185系

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415系?はたまた213系?懐かしのプラロードと一緒「近郊電車(ブルーライン)」のプラレールセットとは?

2025.11.07

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は昭和末期の1988年に発売されたセット「近郊電車(ブルーライン)DXレールロードセット」にクローズアップ。同封されている車両は415系のような青帯の車両ですが、瀬戸大橋をモチーフにしたであろう構成から、213系に見立てていると考えられている同セット。今回はそんな当時の背景とともにこの不思議な製品に焦点を当てていきます。(編集部)


【写真】415系のような213系のような… でも雰囲気は抜群の「DX」なセット 写真をもっと見る

 今でこそ「〇〇鉄道××系」というように、実在の車両が所属する会社、走る路線、特定の系式をモデルとして製品化されているプラレールですが、一定の年齢より上の世代の方々は、どう見ても特定の系式をモデルとしているのに抽象的な商品名で発売されていた車両が多かったことを記憶していることかと思います。これは商品化をするにあたり、ユーザーである子供の想像力を働かせ、住んでいる地域の車両に見立てて遊べることを想定した結果だと考えられます。
 今回ご紹介する車両もそのうちの一つですが、こればかりは少し無理があるのではないか?と思ってしまう商品展開が行われていました。

▲1988年3月10日に発売された「近郊電車(ブルーライン)」

 1986年にデビューした211系は、国鉄末期からJR初期にかけて設計された新型車両のベースとなり、213系、415系1500・1600番代、JR東日本719系、JR四国6000系などの派生系式が生まれ、北は東北から南は九州まで幅広く見られる顔になりました。
 このうち、外見上は211系とほぼ同一である415系1500・1600番代がプラレールで製品化されました。「オレンジライン」発売の翌年、1988年3月10日に「近郊電車(ブルーライン)」として発売されています。213系は2つドア、719系は扉間窓の形状が異なり、6000系は片開きドアがあるなど、顔はほぼ同一とは言えどれも異なる形態だったことから、まずは415系が製品化されたものだと思われます。ちなみに、四国6000系に関しては後々同じく「近郊電車」の塗り替え製品としてプラレール化されています。

 「ブルーライン」が発売された1988年、今までは新幹線や貨物列車、特急列車など、「普段乗る列車」とは少し異なる車両がテーマとなっていたセット品シリーズに、新たに通勤電車・近郊電車がテーマとなったものが加わりました。以前も103系をモデルとした「電車」や営団6000系「地下鉄電車」が入ったセットは存在していましたが、1985年の「通勤電車」発売以来、その幅が広がったことにより実現したものだと思われます。
 「ドア開閉通勤電車」「通勤電車」「近郊電車(オレンジライン)」「近郊電車(ブルーライン)」のセットが短期間のうちに発売されましたが、このうち「ブルーライン」に関しては2つもセットが登場しています。

▲「レール・ロード踏切」を通過する「ブルーライン」と、踏切待ち中の「2階建てバス」

 「ブルーライン」のセットは「プラロード」とのセットとなっていたのが特筆できます。「プラロード」のセットは1986年に「レール・ロード踏切セット」としてL特急との組み合わせでデビューしていましたが、1988年に発売された「近郊電車(ブルーライン)デラックスレールロードセット」はその発展版とも言える内容となりました。
 道路は八の字型に、線路は2ルートがある古典的なものとなり、レールと道路の二層構造がある区間を実現、パネルステーションも付属し、L特急のセットと比べてなかなか豪華な内容となりました。
 同時期に発売された「オレンジライン」のセットは、以前の連載でも紹介した「おしゃべりステーション」がメインであり、ブルーライン共々それぞれの電車が似合う都会的な印象をレイアウトに落とし込んだものだと思われます。

 こうして、東海道線の湘南色帯「オレンジライン」と、常磐線の青色帯「ブルーライン」が揃った「近郊電車」ですが、同じ顔で青い帯を纏った車両がもう一つ、西の方でデビューしていました。213系です。
 213系は1988年に開業を控えていた瀬戸大橋を通過する瀬戸大橋線用の車両として国鉄末期に用意され、JR化後はJR東海にも導入された、117系譲りの2扉車です。
 メーカーとしても、線路と道路が二層構造で走る瀬戸大橋は情景部品としてみすみす見逃せません。早速、1988年内に「吊り橋枠」という名称で製品化され、セット品でデビューを飾ることとなりました。しかし、肝心の瀬戸大橋線を走る車両は当時のラインナップにありません。そこで抜擢されたのが、他でもない「ブルーライン」でした。

 「近郊電車(ブルーライン)DXレールロードセット」として発売されたこのセットは、商品名の読みこそ先のものと同じですが、白い「吊り橋枠」が2セット、そしてこのセット限定となる白い「鉄橋」が入り、瀬戸大橋さながらの大きなパノラマが組める内容となりました。このセットの箱には流通時期によりバリエーションが存在し、商品名下に「瀬戸大橋開通記念」と印刷されているものも発見されています。
 車両こそそのままですが、内容から見て415系がモデルの車両を213系に見立てていることに間違いはないものと思われます。付属のシールにも、駅名用に「おかやま」、プラロードの看板用に「高松方面」など、地域性の強いものが収録されているのが特徴です。

 こうして、ブルーラインは当時のラインナップで唯一となる2セットでのデビューを果たしたのでした。オレンジラインと共に、平屋3両編成の銀メッキ車体で登場した近郊電車でしたが、こちらも以前の連載で紹介したように、1990年にオレンジラインが「近郊電車ダブルデッカー」としてリニューアル。ブルーラインは単なるカラーバリエーションから、独立した車種という立ち位置に移ることになります。
 メッキ車体は銀塗装に移行し、しばらくラインナップに載り続けていましたが、1996年に絶版となってしまいました。2001〜02年頃の製品リニューアルまでは残らず、正式な系式名を与えられることなく絶版となった415系「ブルーライン」ですが、2025年12月にリアルクラスにて415系鋼製車が発売されることが発表され、およそ30年ぶりに同系式が製品化されることとなりました。モデルは常磐線の「白電」となりますが、1500・1600番代のステンレス車の方も、いずれ再びスポットライトが当たってほしいものですね。

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