185系

特集・コラム

【車窓からの絶景】坂をくねくね下る線路の先に開ける大パノラマ!磐越西線で見晴らす会津盆地麗景の旅

2025.10.31

 旅の記憶の中で、なぜか忘れられないワンシーン──それは、ただ車窓を眺めていたときに出会った、思いがけない絶景だったりします。
 列車の窓から広がる“見晴らし”の風景に出会える旅を紹介する本連載「全国絶景見晴らしの旅」。第3弾となる今回は、磐越西線磐梯町〜広田間で体感できる、まるで展望台からの眺めのような美しい車窓をご案内します。

【写真】磐越西線に乗った時は見ておきたい!絶景車窓ポイントの写真をもっと見る

■猪苗代盆地を抜け、列車は北へ南へ!

 東京から80分ほど新幹線に揺られ、さらに郡山で在来線に乗り換えて西へ向かうこと1時間ほど。右手に磐梯山の威容を眺めながら、猪苗代盆地を進んでいると、翁島を過ぎたあたりから列車は北へ南へ蛇行をし始めます。これは、今乗っている列車が目指す会津盆地の標高が約200mであるのに対して、現在走行中の猪苗代盆地の高さは500mを越えており、坂に弱い鉄道はこの標高差を緩やかに下りる必要があるため、距離を稼ぐ必要があったからです。地図で見ると、いかに線路が蛇行しているかがわかり、明治の人がどれほど難儀しながら鉄道を敷設したかが感じられます。

▲会津盆地(図左)と猪苗代盆地(図右)の標高図。約300mの高低差を乗り越えるため、翁島から東長原にかけて磐越線が蛇行しているのがわかる。(図は国土地理院地図を基に筆者作成)

 列車は磐梯町を過ぎ、さらに蛇行を繰り返しながら、ゆっくりと坂を下りていきます。はじめのうちは木々が多く、遠くの山並みと会津盆地らしき広がりが見えるにとどまりますが、それでも、このどこまでも空が広がる景色も十分に美しく楽しめるものです。標高が300mを切ったところで最後の蛇行を終え、日橋川を渡ると、列車は東長原駅に着きます。この駅を出てからが、会津盆地を見晴らす今回の見どころです。

■視界が開け、車窓には大きく広がる会津盆地が!

 西に進んできた列車は、会津若松の街中へと進むために南へ90度進路を変えます。このカーブを曲がり終えようとするところが最初の見どころポイントです。林の合間を抜ける一瞬、河東町から遠く遥か会津坂下の方まで視界が開けます。緑の間に見える田んぼとその遠くに広がる会津盆地は、ここまでもったいぶるかのように姿を見せなかった分、非常にすっきりとした景色に見えるでしょう。

▲東長原を出たところ、冬木沢という地域の景色。奥に遠くまで広がる会津盆地が見える。

 さて、車窓は再び少しの間木々に遮られますが、原田街道踏切を過ぎると、今回のメインのビューポイントがやってきます。ここから広田駅までのあいだ、磐越線の旅人は眼前に広がる田んぼとその奥に遠く続く雄大な会津の景色を楽しむことができます。
 この区間で見える景色は市街地よりも田畑の方が占める割合が多く、とてものどかで落ち着く車窓です。ですから、夜よりも昼間の方がその魅力を十分に感じられるでしょう。しかし、自然の美しさを感じるという点では夕刻の景色も大変魅力的です。夕暮れ時に会津若松を出て郡山へ向かう列車に乗ると、会津平を蹴るように車窓は上へ上へと登っていき、幻想的な色に染まっていく会津盆地の西縁の稜線を遠く望めます。薄暗い中をうねりながらひた走る列車に思いを馳せ、磐越線の旅を味わい尽くすのもまた一興でしょう。

▲林を抜け、一気に開けた車窓。一見高低差が少ないようにも見えるが、会津平の底が180mを切るのに対して、この区間はまだ250mほどある。

▲夕焼け時の磐越線の車窓。橙に染まりゆく稜線が美しい。蛇行区間は目を凝らして外を眺めていると、列車がぐんぐん勾配を登っていくのがわかる。

 さて、「全国絶景見晴らしの旅」、第3回は磐越西線 磐梯町〜広田間の車窓をお届けしました。この区間は、遠くに連なる山々と美しい空といった自然の景色を楽しむことも、すっきりと開けた車窓に映る街々の景色を楽しむこともできる、眺め甲斐のある車窓となっています。夏の若々しい緑も、秋の柔らかな黄金色も、冬の澄み切った景色も、いずれも楽しめるこの区間。あなたのお気に入りを見つけに、ぜひ乗りに行ってはどうでしょうか。
 列車の窓に流れる風景は、その土地の空気や季節の色を静かに映し出しています。磐越西線の車窓に広がる会津の眺めもまた、ゆったりとした時間の中で、心に深く残る“見晴らし”でした。次回もまた、そんな忘れられない一景を探しに旅へ出かけましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加