text:上石知足(鉄道ホビダス)
photo(特記以外):浅水浩二

昨今では当たり前になりつつあるプラスティック製の16番(1:80スケール16.5mmゲージ)製品。近年の製品は金属製品に負けずとも劣らない迫力とディテールを兼ね備えており、さらに比較的安価に手に入ることから16番の入門用としての側面も見られます。そんな16番ですが、まだまだ金属モデルが主流であった45年以上前に、すでに一般量産品としてプラスティック製の製品がありました。今回はそんな愛らしくも凛々しい「トミーHOスケール」12系とEF58を紹介します。
【写真】45年以上前のプラ製16番製品「トミーHOスケール」その全貌を写真でもっと見る
■今でこそ当たり前なプラ製16番の黎明期のモデル

青のEF58と12系。この組み合わせがやはり一番しっくりくるように思う。何両か繋げて走らせると重厚な走りを見せてくれる。
今でこそTOMIXやKATOといった大手メーカーの完成品のほか、PLUMからは1:80のプラキット、天賞堂からもお手頃価格の「T-Evolution」シリーズが盛り上がりを見せるなど、16番のプラ製品というのは鉄道模型ユーザーにとってかなり身近なものになりました。ですが今から45年以上前の1978(昭和53)年に、すでにプラスティック製の16番モデルシリーズが誕生していました。それがこの「トミーHOスケール」です。
12系とEF58がラインナップされ、当時1両数千円で販売されていたそうです。他の金属製の16番モデルが当時数万円以上していたことを考えると破格の価格設定です。ですが、プロポーションは悪くないながらも大味だった造形や、そもそも初心者はNゲージに流れたこともあってか市場ではあまり受け入れられることなく、トミーHOスケールシリーズはこれらの製品を世に出した後、続くことはありませんでした。そんな悲運とも言えるモデルですが、よく見てみると意外にも可愛らしい造形の中にカッコよさやシャープさも垣間見えるという、「沼」な魅力がありました。
■愛らしさもありつつ意外とプロポーションは良好なEF58と12系

飾り帯のモールドも分厚くトイライクな見た目のEF58。では似てないかと言われるとそうではなく、ちゃんとEF58っぽい顔になっているから侮れない。
牽引機となるEF58は大味なディテールではあるものの、全体的なプロポーションはちゃんとEF58らしい形をしているのが意外でした。特に横がちに見たシルエットはまさに本や博物館で見たようなあのEF58らしい形をしています。パンタグラフは元々なのかそうなってしまったのか不明ですが、伸びきってしまっていました。ただそれもまた愛嬌と思い、今回は敢えてそのままとしています。
動力自体はまるでおもちゃのような轟音を鳴らしつつも、購入状態で問題なく走行することができました。すごい音ではありますが、なんだかそれもまた実車の国鉄電機らしいような気もして、動力を換えて静かにする…というような予定はありません。ただ長い時間走らせていると少し焼けるような匂いが漂ってくるので、一度ちゃんとメンテナンスはした方が良さそうです。
12系は16番製品の発売前年である1977(昭和52)年にTOMIXブランドで発売された香港製のNゲージをほぼそのまま大きくしたような造形をしており、床板とボディーもNゲージと同様のピン留めと、まるで兄弟のような見た目をしています。ですがスハフ12の「顔」ををよく見てみると、ちゃんと12系らしい印象は捉えられいるように見え、色差しだけでも結構化けそうにも思えます。ただし、現状この愛らしいスタイリングそのものにも魅力を感じているので、メンテ以外に手を入れる予定はありません。
■これから末長く遊べるように
現行製品と見比べてしまうと、どうしても日の目を見る機会が少なくなりがちな古い鉄道模型。ですが、改めて見てみると意外といいプロポーションをしていたり、当時なりなこだわりが垣間見えたり、トイライクな見た目がかえって風情を感じて魅力に思えたりなど、古い模型ならではの味わい深さがあるのもまた事実。ひとたび動かしてしまえば、意外にも重厚感ある走りを見せてくれたりもします。
ですが、古い模型であればこそ走りが段々と心配になります。先述の通り、しばらく走らせているとモーターから焼けるような匂いがするなど、動力面での不安要素があるのは確か。製造から50年を前に、一度大規模なメンテナンスと修繕は必要そうです。
TOMIXの16番のご先祖様とも言えるであろう「トミーHOスケール」。その姿を末長く楽しめるように、良好な状態を保っておきたいところです。
(『RM MODELS』2025年12月号 Vol.363記事より加筆修正の上掲載)




