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特集・コラム

台湾・新北市の鉄道空白地帯を変える動脈。日立製テクノロジーが結集した新路線「三鶯線」の全貌を調査!

2026.09.09NEW

text & photo:髙木伸太郎(メトロP)

■導入と技術背景

ホームに滑り込む、欧州チックなデザインの三鶯線車両。

 先日、台湾で新しい鉄道路線が開業した。台北市の隣に位置する新北市を走る「三鶯線(さんおうせん)」だ。三鶯線は台湾の新北MRTが運営する鉄道路線で、土城区の頂埔駅から三峡区・鶯歌区を結ぶ全長14.29キロメートル、全12駅の規模を誇る。2026年6月30日に開通し、台北圏でもとりわけ注目度の高い路線となっている。

ホームドアのある高架駅から、行き先表示を掲げて出発する三鶯線電車。

 三鶯線の台北側の起点となるのが「頂埔駅」だ。地下を走る板南線のホームからエスカレーターを上り、光が差し込む真新しい高架駅へ出ると、可愛らしい水色の2両編成が乗客を待っている。 三鶯線のプロジェクトは、日本の日立製作所、日立グループの日立レールSTS、台湾の栄工工程による3社コンソーシアムが担当した。どこか欧州チックな車両デザインは、イタリアに本拠を構える日立の子会社が得意とする「ドライバーレス・メトロ」を採用しているためだ。その一方で、車両そのものは地理的な理由から日本の日立製作所笠戸事業所が製造を担った。まさに日立グループの国境を越えた事業といえよう。

■車両と沿線の魅力

ドライバーレス・メトロならではの前面展望。先頭車両から車窓に見入る子供たち。

 車内は広く設計されており、日本の「ゆりかもめ」のように進行方向の先頭車では、子供たちが車窓からの景色に釘付けになっていた。また、沿線地域の芸術を紹介する装飾が施された特別編成も用意されている。沿線の三峡区・鶯歌区には、歴史的街並みが残る「三峡老街」や、展示物が充実した「新北市美術館」などがあり、日本人にも馴染み深い観光地を巡ることができる。

高層マンション群を背に、高架橋を渡る水色の三鶯線電車。

 頂埔駅を出発した列車は、高層マンションが立ち並ぶエリアを抜けると、やがて川と山の合間を走る自然豊かな区間へと出る。川を渡った先には国立台北大学の最寄駅があり、郊外のキャンパスへ直結するこの路線は、学生にとって非常にありがたい存在だ。

■情景と撮影スポット

車窓から見渡す、古くからの街並みと遠くを走る三鶯線電車。

ドア上の路線図。 Hengxi(横渓)からChangshoushan(長壽山)、Yingtao Fude(鶯桃福徳)へと続く路線を示す。

 特に視覚的な見どころとなるのが、沿線の主要駅であり陶芸の町として名高い「鶯歌駅」周辺の景色だろう。高架線を滑るように走る洗練されたドライバーレス・メトロの眼下には、古くからの街並みが広がる。鶯歌は観光街であると同時に、台湾鉄道(通称:台鉄)が乗り入れる交通の要所でもある。ファインダー越しに覗くと、イタリアンデザインを汲む最新鋭の車両と、武骨な台鉄の列車が交差する、立体的でダイナミックな新旧のコントラストを捉えることができる。台北近郊でありながら台鉄が地下化されていない駅ということもあり、早くもレイルファンの間で注目の撮影スポットとなっているそうだ。

■路線がもたらした社会的意義

 この地域は台北市内からの近さもあり、台湾全土でも平均より早く人口が増加していた。だが、三峡区・鶯歌区はこれまで長らく鉄道空白地帯であり、通勤や通学の大半を台鉄の鶯歌駅や、渋滞に巻き込まれやすいバスに頼らざるを得なかった。そのため、今回の開通は単なる新路線開業以上の意味を持つ。特に国立台北大学の学生たちにとって、この路線の誕生はキャンパスライフの動線を劇的に変える存在だ。これまでバス移動に悩まされていた郊外のキャンパスが、台北都心部とシームレスに繋がり、所要時間は大幅に短縮される。三鶯線は、三峡・鶯歌エリアの人々と若者たちに新しい時間の使い方をもたらす、重要な動脈となるだろう。

 新旧の鉄道風景が交差するノスタルジックな魅力と、日立の最新技術がもたらす快適性。そして、地域社会の長年の課題を解決する利便性。三鶯線は、単なる新しい移動手段にとどまらず、地域の歴史と未来を繋ぐ新たなシンボルとして走り始めた。次に台湾を訪れる際は、この水色の電車に乗って、変わりゆく新北市の息吹をファインダー越しに、そして肌で感じてみてはいかがだろうか。

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