text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は東海道・山陽新幹線の一時代を築いた700系のプラレールに注目。実車がデビューする直前の1998年に発売開始された同車は、幾度かのリニューアルを経て様々なバリエーション品が誕生しました。その中でも過渡期の製品にはレア物も存在していました。(編集部)
【写真】どこがどう違っていた?実はレアな過渡期の700系 写真でもっと見比べてみる
1999年3月、東海道・山陽新幹線に新型車両「700系」が登場しました。量産車のデビューに先立ち、1998年にプラレールが製品化されています。先行量産車であるC0編成をモデルとして製品化されたため、同編成特有のワイングラス型パンタグラフカバー、直線的な乗務員扉といった、量産車とは異なる姿での登場となりました。
量産車デビュー後に登場した同型の923形ドクターイエロー、700系7000番代「ひかりレールスター」も同様の仕様で製品化されましたが、程なくしてプラレールの「新幹線一斉リニューアル」が訪れます。
その直前に生産されたリニューアル前最終生産品は、工程の都合上、発売当時とは異なる姿で流通していました。今回はその知る人ぞ知る姿の700系をご紹介します。

▲1998年発売「700系新幹線」の中間車更新後の姿。先行量産車C0編成をモデルとしており、乗務員扉などは量産車とは異なる姿をしている。
1992年の300系、1997年の500系に続き、3番目の「のぞみ」用車両として1999年にデビューした700系。デビュー年はプラレール40周年のアニバーサリーイヤーだったということもあり、デビュー前年の1998年に発売された700系は当時から引っ張りだこの製品となりました。
40周年記念ビデオが付属した2両編成の金ピカ仕様や、通常品の色違いとしての非売品である3両編成の金ピカ仕様、新情景の「高架駅」をメインとした「700系発進!新幹線ステーションセット」、箱の蓋がそのままレイアウトに組み込める変わり種の「700系ひろがる大きな駅セット」、同じく高架駅が付属するものの鉄橋付きの全線高架レイアウトとなった「高架ステーション 700系ひかりレールスターセット」、そして700系と同型の車体を採用したことにより塗り替えで再現された923形が主役の「ドクターイエロー車両基地セット」と、2001年までの間に多彩なバリエーション展開を見せています。
この間、2001年にメーカーのロゴが変更され、40周年を経たプラレールも徐々に「リアル化」路線に舵を取るようになっていきました。こうした流れの中、2002年3月に「700系新幹線」の金型が改修され、量産車仕様のパンタグラフカバーを搭載した中間車が登場しました。この改修後の中間車を使い、今までの箱を一新してイメージを変えた「ひかりレールスター」の車両単品が発売されました。

▲1998年発売時の当初の姿と共に。
単品の「ひかりレールスター」発売当時、既存の「700系新幹線」とセット品の「ドクターイエロー」は現行品。引き続き生産されていました。そのため、この2種についても金型変更が反映されています。
2002年に入ってから生産された700系とドクターイエローはこの新金型で生産されましたが、同年7月に「新幹線一斉リニューアル」が行われ、12車種が一気に新仕様で発売されました。
これにより、「新金型のリニューアル前」仕様はごく短期間の生産に留まりました。おそらく半年にも満たない期間だけ生産されたリニューアル前仕様は流通数が極端に少なく、知る人ぞ知るレアアテイムとなっています。
また、3月に発売された「ひかりレールスター」は4ヶ月後に再リニューアルされたため、こちらも希少な品です。
700系はこれ以降も発展を続け、中間車にプラキッズを載せられるようになった「いっぱいつなごう」仕様や、ノーズ側面の「JR700」ロゴが特徴的なJR西日本のB編成仕様、全体的に造型を見直したライト付仕様など、その幅は広がっていきました。単なる塗り替えだった923型も専用の型が起こされ、差別化が図られています。
しかし、そんな700系もN700系・N700A・N700Sのデビュー後は実車が徐々に数を減らしていき、2020年に東海道新幹線から引退。現在では「ひかりレールスター」仕様の7000番代が最後の活躍を見せています。プラレールでも車両単品の「S-01 ライト付700系新幹線」「S-05 ライト付700系新幹線ひかりレールスター」が、それぞれN700AとE7系に置き換えられ、共に2022年に絶版。「ひかりレールスター」の実車は活躍中なるも、プラレールでは入手困難な状態となってしまいました。
2025年現在では「S-07 ライト付923形ドクターイエローT編成」が700系ファミリーとして最後まで残った形となっています。
デビューから26年が経ち、プラレールでは一足早く「過去の車両」となってしまった700系。一時代を築いた新幹線として、少々あっけない感じがしてしまいます。




