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90年代に大きな転換期を迎えた「駅名標」 調べると面白い過渡期のデザインたちをたどる!

2026.04.28NEW

text & photo:児山 計

 それぞれの駅名を記した看板である「駅名標」。大まかなレイアウトは古来より変わりませんが、そのデザインや書体などは、時代に応じて変化し続けてきました。特に国鉄分割民営化以降の1990年代は、JRのみならず私鉄各社でもイメージアップの動きが見られ、それは駅名標をはじめとした案内看板の刷新にも繋がっていきました。しかし、画一的なデザインでリニューアルされたはずが、よく観察してみると更新された時期や場所によって微妙な「違い」が見られることも。今回はそんな過渡期にあった駅名標たちを振り返ります。(編集部)

【写真】JR東日本だけでもこんなに!?意外とちょっとずつ違う駅名標 写真で比較する

■国鉄民営化を機にイメージ刷新が行われた駅のサイン類

国鉄時代に多くみられた駅名標の基本デザイン。書体に若干の揺らぎはあるが、白地に黒文字で駅名が書かれ、ローマ字はすべて大文字が基本。

久留里線 小櫃

 国鉄時代、駅ホームの駅名表示は中央に大きく自駅名、下に小さく隣接駅をスミ丸ゴシックで表記するスタイルでした。関西私鉄を中心に一部私鉄には独自のデザインを取り入れているところもありましたが、国鉄・私鉄とも駅名表示は白地に黒文字で駅名を表記、ローマ字は大文字での表記が基本でした。
 しかし国鉄が分割・民営化した1987年以降、JR各社は国鉄時代から続くイメージの刷新に努めます。1990年ごろはまだ好景気の波に乗って企業が様々な投資を積極的に行っており、JRのみならず一部私鉄も自社のブランドのイメージ向上を目的にCI(コーポレート・アイデンティティ)を制定。あわせて駅名標をはじめとした表示類も新たなデザインとしてイメージアップを図っていました。このようにJR・私鉄問わず、1990年代は駅名標のデザインが大きく変わった年代でもあったのです。
 駅名標のデザインにもJR各社の個性が現れており、JR東海は国鉄書体を思わせるような書体でひらがなを大きく配置し、国鉄を承継したようなデザインを取る一方で、JR西日本は関西民鉄のようにゴシック系の漢字で大きく駅名を表記するスタイルにするなど、駅名標にも各社のイメージ戦略が垣間見えていました。

■90年代は駅名標交換の過渡期

メインの表記がひらがなの駅名標。書体もゴナ。ローマ字表記の位置は緑帯の中。新デザイン制定当初はひらがな表記が主体だった。

中央本線 大月

 そんな個性が分かれたJRの駅名標ですが、路線規模の大きなJR東日本ではその過渡期に様々なデザインの駅名標が登場しました。
 JR東日本は1990年に「JR東日本サインマニュアル」を制定。これをベースに駅名標も書体やデザインが制定されました。
 具体的には書体がスミ丸ゴシックからゴナになり、カンパニーカラーの緑帯が駅名標に入るようになります。この時定められたフォーマットの大枠は現在まで大きく変わっていませんが、文字の構成や書体に関しては1990年代を通して「ゆらぎ」が見られました。
 たとえば駅名表記は当初はひらがなを大きく書き、漢字が下に小さく書かれる「国鉄スタイル」を踏襲していたものの、しばらくすると漢字メインとなりひらがなが小さくなって立場が逆転。書体もゴナから新ゴに変化します。そのほかに進行方向と反対側の駅名表示を薄く表記したものや、ローマ字の揃えが右揃えか左揃えか、さらにローマ字の記載位置が緑帯の中央か下かなどさまざまなバージョンが記録されています。
 首都圏の主要駅から徐々に国鉄時代の駅名標が消える代わりにJR東日本の新しい駅名標が増えていったことで、「国鉄の面影」が少しずつ消えていったのがちょうど1990〜2000年ごろの10年間に起こったのですが、10年という時間ははからずも、規格化されたはずの駅名標にさまざまなバリエーションを産み出すことになったのです。。
 こういった変化が1990年代に連綿と続いた結果、JR東日本の駅名標は「統一されているようでその実なかなか個性的」なものとなりました。ローカル線では改造費を抑えるためか、従来の駅名標に上書きするかのように新しいフォーマットで駅名を手書きで書き直したものもあって、旅行をしているとそのバリエーションの多彩さが意外にも楽しかったりしたものです。
 駅名標は破損でもしない限り、長年にわたって使い続けられます。そのため現在でも標準フォーマットから外れた駅名標が残っている駅もあります。なので、旅行しているとちょっと「あれ?」と思う変わり種の駅名標が見つかるかもしれません。人間の目は想像以上に優秀で、ゴナとか新ゴといった書体について詳しくなくても、思いのほかその違和感を感知できたりします。
 列車に乗った際、そんなことを気にかけながら駅名標を見てみるのも面白いかもしれません

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