text & photo:鉄道ホビダス編集部

近年、熱い大人たちのおもちゃへの関心は徐々に高まってきており、各玩具メーカーでは大人に向けた新製品展開というのも見られます。
そんな中、玩具愛好家の大人たちによる独自の活動も盛り上がりを見せています。春と秋の年2回、東京都府中市の市民会館である「ルミエール府中」で行われている「鉄道模型広場 in ルミエール」。今回10月の開催でついに14回目を数えるほど人気のイベントになりましたが、今回編集部はこのイベントにまたも潜入。新たな展開として作品コンペも行われているとのことでしたので、その様子を取材してきました。
【写真】大人も見て楽しい 圧巻のレイアウトと車両たち!展示内容をもっと詳しく写真で見る
■自分たちがまず楽しむ そんな雰囲気が場を盛り上げる

話題の新商品「埼京線103系」も会場内を駆け巡る。
「鉄道模型広場 in ルミエール」では、目玉となる参加者製作の大型レイアウトのほか、実際に子供たちがおもちゃで遊べるプレイコーナーや、ワードラリーなどの会場内イベントで展示を満遍なく見てもらえる工夫など、イベントとしての作り込みが際立ちます。
その背景にはまず大前提として鉄道玩具が好きという気持ちと、自分たちも一緒に楽しむという考え方が根底にありました。その表れとして、それぞれのレイアウトはどれも個性豊かで、際立たせたいものが何なのかが明確なのも見所です。どのレイアウトにも「目玉」となる中心のテーマがあり、その中で車両や情景がより生き生きとして見え、好きでなければ到達し得ないクオリティのものに仕上がっていました。それは子供たちだけではなく、大人ですら感嘆してしまうほど。細かいところにネタが仕込まれていたりと、年代問わず楽しませる工夫が見えるのもまたこのイベントの特徴の一つです。
■個性あふれるな作品集結!自由な発想が見えた「Uターンレールコンペ」
今回「鉄道模型広場 in ルミエール」で初めて行われた試みの一つがこの「Uターンレールコンペ」です。鉄道玩具のUターンレールを使用したこのミニジオラマコンペは、レールの内側のスペースを活用することがレギュレーションとして定められ、各出展者がジオラマを製作。そして会場内で作品名と概要文は公開されるものの、「誰が作ったか」という点は伏せられた状態で来場者・参加者から投票を募るという、まさに忖度なしのコンペとなりました。画一されたテーマはなく、それぞれが思い思いのジオラマを製作しており、結果として個性あふれるな作品たちが揃うという、非常に見応えのある展示になっていました。

どこかで見たような、田舎の生活道路と日本家屋という、のどかな情景をこの小さいサイズにギュッと表現している。
中でも編集部が注目した作品はこちら。日本の田舎の原風景を思わせるミニジオラマで、中心の家屋はほとんどが鉄道玩具車両のボディを切り貼りして作られているとのこと。その他にも工作時に出た端材も有効活用されており(池にいる鯉なども端材だとか)、製作者のアイディアの幅広さを感じる作品に仕上がっていました。
■ファン垂涎の貴重な車両やオリジナルの改造車両まで

JR東日本の通勤型電車も根強い人気を誇る。
「鉄道模型広場 in ルミエール」では、古今東西様々な鉄道系玩具が集まるのも魅力の一つ。今回も例に漏れず話題の新製品から貴重な古い製品、さらに有志たちが自作したオリジナル改造車両まで、会場内レイアウトを駆け回っていました。出展者の世代としては20代〜30代前半の方が多く、彼らが幼かった90年代〜2000年代の車両がやはり人気なようです。この頃といえば昭和期の車両と平成期の車両と、各地の鉄道で新旧が入り乱れていた時代でもあり、そんな頃に幼少期を過ごした彼らにとっては、この時代こそが心象風景になっているようにも思えました。いずれの作品もヘッドライトが点灯したり、長大編成化されていたりと、それぞれ独自に手が加えられており、いずれのクオリティの高さには驚かされるばかりです。
■おもちゃだけじゃない 16番の大型レイアウトの展示も
おもちゃだけのイベントかと思いきや、「鉄道模型」と名前の付く通り模型の展示も行われているのも本イベントの見どころでしょう。展示されているのは16番と呼ばれる軌間16.5mm・1:80スケールの鉄道模型。Nゲージとはまた違った迫力ある大きさからくる重厚感や、精密なディテールが魅力です。

見る人が見ればわかる小ネタも欠かさない。ちゃんと阪急らしくツヤ感のあるマルーンになっている点にも注目。
リアリティ溢れる工作車両も多くある中で、この16番レイアウトの設営を行なっている有志同好会の「七宮会」では、一味違うユニークな車両が毎回登場することでも話題になります。今回見せていただいたのは国鉄急行型電車である165系を阪急のマルーンに塗装した作例。もちろん実車でこのマルーンに塗られた165系は存在していませんが、実は40年以上前の鉄道玩具に同様の塗り替え製品があったことが由来となっています。こうして模型でありながらもおもちゃとリンクし、さらに作者の手により再解釈がなされて作品になっているという点も、他では見られない楽しみ方の一つではないでしょうか。
10年目にいよいよ突入したという「鉄道模型広場 in ルミエール」。次の10年も、鉄道玩具愛好家を中心にさらなる盛り上がりを見せてくれることでしょう。来年の春も無事に開催されてくれることを願うばかりです。
※おことわり
この記事内の写真にある各鉄道玩具の車両には一部改造車両や工作車両が含まれており、個人が自己責任で非営利目的で製作したものです。ベースとなる各玩具メーカーは、製品の改造工作を推奨しておりません。また、各作品は販売されておりませんので、メーカー、さらには鉄道会社などへの問い合わせ等は絶対にしないでください。工作の際はケガなど身体的損傷を伴う危険性がありますので、全て自己責任にて行なうようお願いします。




