185系

資料館

その11 天草 瀬戸歩道橋

2009.12.04
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九州・天草諸島は広い。天草市役所のある本渡へは、熊本駅から三角線と航路(天草宝島ライン)を乗り継いで約2時間、長崎駅からだとバスで茂木港に出てフェリー、さらに小さなバスを乗り継ぎで約3時間はかかる。その本渡の街の中、上島と下島を隔てる本渡瀬戸という水路に「瀬戸歩道橋」という昇開橋が掛かっている。

工業高校の脇の、本当に細い路地の先にこの可動橋はある。橋が水平に上下する昇開橋は、かつての清水港線や現在でも動態保存されている佐賀線筑後川昇開橋など、鉄道でもおなじみだったが、この瀬戸歩道橋はその名の通り歩行者と自転車などの軽車輌専用の橋だ。

橋の南側には古い橋の親柱が残っていた。以前はここに自動車も通れる瀬戸橋という跳開橋が掛かっていたのだが、航路の改良工事に合わせて1974(昭和49)年度に天草瀬戸大橋が北側に完成して自動車は分離され、その後歩行者専用となった瀬戸橋を架け替える形で1978(昭和53)年に瀬戸歩道橋が完成したそうだ。

橋が2本になったのは無駄に思えるかもしれないが、固定橋で自動車の通行量も多い天草瀬戸大橋は両端をループ式として通船に支障のない高さを稼いでいるから、歩行者や自転車の通行には無理が多い。歩行者用として通行する側がほとんど上下移動しないですむ可動橋が別に掛けられたのは、人の行き来を考えれば至極当然のことと言えよう。事実、ここにいた約1時間弱の間、ほとんど絶えず人通りがあった。

バイクも手押しなら渡れる。夜間は通行止めとなるようだ。

通行可能時。可動部分の入口に信号がある。

通船時。サイレン音とともに信号が赤になり、支柱の中から遮断機が出てくる。
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御所浦方面へ向かう旅客船がやってきた。この橋は船の高さに合わせて昇降するようで、この大きさの船では一番上までは上らないようだ。観光ポスターなどにはこの橋を本渡~御所浦~水俣航路の大きなカーフェリーが通過している写真が使われていたが、この航路は2007年に廃止されてしまい、現在では見ることができなくなってしまった。陸も海も、公共交通には厳しい時代である。(つづく)

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