185系

特集・コラム

長野県・坂城駅で今なお生き続ける国鉄時代の「急行型電車」昭和〜平成の空気感を今に伝える名車に会いに行く!

2026.08.25NEW

text & photo:髙木伸太郎(メトロP)

国鉄時代の直流急行・近郊型電車たちの定番カラーだった湘南色。169系と115系の湘南色同士の共演も健在だ。

 長野県内にひっそりと残る昭和の思い出。かつて日本各地を駆け抜けた国鉄急行型電車が、しなの鉄道の坂城(さかき)駅に保存されている。
 オレンジとグリーンの鮮やかな湘南色をまとうこの車両の形式は「169系」。直流急行型電車の165系をベースに、所謂「横軽対策(碓氷峠を越えるための補機の電気機関車EF63と協調運転ができるようにする対策)」が施された形式だ。保存されているのは、晩年はしなの鉄道で活躍した旧S51編成。引退時に坂城駅まで自走したのち坂城町へ譲渡され、現在は地元の「169系電車保存会」の手により大切に静態保存されている。
 普段は非公開であり、保存会が指定した一般公開日以外で車内に入ることはできない。しかし、坂城町によると「歴史的な価値が高く、全国の皆さんに愛されている169系電車をより身近に感じ、大勢の皆さんにさらに知っていただくために見学を行っている」とのこと。実際に見学の2週間前までに申請を行えば、団体での車内見学が可能だ。今回は、上智大学鉄道研究会と保存会のご協力のもと、車内の様子やツアーの模様をお届けする。

■懐かしい空気が残る車内

随所に昭和も感じつつ、リニューアルを受けた1990年代の空気が残る、169系の車内。

 車内は、国鉄分割民営化後にJR東日本によってリニューアルされた姿が綺麗に保たれている。リクライニングシートを倒したり、座席を回転させたりできるのも、状態の良い保存車ならではの魅力だ。リニューアルされた1990年代当時の雰囲気が漂い、JR東日本で活躍していた185系にも似た空気感がある。

■奇跡の保存状態!「生きた」電装品

床下に設置された抵抗制御用の機器(カム軸接触器)。行き届いた手入れにより、現役さながらの状態と美しさを保っている。

 この169系、一応の扱いは「静態保存」なのだが、驚くべきことに電装品が生きている。保存会のメンバーが熱意をもって整備しているおかげで、主電動機などの機器類が動く状態で維持されているのだ。見学客に向けて抵抗制御のギア動作実演なども行われており、保存会の方曰く「法的には本線を走れないが、機械的には自走できる状態なのでは?」と語るほどの驚異的なコンディション。屋外保存の車両としては、間違いなく国内トップクラスの保存状態だろう。

169系の見事な保存状況の運転台。

 マニアックな解説のほかにも、行き先表示の幕回しやドアの開閉実演ができ、さらには実際の放送機器を使って本物のマイクで車内アナウンスをする「車掌ごっこ」も楽しめる。今にも電車が走り出しそうな息吹を感じる、まさに大人の社会科見学だ。

■トップナンバーとラストナンバー そして「デカ目」の復活

大きな前照灯(デカ目)が復元されたクモハ169-1。

引退当時の前照灯(シールドビーム)が残るクハ169-27。

 実はこの編成、169系の中で一番最初に製造された「トップナンバー」と、一番最後に製造された「ラストナンバー」がセットになっているという面白い編成構成となっている。また、国鉄の急行型電車は昭和の輸送力増強に大きく寄与し、後年には夜行快速「ムーンライト」などでも活躍したため、青春18きっぷの旅でお世話になった方も多いだろう。民営化以降の世代には遠い存在になりつつある「国鉄急行型」の姿を次世代に残す、全国的にも大変貴重な存在だ。

 なお、この編成の片方の先頭車は、前照灯が大きい「デカ目(大目玉)」になっている。これは引退後に保存会が手を加え、製造当時の姿に復元したものだ。大きな前照灯の車両がその後の改造や廃車等でほとんど姿を消した昨今、あえて復元させた例は少ない。もう一方の先頭車は引退直後の小さな前照灯(シールドビーム)のままで保存されている。ここは世代によって好みが変わるポイントでもあるため、両方の顔を残す決断はマニア心をくすぐるポイントとなっている。

■夢の湘南色コラボレーション

 また、保存場所のすぐ隣にはしなの鉄道線が走っている。運が良ければ、しなの鉄道で現在活躍中の115系との並びを見ることができる。さらにここでは湘南色に復刻された115系も走っているため、本形式との「夢の湘南色ツーショット」を撮影できる、鉄道ファンにはたまらないロケーションだ。ただし、しなの鉄道の115系は2028年頃までの順次引退が予定されているため、往年の国鉄を感じさせる2形式の並びを撮影したい方はお早めに訪れることをおすすめする。

■次世代へつなぐ 急行列車のバトン

しなの鉄道で活躍する初代長野色の115系との並び。しなの鉄道の115系も引退までのカウントダウンが始まっている。

 改めて、坂城町および169系電車保存会の方々に感謝を申し上げたい。大学の鉄道研究会や高校のグループ等で見学できるこの制度の意義は極めて大きい。この先、国鉄が遠い記憶となっていく次世代の若者たちが「肌で感じられる施設」を、熱意をもって維持・整備する方々は、日本の鉄道史を守る重要な存在だ。
 一般公開日なども設定されているので、気になった方はぜひ坂城町のウェブサイトをチェックしてみてほしい。

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