text:瀧口宜慎・上石知足

鉄道模型を楽しむには、線路と車両を買って、コントローラーをつなげてスイッチを入れば簡単に走るものです。ただし本物の鉄道となれば、同じ線路の上を行先も種別も違う列車がいくつも走ります。さらに多くの乗客が乗り降りし、それを捌く駅員から乗務員、そして一般の方にとっては目に触れることの少ない保安・保線や車両保守の技術スタッフなど、いわば巨大なシステムで動いている交通です。

鉄道模型でも、複数の列車を退避させたり入換させたりする運転は、遊ぶ上で真髄といえる楽しみ方といえましょう。そうした運転遊びをよりリアルにするためには、実車の車両形式の違いはもちろん、信号のシステムや駅のプラットホームの配置、さらには線路配線など、かなり幅広い実物の仕組みや知識をを調べたり覚えたりする必要があります。目の前の鉄道模型はコントローラー一つで走ってしまうだけに、なにから確認すれば良いのか困ってしまうものです。

そんな時、総合的に鉄道の機能、技術、法令などを知るのにおすすめなのがこの「岩倉高等学校 鉄道総論 鉄道教科テキスト – 構造と技術の体系-」です。これは、将来の鉄道マンたちを長年輩出する私立・岩倉高等学校の運輸科の授業で実際に使用される鉄道の教科書をベースに作られています。

意外と知らない橋梁ごとの名称とその特性の違いなども、写真と図説でわかりやすく解説。

こちらも意外と知らないことが多い分岐器ごとの名称。形状ごとの違いの名称を覚えるのも、趣味として楽しい。
プロの卵たちを教育するための教本だけに、その内容は確かで調べやすく、学びやすい内容です。例えば台車の軸受けの機構一つとっても構造から種類まで、詳しく図解で説明しているので非常にわかりやすくなっています。

もちろん運転に関する詳細も詳しく解説。この辺は一般の趣味誌でも触れられる機会が少ないだけあって、貴重な資料・教材と言えるだろう。もちろん模型運転の参考にしても良い。
これらが、偏りなく広く、判りやすく解説されているのは、元鉄道マンである岩倉高校の教職員による編集・編纂であるから。実物に即し、現代の鉄道の最新事情をフィードバックし、解説にも活かされているのです。
鉄道模型の趣味世界で考えるなら、これからレイアウトを作ろうと思っている時、信号機の設置場所や踏切の種類なども場面に応じ、どう配置すればよいのか?ということへの一つの拠り所にもなるはず。
もちろん模型趣味以外にも、車両研究や路線研究などの役に立つことは間違いありません。特に車両ごとのモーターや主電動機の特性の違い、線路まわりの構造物の名称や効果の解説、さらには保線作業の詳細に至るまで、インターネットでもなかなかたどり着けない情報が一冊に体系的にまとめられており、レイル・ファンにとっても手許にあって便利な鉄道便覧と言えるでしょう。


