャンスかもしれない」という著者の思いを、200頁近い大冊にまとめ上げた一冊だ。巻頭の64ページ分がカラーで、この時代の諸河さんと言えば、の「コダクロームII(K II)」の鮮やかな発色が目に飛び込んでくる。そして後半のモノクロページでは、諸先輩の協力によって青大将やブルトレ塗装時代の、まさに鉄路の絶対王者であった頃のカットも収録。エリア別、またはトピック別で章立てされ、どこから見ても楽しくその時代に浸ることができるだろう。貨物列車を牽く姿や、案外希少な赤色円板を尾灯部に取り付けた状態のカットなど、模型ファン的に「おっ」と思う写真も見受けられる。
なお、JR移行後に5両が残され、波動用・イベント用などとして長年人気を集めたことも記憶には新しいが、本書ではEF58 61のとびきりの数カット以外は収録されていない。「最後に輝いた」という書名に、著者のこだわりが込められているようだ。
■諸河 久 著
■発行:フォト・パブリッシング/発売:メディアパル
■B5判/192ページ/2,970円(税込)